(415)ドイツ最新ニュースに学ぶ(8)・ワクチン接種ルーレット(3)・今コロナ禍で問われているもの(2)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(8)

  • 憲法擁護庁のAfD監視強化決定(ZDFheute3月3日)

2月7日のZDFheute(「基本法はAfDを裁くのか」記載)で予告されていたように、憲法擁護庁のAfDの全面的監視が決定された。

AfDの党首の「こともあろうに連邦議会選挙の年に、この決定はこの上なくスキャンダラスである」と言うのが、精一杯のように感じられる。

何故なら、2年前から部分的監視が実施されていたにも関わらず、AfD内部の極右過激化への傾斜は、コロナ過激派デモで見るように、益々あからさまになって来ており、党大会でも穏健派と過激派の対立で収拾がつかないからである。

2013年AfD(「ドイツのための選択肢」)の誕生は、ユーロ危機でドイツ財政に莫大な負担を強いる救済措置を、メルケルが「この選択しかない」と言ったことで、新自由主義経済学者ベルント・ヘッケ(ハンブルグ大学教授)を中心に、アンチテーゼとして“もう一つ別な選択”を求めたことに発している。

それは2018年AfDが極右かするなかで、連邦内務省管轄の連邦政治教育センター(bpb)載せた、極右、ネオナチ研究での第一人者であるアレクサンドル・へスラーの論稿で述べられているように(注1)、当初のAfDはリベラルなポピュリズム保守政党を目指していた。

その論稿に以下従えば、AfDが変化したのは、2015年のメルケルの100万人を超える避難民受入れに、世論も反発し、抗議運動が高まり、AfDが結果として避難民受入れ反対の受け皿となった時からである。

すなわち2015年11月末のハノーファーの第4回定期大会には、保守から極右に至る勢力が結集し、大きく右傾化したのであった。

そのような内部の極右化を現在まで推し進めているは、新自由主義推進での敗者の支持であり、特に旧東ドイツ各州の統合期待を裏切られた人々が、その不満を難民排斥運動に噴出し、日増しにそのエネルギーHがAfDに結集されていったからである。

そして論稿で述べているように、2016年末にはそのエネルギーを利用して、2017年連邦議会選挙のための選挙戦略論が練られていた。

すなわち選挙民のターゲットは、以下の5つに絞っている。

1、政治家にドイツの利益優先する勇気を求め、さらなるユーロ救済措置を拒む全ての社会層、全ての年齢層の選挙民。

2、赤緑の支配的自由な恣意性や多文化イデオロギー時代精神を拒むリベラル保守の市民層、すなわち「管理されていない移民、犯罪との闘い、税金のぼったくり、教育の悲惨さ、家族責任放棄、社会正義や公共空間の無視、ジェンダー妄想」を懸念する市民層であり、最早これまでの既成政党を信頼しない選挙民。

3、メディアの政治的発言や政治的論争の内容やスタイルに、不満な抗議する選挙民。

4、政治的に関心を持っているが、既成政党では要望の受け入れが見込めない選挙民。

5、いわゆる「不安定な地域」の平均以下の収入を持つ市民で、グローバリゼーションの敗者であると感じており、パフォーマンス、秩序、安全、愛国心などの保守的な価値観を認める選挙民(多くの労働者や失業者)。

このような選挙戦略でAfDは、2017年9月の選挙でドイツ国民の12、6%の支持投票を得て、連邦議会に94議席を獲得して、野党第一党に躍り出たのであった。

その勢いはその後も止まらず、しかもその推進エネルギーはAfDが極右過激派と横の連携を持つだけでなく、明らかにAfD自体が極右化していることにあった。

それ故ヘスラーの論稿の結論として、AfDは既に極右化しており、民族的独裁ポピュリズム政党であると指摘している。

しかもそのような極右的政党が東欧を次々と支配するだけでなく、隣国オーストリアにも及んでいることから、極右と極左を許さない戦う民主主義のドイツでは、2年前から憲法擁護庁が動き出したのであり、今回の徹底的監視調査で裁かれる可能性は高く、裁かれないようにすれば勢力を失って行くだろう。

しかし現在の世界が極右化を含め、全体に右傾化するのは、ウルリッヒ・ベックが述べているように、「グローバル資本主義国民国家の足枷をはずし、あらゆる規制を取り去り、最終的に社会国家、民主主義、公共園を死にいたらしめる」といった、経済弱者の市民が分断させられる競争原理最優先の構造にあり、そのようなグローバル資本主義の構造を変えて行かなくては、本質的な解消は難しいだろう。

(注1)Die AfD: Werdegang und Wesensmerkmale einer Rechtsaußenpartei | bpb

 

  • ドイツの段階的ロックダウン解除

2月に載せた首相インタビューで、メルケルは第二波の爆発的感染を繰り返さないために、全面解除には現在大幅に下がって来た発生率60台が、35まで下がり、35以下が2週間継続することを主張していた。

確かに安全面からすれば、その主張は道理である。

しかし実際の決定は、州首相との会議で為され、必ずしもメルケルの慎重な意向は反映されなかった。

それは、各州が持つ事情や、人々の生業である経済活動から見れば、石橋を叩いて渡れるまで待てないからである。

しかし段階的ロックダウン解除決定には、最悪の場合も想定しており、誰もが納得できる合理性がある。

それこそが、ドイツから学ばなくてはならない倫理的民主主義であると思う。

しかも3月8日からは無料の敏速簡易コロナ検査が、薬局、センター、及び医院で実施されており、自分で簡単にできる敏速簡易検査器もスーパーで購入できるようになり、これまでのように市民に自粛制限を求めるのではなく、市民自らに根絶が担われていると言っても過言ではない。

 

ワクチン接種ルーレット(3)

現在日本でワクチン接種が始まったファイザー・ビオテックのワクチンは、(トルコから移民したドイツ人医師夫婦の起業した)小さな製薬企業ビオテックがノウハウを提供し、世界規模の巨大製薬企業ファイザーとの共同開発で、僅か10カ月で開発されたが、その経緯が語られている。

すなわちこれまで10年以上必要としたワクチン開発は、感染現場の緊急的必要性から、ドイツでは国の財政支援で各州に感染症研究センター設立され、ネットワークで基礎研究が進められ、開発期間を革命的に短縮できる遺伝子情報の伝達技術(ベクター技術など)が、コロナパンデミック襲来前に完成していたことが語られている。

しかし実際に世に出すためには、さらに莫大な費用を必要とし、現在の枠組のなかでは国家機関の開発は無理であることから、巨大製薬企業に託されると述べている。

開発企業がその莫大な費用を取り戻すために、厳しく守られる特許が必要であり、それが社会正義が実現できない伏線として、さらに描かれて行く。

しかし今回のコロナパンデミックでは、南アフリカやブラジルなどで次々に変異していくなかでは、最早従来のように社会正義は放置できないだろう。

 

今コロナ禍で日本が問われているもの(2)

緊急事態宣言の全面解除が予告され、ワクチン接種が進むにもかかわらず、変異種が次々と世界で猛威を振るっており、まだまだ終息にはほど遠い思いから、様々なものが見えてくる。

それは単にPCR検査の少なさだけでなく、ドイツに較べて1日の感染者が何十倍も少ない2000人を超えただけで、病院の緊急入院さえ難しく、自宅待機しなくてはならない危うさである。

確かに政府が自画自賛するように、10万人当たりの急性期病床数は779病床数で、ドイツさえ凌ぎ世界一である。

その世界一の病床数、病院数の日本が、コロナ感染では殆ど機能せず、重症化の可能性のある患者を自宅待機させ、病変で間に合わず亡くならせている。

自宅、もしくはホテル待機となるのは、症状の出たコロナ感染患者に対して病床数が余りにも少ないからである。

何故なら、感染症患者に24時間対応できるのは集中治療室ICUであり、その集中治療室の病床数が圧倒的に少なく7、3病床数で、ドイツの29、2病床数に較べて4分1であり、コロナパンデミック第一波で医療崩壊しかけたイタリアの12、5病床数に較べても半分ほどに少ない。

そのような視点から見れば、日本が誇る世界一の病院数や病床数も、命を救う使命を最優先したものではなく、画一的に病院で看取ることを企業化した延長上にあるとさえ思えてくる。

(414)ドイツ最新ニュースに学ぶ(7)・ワクチン接種ルーレット(2)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(7)

1)チェコ共和国の世界最高の感染爆発

(ZDFheute2月26日)

 上のZDFheuteが伝えるように、ドイツと接するチェコ共和国のコロナ感染は脅威的に増大しており、ドイツの発生率(住民10万人の7日間の発症数)は60台に下がってきているが、チェコ共和国では発症率699と上がり続けていることを警告している。

実際2月28日の日刊シュピーゲル・オンライン(注1)では、さらに発症率765へと上昇し、「チェコ共和国・世界で最も発症率が高い国」の見出しで、世界に伝えている。

チェコ共和国は2017年の選挙で、中道右派チェコのトランプと欧州で呼ばれる企業家大富豪アンドレイ・バビシュ首相を誕生させ、民主主義の危機が伝えられていた。

バビシュ首相は、2020年コロナパンデミックが欧州に拡がるや、3月初めにすぐさま国境を閉鎖し、国家ロックダウンという厳しい措置を断行した。

その結果6月には、コロナ感染を殆ど封じ込め、欧州ではコロナ模範生として讃えられるとともに、国民自ら祝ったと報道されている。

そうした緩みが9月からの急激な感染爆発の原因であったとしても、ドイツでも同じであり、チェコ共和国では10月からは再び厳しい措置を採っているにも関わらず、下図で見るようにドイツとは較べようがないほど、発生率が爆発的に増加し、一旦下がり始めると、再び爆発的に増大を繰り返している。

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原因としてドイツのメディアが挙げているのは、一つには国内の医師や看護婦が給料の高い国へ出て行き、保健大臣が3度も変わるほど医療行政が混乱していることである。

また一つには、チェコ共和国が2020年6月には他のヨーロッパ諸国に較べ、コロナパンデミック封じることに成功したことから、経済を優先させ、国を率いるバビシュがトランプに倣い、少なくとも10月までマスクも附けずに奢っていたことである。

しかしそれでは、10月から再びロックダウンを5カ月も継続しているにも関わらず、コロナ感染は脅威的に増え続け、チェコ共和国の全人口(1070万)の11、5%を超えて増え続けている理由としては、しっくり来ないものがある。

それを解き明かしてくれたの、3月1日のバイエルン公共放送(ドイツ第一放送ARDに属する9つの地域公共放送の一つ)の「チェコ共和国でコロナ感染者数が爆発する理由」と題する記事であった(注2)。

確かに上の2つの理由も挙げていたが、本質的にはチェコが繰り返して来た戦争や(全体主義の)危機の時代に、生き延びる戦略として培われた伝統的気質に起因すると述べていた。

すなわち市民の暮らしに向き合わない権力に対しては、表向きは従っても、実質的には命令に従わず、巧みに回避するチェコ人の気質にあると言っている。

しかしそれがコロナパンデミックでは裏目に出て、10月からの厳しいロックダウン措置では、政府の不信感と長期的行動制限の疲れから、国民の多くが規則命令に従わず巧みに回避しており、それが現状のコロナ感染爆発を引き起こしていると指摘している。

 

(注1)Die dritte Welle: Tschechien – das Land mit der höchsten Inzidenz weltweit - Politik - Tagesspiegel

 (注2)Darum explodieren die Corona-Zahlen in Tschechien | BR24

 

2)EUのGOTO安全証明カード

(ZDFheute2月26日)

ヨーロッパにおいても観光産業は、コロナ危機で窮地に追い込まれている。

EUはそれを救済するために、安全保証カード(ワクチン接種済、或は直近のコロナ検査陰性)を持つことで動き出したと伝えている。

メルケルはそれにブレーキをかけたように報道されたが、実際はフィルムで見るように安全保証カードは将来的に正しいと明言しており、先ずは議会での承認が必要と主張している。

何故なら、安全保証カードを持たない人は旅行できなくなるからであり、倫理的民主主義を自負するドイツの首相としては、当然の発言であり、むしろ建設的である。

要は、EU諸国が一丸となって早急に動けば、夏までに実現することも可能である。

もっとも観光産業に力を入れるEUの5カ国では、ワクチン接種を受けた人は検疫なしで休暇が取れるよう、既にそれを実施していると伝えている。

またドイツの市民倫理評議長は、旅行会社がワクチン接種を受けた人だけに旅行プランを提供することは倫理的に問題ないと述べている。

しかしワクチン接種の実施状況は余りにも遅い現状から、ZDFの報道は倫理的問題を解消するには、まだワクチン接種を受けていない人には、その場での(敏速簡易)コロナ検査などの代替手段が必要だと指摘している。

しかもそれは、日本のGOTOのようにコロナ感染の猛威が治まれば、観光産業のために再び危険を冒して、政府が主導する国民の批判を買うバラマキ政策ではない。

そこには、旅行会社や観光地が潤い、旅行者が安心して旅行が楽しめるように、観光業界が生き延びるために、自ら創意工夫で取組む前向きな姿勢が感じられる。

 

ワクチン接種ルーレット(2)

第2回は、ドイツの10月からの激しいコロナパンデミック第二波の襲来に対して、ブレーメン保健省長官の感染の速さに対処できなかったという省察から始まる。

そのようなコロナパンデミックの猛威のなかで、福音はワクチン接種であり、ワクチン開発の世界競争が語られて行く。

ワクチン開発の世界競争で2020年夏に先陣を切ったのはロシアの「スプートニクV」で、国民の藁にも縋りたい思いを利用して、臨床試験なしで接種が進められて行った様が映像から伝わって来る。

それ故西側の巨大製薬医療統括者は、余りにも危険であり、自分が接種するなら、しかるべき機関が承認するまで待つと、批判している。

尚コロナワクチン開発を解説すれば、従来のワクチン開発は、病原体(ウィルス)自体を弱毒化し、体内で増殖しないよううにして、体内に接種するものであった。

しかし今回現在日本で接種されているファイザー・ビオテックのコロナワクチンは、人工的に合成されたコロナウイルスのスパイク(突起部)の遺伝子情報(mRNA)だけを接種し、体内でその遺伝子情報に従ってスパイクたんぱく質を合成させ、それによって体内の免疫機構を作動させ、抗体が作られるというやり方である。

ロシアの「スプートニクV」は、人体に無害なアデノウイルス(伝導体)に同じ遺伝子
情報を組み込み、そのアデノウイルスを接種するもので、同様の作用機序でスパイクたんぱく質、そしてコロナウイルス抗体が作られるものである。

遺伝子情報のmRNAは非常に不安定であるが、「スプートニクV]はアデノウイルスであることから、通常冷蔵庫で保管でき、輸送や取扱いも容易で安価である。

具体的には、「スプートニクV」は2回の接種で20ドル弱で、ファイザービオテックワクチンの半額である。

同じ作用機序であることから、有効率は両方とも9割以上であり、コロナパンデミックの福音であるが、抗体の有効期間は麻疹などと異なり、長くても1年というのが多くの専門家の見解であり、楽観できない。

しかもコロナウイルスが遺伝子情報(RNA)だけのウィルスで、変異しやすく、実際イギリス変異種、南アフリカ変異種、ブラジル変異種など次々と変異を繰り返し、生き延びようとするなかで、何処まで有効かは未知である。

またワクチン接種者が感染した場合、殆どの人はごく軽症であるとしても、細菌と抗生物質との戦いで見られるように、一部に耐性ウイルスを誕生させ、鼬ごっこの戦いを強いられるて行くのか未知である。

尚、今コロナ禍で問われているもの(2)は、都合で次回に載せたいと思います。

(413)ワクチン接種ルーレット(1)・ドイツ最新ニュースに学ぶ(6)・今コロナ禍で日本が問われているもの(1)

コロナワクチン接種ルーレット(1)

コロナウイルスが今世界に投げかけているもの

上のフィルムはドイツ第一公共放送ARDが、今年1月26日に放送した力作であり、現在のコロナパンデミックが世界に投げかけている大きな波紋を、シニカルな視点でルーレットと呼び、大きな観点で問うている。

最初のプロローグで専門家たちが様々な問いかけをし、始まりでは「半年前は、コロナワクチンが手に入るなら、全てが上手く行くと感じていた」という独白が、まさに今ワクチン接種がなされている希望に疑問符を投げかけている。

このフィルムとは別に今私自身が思うのは、ワクチン接種で世界のコロナが終息するのか?(免疫力は10カ月を超えて持続するのか?次々と変異するウィルスにワクチン接種で戦えるのか?)

またワクチン接種の配分では、先進国では医療従事者、高齢者の順番で公正さが維持されているが、現在感染が猛威を振るっている途上国ではワクチン接種予定さえ立っておらず、このフィルムのプロローグで問われている社会正義が、現実には黙認するしかないのか視聴者も自問しなくてはならないだろう。

そして黙認を容認するとすれば、単に人道的視点からだけでなく、人類が生き延びるために許されるのか、今こそ世界全体で考えて見なくてはならない。

何故ならコロナウイルスでは、ワクチン接種が有効であっても免疫力は短いと言われており、英国の複数の専門家たちは、コロナ感染は寒い冬を迎える度に感染拡大を繰り返し、これから何十年もコロナウイルスと共存していかなくてはならないと警告しているからである。

そうであるとすれば、社会正義の黙認は途上国での絶えざる感染爆発の容認であり、先進国でのウイルスとの共存も在り得ず、人類滅亡も決して在り得ないシナリオではない。

 

ドイツ最新ニュースに学ぶ(6)

1)アストラゼネカワクチンの波紋

(ZDFheute2月18日)

ドイツ北部のデンマークと国境を接するフレスベルグ市が、コロナ変異種(英国)が30%に達し(コロナ感染者数は減少しているが)、ロックダウンで夜間外出禁止の緊張感が伝わって来る。

そのような状況下で、ドイツでは接種するワクチンが不足するにも関わらず、コロナ感染が未だに猛威を振るうザクセン州で、アストラゼネカワクチン接種に2500人分以上の空きがあることを由々しき問題と伝えていた。

市民がワクチン接種を控える理由は、有効性が約70%とドイツ製のビオテック・ファイザーワクチン(95%有効)に較べ若干低く、高齢者には疑問符がつき、その上2月7日に世界に報道された南アフリカ導入停止が、ドイツでも大きな波紋を呼んでいるからである。

具体的には南アフリカで、約2000人を対象として臨床試験を率いていたシャビール・マディ教授が、臨床試験報告でアストラゼネカのワクチンが変異種による中軽症感染者に効かないと明言したからである。

そうした中で、専門家がこのワクチンは優れていると太鼓判を押しても藪蛇であり、本当に優れているというなら、市民が納得できる知見やデーターをガラス張りに公表しなくてはならないだろう。

 

2)コロナ簡易検査無料化と自宅簡易検査開始(ZDFheute2月18日)

ドイツでは、コロナ簡易検査が3月から検査センターや薬局などで、訓練を受けた人によって無料で受けられようになる。

またそれとは別に市民が自宅で簡単に検査できるようになると、スパーン連邦保険大臣はほのめかしており、このニュースで見るようにハンブルクの製薬機器メーカは承認を見越して3月の販売に向けて用意を整えている。

このメーカのある地元のNRD(北ドイツ放送ARD所属)によれば、既に1日生産140万個を開始しており、約5ユーロで、市民が薬局やスーパーマーケットで購入できるようになると伝えている。

この自宅簡易検査器の原理は、口中の舌から分泌物(コロナウィルスからのタンパク質)が検査機内で抗原抗体反応をすることで、色づき検出されるように作られており、企業代表トーマスは、信頼性96%に加えて、この検査で陽性の場合コロナウイルスが関わる精度は99%と明言している。

何故今簡易検査かと言えば、このニュースの冒頭でも述べているように、コロナ終息の鍵はワクチン接種と検査の徹底にあるからだ。

ロックダウンは既に限界を越えて継続されており、最早国民全てのワクチン接種が終わるまで待てないのであれば、敏速簡易検査の徹底が社会再開の鍵を握っている。

すなわち学校、保育園、施設で敏速簡易検査が実施されれば、無症状、もしくは軽症感染者(ウイルス保有者)を見つけ出すことが容易にでき、そこに集う人は安心して日常生活を取り戻すことができるからである。

 

今コロナ禍で日本が問われているもの(1)

 

ドイツではコロナ感染第2波が徐々に下がり、ワクチンのドイツ国内製造でワクチン接種が加速し、敏速簡易検査器が普及することから、万全の体制で制限解除に向かっている。

そこでは社会が正常に動き出しても、再度感染拡大の過ちを二度と繰り返さない仕組みが出来上がっているように思う。

日本でもコロナ緊急事態措置の継続で1日の感染者数は減って来ており、2月を目途に大阪、兵庫、京都は3月初めから解除に踏み切る状況にあるが、再び社会が正常に動き出せば、再び感染拡大の危惧は払拭できない。

それは、感染拡大の過ちを二度と繰り返さない本質的仕組みが全くできていないからである。

最も懸念されるのは、1日当たりのコロナPCR検査が12月に5万件に達してからは足踏みし、現在も5万前後で頭打ちをしていることにある。

コロナパンデミックの恐ろしさは、感染者の半数以上が無症状、もしくは軽症で社会生活できることにあり、経済活動を重視するなら、1日のPCR検査を欧米並みに一桁増やすなり、ドイツのような敏速簡易検査機をすぐさま導入し、学校や施設だけでなく、各家庭に無償で提供すべきである。

しかし何れもできないのは、市場は競争原理最優先で、教育や医療、さらには環境(水)といった公共資本まで、全て売り物にするカジノ資本主義新自由主義)が横行するにもかかわらず、国をつかさどるお役所は社会主義と揶揄されほど旧体質で権益、利権に縛られ、未だに無謬神話が温存されていることにある。

(412)何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(最終回)国家が陰謀するとき・ドイツ最新ニュースに学ぶ(5)

何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(最終回)

国家が陰謀するとき

 

フィルムで見るように、ノルトライン・ヴェストファーレン州の内務大臣であるヘルベルト・ロイルは、陰謀の神話とイデオロギーの乱用を民主主義への脅威の高まりと見なしている。

すなわちコロナ禍で浮き彫りにされているように、グローバル資本による益々拡大していく格差の問題があり、それを民主主義の政治が解決できていないところにある。

そうした大衆の不満を利用したのが、ドイツの陰謀論者が唱えるビル・ゲイツ陰謀論に他ならない。

番組の視点としては、そのような現在の陰謀論反ユダヤ主義と結びついたナチズム(国家社会主義)再来として捉え、民主主義の危機を警鐘して終わっている。

しかし私にはドイツで繰り返されて来たナチズムへの傾斜だけでなく、陰謀論は極右過激派を遥かに超えて国家レベルで為されているように思える。

例えば現在のポーランド右派政権は、難民は伝染病や禍を運んで来るという陰謀論を利用して、EUの庇護権に基づいた連帯的難民引受拒否を掲げて、リベラル派から政権を奪い取ったからである。

また今年2021年は、1991年の湾岸戦争から30年であり、先日のNHK時論公論でも明言していたように、湾岸戦争に踏み込ませた2つの根拠は、「イラク軍の石油施設破壊による油まみれの水鳥」、「イラク軍の病院での新生児殺し」であり、両方とも武力行使するための陰謀論であったことが世界で実証されている。

さらに2003年のイラク侵攻も、イラク大量破壊兵器保持が武力行使するための国家の陰謀論であったことは、既に世界が共有する事実である。

そのような国家の陰謀論は、シリア戦争やウクライナ戦争でも見られ、コロナ禍の現在にあってはトランプ支持者が民主主義の象徴である国会議事堂を襲撃するほど、危機の時代に突入していると言えるだろう。

最後にこの番組を評価すれば、制作スタッフは極右過激派の攻撃にさえ耐えて、コロナ禍陰謀論の背後に迫っており讃えたいが、国家陰謀論についても専門家に語らせれば、現在の民主主義危機の深淵さが一層感じられたように思う。

 

ドイツ最新ニュースに学ぶ(5)

 

 

1)アメリカ弾劾裁判(無罪判決確実のなかで敢えて為された理由)(ZDFheute2月9日)

この放送でも述べているように、共和党の殆どの議員が反対するなかで、50名の共和党上院議員17名がトランプ弾劾賛成に回ることはなく、勝ち目のない戦いを敢えて為した理由を考えなくてはならないだろう。

ZDFの米国特派員のElmer Theveßenは、その理由に対して民主党は2つのシグナルを送りたかったと述べている。

一つは、今回起こった事件が憲法に基づくのか?、そしてトランプは大統領職にないとしても、責任がないのか?というシグナルである。

もう一つのシグナルは、民主主義がどれほど深淵に近づいたことを示すことである。

私自身も今回民主党が2回も弾劾裁判敗訴を覚悟して、世界に再度問うたことは意義あることだと確信する。

何故ならトランプ政権の4年間は民主政治を否定したものであり、今回の選挙敗北を支持者を使って奪い取ろうとした事実を再度世界に問うことは、恐ろしい時代の幕開けを警鐘するからである。

それと同時に多くの大衆が、トランプの「戦わなければ、私たちの国はない」という要請で国会議事堂に集まり、襲撃したことは脅威であり、一歩間違えれば米国独裁国家を誕生させた危うさである。

その原動力は、トランプのグローバル資本主義に真っ向から反旗を翻した保護主義であり、それがアメリカ市民の半数近くの絶賛的支持を造り出したことを、バイデン民主党政権、及びソ連、中国を含めた世界の資本主義国家は熟慮しなくてはならないだろう。

 

2)ドイツ再びロックダウン延長(ZDFheute2月11日)

 

ドイツのコロナ感染は順調に下がって来ており、1日の感染者数や住民10万人の7日間の感染率も1か月前に較べ、半分以下に下がって来たことから、ロックダウンから自主制限を期待する声が高まっていたが、ドイツ政府はさらに1か月ロックダウンを継続する厳しい措置を採った。

このような厳しい措置を継続する理由は、翌日に為されたメルケルインタビュー「コロナ対策の展望と反省」で明らかにしている。

 

3)メルケルインタビュー「コロナ対策の展望と反省」(ZDFheute2月12日)

 

実際にはこのインタビューは12分間渡って、国民の求める質問がメルケルお気に入りのZDF報道女史マリエッタ・スロムカを通して、国民の理解を深めるべく和やかになされている(注1)。

このインタビューの第一のポイントは、コロナパンデミックの展望であり、このままコロナは終息に向かうのか、そしてコロナパンデミック第三波があるかである。

メルケルの回答は、まだコロナ渦中にあるが、この3週間半で1日の感染者数及び感染率は半減しており、このままロックダウン制限を守って行けば、3月1日までには解除基準の感染率(住民10万人の7日間の感染者数)50以下にできると述べている。

そして第三波なしで乗り越えれるかは、現在の賢明で慎重な開始ステップにかかっているとし、3つの側線(ストランド)が開始されるのは感染率35以下が2週間以上継続されなくてはならないと明言している。

第二のポイントは、現在世界で普及しているワクチンはドイツのベンチャー企業で生み出されているにもかかわらず(開発は米国ファイザーとの共同)、12月終わりから始まったドイツでのワクチン接種が余りにも遅く、ワクチン供給が各地で不足している現状と批判を踏まえて、お金が関係しているかの質問である。

メルケルの回答は、お金の問題ではなく、単にコミュニケーションの誤りとし詳しく語らなかったが、現在接種加速に努めており、3月末、遅くとも4月には全てがワクチン接種できるだろうと自信を持って述べている。

(この背景にはワクチン供給注文が、連帯を重んじてEU注文であり、注文量にもEUのミスがあり、さらに実質的に米国への供給が優先されるなどの事情には触れず、接種の加速で批判は解消されることを強調している。それは2月からドイツ国内マールブルグでワクチン生産が始まり、大量に供給できる自信から来るものであろう。実際1月の終わりは200万を超えた程のワクチン接種が、2月14日の発表では414万を超えており、急速に加速し始めている)。

そして第3のポイントは、全ての制限解除の条件として、発生率35が2週間以上継続すると言う恐ろしく厳しい基準を打ち出した理由である。

それはコロナ第二波が夏の終わりに始まったにもかかわらず、秋の期間は躊躇して11月まで第一波のように行動制限に踏み切れなかった反省を吐露し、隣国のチロル地方南アフリカ変種コロナ感染が猛威を振るう中で、何としても第三波なしでコロナ終息を成し遂げようとするメルケルの思いが感じられた。

(注1)

https://www.zdf.de/nachrichten/heute-journal/videos/merkel-interview-corona-video-100.html

(411)ドイツ最新ニュースに学ぶ(4)・何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(4)陰謀論とAfDの末路?(ZDFズーム『コロナ神話の力・民主主義の危機(4)』)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(4)

 

1)AfDの党大会・基本法はAfDを裁くのか

(ZDFheute2月7日)

AfDは2014年EU懐疑主義ナショナリズムを掲げて誕生し、2017年の連邦選挙では12、6%という一気に高い支持を得て、連邦議会に94名の議員を送りこんだ。

しかし難民排斥などで絶えず極右的過激な行動が問題を起こし、コロナ禍の2020年には下の陰謀論で見るように益々過激化し、市民やAfD政党以外の政治家から基本法で裁くことが高まっていた。

このZDFニュースでも、1月末には既に憲法擁護庁の監視が始まっていると報道しており、今回の報道からも、AfDが基本法で裁かれる公算が高まったと言えるだろう。

このように憲法擁護庁が動き出したのは、下の陰謀論とAfDの関係を見れば一目瞭然である。

 

2)民主主義女神スーチー拘束に冷ややかなドイツメディア(ZDFheute2月1日)

日本の公共放送NHKミャンマー政変 民主化を後退させるな」(時論公論)から読売新聞「ミャンマー政変 国際連携で平和解決を促せ」に至るまで、ミャンマーの政変クーデターに強い抗議を示している。

これに対してドイツのメディアは、このZDFheuteで見るようにクーデターとして報道し、嘗ての世界の自由のイコン(聖画像)の抗議の訴えを伝えているが、敢えて主張はせず、冷やかさを感じずにはいられなかった。

その理由は、事実上ミャンマーを統率するアウン・サン・スー・チーが、軍のロヒンギャ大量虐殺やイスラム教徒少数派への弾圧への国際世論の抗議を無視するだけでなく、2019年ハーグ国際法廷の大量虐殺事申立に対して、大量虐殺はなかったと却下し、「武装反政府勢力から国を守っただけである」と述べ、ドイツでは少数民族の権利を守る国際非政府組織「脅迫された人々のための社会(STP)」(本部ドイツゲッチンゲンを通してメディアが詳しく伝えていたからである。

したがってシュピーゲル誌オンラインの「ミャンマーの軍事クーデター」の記事では(注1)、このよう事態を招いたのはこの10年間約束していた民主改革も殆どせず、彼女の政治スタイルも独裁的スタイルになっていたからだと述べていた。

またベルリナー・モルゲンポストは(注2)、「軍事独裁政権の復活」と伝えていたが、かつての民主主義のイコンには批判的で、彼女に失望した多くの民主主義者の意見として、「彼女は軍隊や大量虐殺の従順な道具となり果てていた」と述べ、彼女の政府は益々独裁的になり、表現の自由報道の自由が制限するようになって来ていたと述べていた。

報道では国連事務総長が、国際協調で確実にクーデターを終わらせると明言しているが、ヨーロッパの国々は冷めており、中国が鍵を握っていることから協調さえ難しい構図が見えて来ている。

(注1)

Putsch in Myanmar: Aung San Suu Kyi festgenommen - DER SPIEGEL

(注2)

Putsch in Myanmar: Comeback einer Militärdiktatur - Berliner Morgenpost

 

3)ドイツの雇用と障害者(ZDFheute1月29日)

日本人がこの放送見れば、失業率は倍近くあり、2020年の1月に較べて失業者が50万人近く増えており、1日のコロナ感染者数も数倍近いことから、日本以上に暮らしへの不安が拡がっているように感じられる。

しかし実際は、そのようなイメージとは全く異なるものである。

昨年初めドイツにコロナ感染が拡がるや否や、メルケル首相はドイツに暮らす全ての人を救うと誓い、経済対策支援金7500憶ユーロ(約90兆円)を計上し、影響を受ける企業だけではなく、商店経営者から芸術家などの自由業の人たちに至るまで手厚い支援がなされ、約束通り誰一人見捨てない支援がなされて来た。

具体的には、ベルリンに暮らす自由業の人であれば、暮らしに困窮しているという申請書を出すだけで、審査なしに2日後に5000ユーロが個人銀行口座に振り込まれ、市民の満足度kも著しく高いことが、このZDFheuteでも報道されていた。

日本では職を失うことで暮らしに困窮しても、自動車の保有さえ認めないと言う具合に生活保護の審査基準は高く、審査期間も長く、緊急的支援は期待できない。

しかしドイツでは暮らしに困窮すれば、申請するだけで審査なしに、少なくとも生活給付金が6カ月支給されることから、正規にドイツに暮らすものであれば、たとえコロナ禍での失職で収入が絶たれても、行動自由への制限不満は頻繁に報道から聞かれても、暮らしの困窮不満は報道から殆ど聞かれない。

そのように現在のドイツのソーシャルセーフティーネットは充実していることから、失業者も自分に合った職を探すことから、日本に較べて失業率が高いのであって、寧ろ豊かさを示すものとさえ見える(もっとも2000年初めに成立したハルツ労働法前は、専門の職が見つかるまで給付が期待できる時代から見れば、その豊かさは大きく後退したと言えるだろうが)。

でこの放送ではコロナ禍でドイツの雇用も大きな影響を受けており、障害者行動協会の代表は、障害者がこれまで健常者と同じように働けるよう積み重ねて来た努力が5年前に戻ったことを嘆いている。

また障害者が新たな職場を見つけるには、健常者の場合より100日程長くかかることを訴えている。

しかしそれは、障害者のノーマライゼーションを着実に進めて来たドイツだから言えることであって、障害者が100日も長く自分に合った職を探せることは、逆に豊かさだとさえ思える。

 

陰謀論とAfDの末路?(ZDFズーム『コロナ神話の力・民主主義の危機(4)』)

今回のフィルムは陰謀論とAfDの関係テーマであり、陰謀論とAfD過激派の引き起す事件がコロナ禍のドイツで絶え間なく拡がっているからである。

そうした現状に、戦う民主主義を掲げる民主主義を掲げるドイツのメディアも絶えず戦っている。

昨年12月12日には、「日刊シュピーゲル」が「AfD支持者拠点とコロナ感染者数のタイトルで、イエナ民主市民社会研究所(IDZ)の研究報告を載せている(注1)。

すなわち2017年連邦議会選挙のAfD得票数とその地区のコロナ感染者数が、高い相関関係にあることを、相関地図及び相関グラフで分析していた。

例えば地図からは、ザクセン州バウツヱン地区ではAfD得票数32,5%、感染者数2714人(10月1日以降の住民10万人当)であるが、隣のニーダーザクセン州のゲッチンゲン地区では得票数8.1%、感染者423人という具合である。

またこの研究報告に呼応するかのように、12月20日のフランクフルト紙は、コンラート・アデナウアー財団の依頼調査として、AfD支持者の大半がコロナ感染を陰謀説として信じていない分析結果を載せている(注2)。

このような有無を言わせないドイツメディアのAfD包囲網がドイツ市民の基本法裁きを求める声を高め、ZDF報道で見る憲法擁護庁を動かしたと言っても過言ではない。

おそらくAfDは政党解散などと言った厳しい措置が出されるであろうが、それで解決されるわけではない。

AfDの支持者には貧困層の極右、極左支持者が多く、格差の問題に本質的に取組まない限り、陰謀論が極右、極左を巻き込むネオナチ的現象はなくならないであろう。

(注3)

Hängen AfD-Hochburgen und hohe Coronazahlen zusammen? | Tagesspiegel

(注4)

F.A.S. exklusiv: Deutliche Mehrheit der AfD-Anhänger glaubt an Corona-Verschwörung (faz.net)

(410)ドイツ最新ニュースに学ぶ(3)・何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(3)陰謀論の本質(ZDFズーム『コロナ神話の力・民主主義の危機(3)』)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(3)

1)1月20日ZDFスペシャル・バイデン大統領就任

このZDF番組から伝わって来るのは、地球温暖化ユニセフ、WHOなどの脱退で世界の分断より鮮明にして来たトランプ政権に変わり、世界を公正な統合へと導いてもらいたい、バイデンへの篤い思いである。

それでも絶えず公正さを追求しようとするドイツの第二公共放送ZDFは、バイデンの誠実で思いやりのある長所と同時に、過去の過ちとも言うべき短所をしっかり描いている。

ここに載せた動画は最初の5分ほどであり、その後は外相や専門家に聞くことで、これからの難しい課題と展望tを述べていたが、そこにもバイデンへの期待が溢れていた。

 

2)1月22日ZDFheute・ドイツのコロナ感染爆発は峠を越えたのか?

ドイツの1日のコロナ感染者数はピーク時から減って来ており、それはグラフからも明らかであり、クリスマス時点の発生率(10万人あたりの過去7日間の発症例)は196であったが、1月22日には115まで下がっている。

また集中治療室での重傷者は4800人で、1月初めより1000人弱減っていることを伝えており、日本に較べれば余裕さえ感じられる。

しかしドイツ政府は慎重であり、1月末までとしていたロックダウン(都市封鎖、原則15キロ以上の移動禁止)や、学校、商店などの閉鎖を2月中旬まで再継続することを決めている。

これに対して日本も年末からの緊急事態宣言で少し減少の兆しが感じられるが、医療は既に崩壊状態に近く、多くの人が益々困窮しているにもかかわらず、1兆円もの予算を計上したままで、ステージ2(夜間外出自粛)に下がれば2月7日から、再びGo To トラベルを再開するとしている。

それはGo To トラベルがコロナ感染を全国に拡散する大きな要因であったことから見れば、余りにも横暴だと言わざるを得ない。

過去の過ちに目を背ける姿勢は、大本営時代から現在の高速増殖炉開発や核燃料サイクル政策継続に至るまで頑なに守られており、このような反省なき横暴を繰り返して行くならば、日本の破綻も遠くないだろう。

 

3)コロナ禍のドイツの大学

ドイツの大学生もこの一年オンライン授業しかなく、しかも現在のように大学自体が閉鎖されている状況は、先が見えないだけに、学生たちの孤立感と将来への不安が伝わって来る。

しかしながら、ドイツの大学授業料は無料であり、家庭財政事情によらず学生生活が成り立つよう、様々な支援制度が配慮されており、日本の学生に較べれば比較にならない程恵まれている。

尚、学生ジェーロムが申請したコロナパンデミックの緊急事態学生支援は、連邦教育研究省が統括しており、ドイツの大学に在籍する国内外の学生であれば、毎月の申請で100ユーロから500ユーロ返済しなくてよい支援を受けられというものである。

但し受け取れる唯一の条件は、本人の銀行預金が500ユーロに満たないものであるとしており、様々な職業アルバイトをしていたジェーロムの申請が撥ねられたのは、500ユーロ以上の預金があったからである。

これに対して日本の困窮学生への支援は余りに酷く、免罪符的なものと言っても過言でない。

具体的には生活を支えるアルバイト収入が減った学生に、申請で10万円(非所得家庭20万円)を支給しただけであり、益々困窮する学生をこのような免罪符的措置で放置するのは、憲法の掲げる教育機会の均等からしても、決して許されるものではない。

 

何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(3)陰謀論の政府見解と専門家解説

今回のフィルムの終わりで連邦内務省の見解は、「事実陰謀論は、コロナ行動制限の市民のデモを、自らの目的と一緒に利用する極右グループの戦略である」と述べ、デモには極左グループも参加していることに対して「二つの敵対する過激グループの間の相互作用が、またとないチャンスから不安までを与えている」であった。

長年陰謀論を監視してきたジャーナリストのマーチン・ファレゼーは、現在のデモにおける陰謀論グループは、この十数年民主主義の滅亡を夢見てきた右翼愛国者であると指摘し、「抵抗を呼び覚まし、“我々はまさに上に立ち向う”」が様々なグループの共通点だと述べている。

またマインツ大学の社会心理学者ピア・ランムバティーは、「人間はコントールされる強い欲求があり、陰謀信仰は全てを投影できる強力な役者を持つという代償戦略です」と解説している。

すなわち現在のコロナ禍では、ウイルスが見えない故に、大衆は戦うべき共謀者の敵を求めており、そこに陰謀論者の運動戦略があると述べている。

この社会心理学者ピア・ランバティーは、ドイツに陰謀論の専門家が少ないことから、昨年ドイツの多くのメディアでインタビューを受けており、ドイツ公共第一放送ARDに所属する中央ドイツラジオ放送MDRのインタビューがわかり易いので、抜粋翻訳して下に載せて置く。

"Das Virus ist unsichtbar, der Verschwörer wirkt greifbar" | MDR.DE

なぜ人々は陰謀を信じるのですか?

「原則として、陰謀信仰は無力に対処する方法だからです。世界の悲運を導く邪悪な共謀者がいるとわかった時、一つの構造があります。すなわち、自分が戦わなければならないものがわかったと思います。ウイルスは見えないが、それに対して共謀者は目に見えるからです」

どのような人が陰謀論に特にかかり易いですか?

「社会にいかに取り残されていると感じるか重要です。例えば、不安定な仕事をしている人は陰謀を信じ易いことがわかります。或は、より低い教育しか受けていない人がそうです。それは、彼らがあまり知的ではないからではなく、彼らがこの社会に殆ど関与していないと感じているからです。すなわちこれらの状況要因が、重要なすなわち役割を果たします。それに附け加えて、陰謀論を通して自らを上昇させたいという願望など様々な要因があります。自分は真実を見るものであり、他のものは制度の背後で盲目的にしたがっている。このように考えることで、自らの自尊心を押し上げることができからです」

陰謀論信仰が問題になるのはどういう場合ですか?

陰謀論は批判に対して免疫化しています。異なる意見を持っているすべての人は、ナイーブな眠っている羊であるか、陰謀の一部になっています。私たちは、社会に広く普及している現象について話します。人間嫌いや民主主義不信が募って行き、長期的には、人々を過激化させる可能性もあります。そして、最後の段階では、絶えず繰り返し見てきましたが、 陰謀論は当然暴力を正当化し得るでしょう」

(409)ドイツ最新ニュースに学ぶ(2)・何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(2)陰謀論の目的(ZDFズーム『コロナ神話の力・民主主義の危機(2)』)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(2)

1)ZDFスペシャル(議事堂襲撃でのトランプ総括)

1月7日

前回載せたZDFheuteニュース「トランプ支持者の国会議事堂襲撃」で見るように、最早トランプをアメリカ大統領として扱うのではなく、ドナルド・トランプを扇動者として捉え、同日放送したZDFスペシャル「民主主義は危いか?・アメリカの混沌と暴力」では、トランプが大統領に就任した時から現在の襲撃扇動の4年間を厳しく総括していた。

それはトランプが就任以来民主主義を否定し続け、批判的メディアのニュースを絶えずフェイク(嘘)と攻撃して来たからであり、ドイツの採る姿勢と相反することから、議事堂襲撃事件を契機に、これまで堪えて来た批判が噴出したように思える。

すなわちドイツの採る姿勢とは、ナチズムを真摯に反省し、ホロコーストとはなかったというような陰謀論を法で処罰するだけでなく、極右や極左の政党を禁止する戦う民主主義に他ならない。

しかしそのようなドイツでも、下に連載する『コロナ神話の力・民主主義の危機』が描くように、絶えず法を掻い潜り、陰謀論が拡散されているのが現状であり、その背後には、格差の肥大、コロナ感染症危機、気候変動危機などで、世界を分断する陰謀論が見えて来る。

 

2)ZDFheuteニュース「健康と動物福祉のビーガン」

1月12日

このニュースを敢えて載せたのは、動物の肉さえ食しない菜食主義ビーガンを推めたいたいと思うからではない。

もっとも穀物10キロを飼育動物に食べさせて、1キロの肉にするやり方は将来的に通用しなくなることも確かであり、菜食中心の食生活は健康にも良いことは確かである。

私自身2007年からの4年間のベルリン暮らしで驚いたのは、多種類のヴルスト(ソーセージ)やお肉、さらにはビールやワインの美味しさと安さであり、毎日食材を買ってブラーテン料理を調理し、ビールやワインで食することが楽しみであった。

しかしそのような美食生活は長く続かず、徐々に夜中に口が乾き、不眠に悩まされることが多くなり、度々胸が苦しくなっていた。

私の家系は糖尿と狭心症であることを思い出し、検査してもらったところ血糖値が高く、コレステロール値も異常に高くなっており、このような食生活をしていたら先は短く、不自由な生活を強いられると悟った。

だからと言って直ぐに菜食主義に変わったわけではないが、食生活を守るために、ベルリンでの後半の暮らしは、菜食中心にアルコールも殆ど飲まなくなって行った(それが現在まで継続され、今では健康を取り戻すだけでなく、自信も持てるようになって来ている)。

そのように食生活が変化すると、ドイツでは菜食主義ビーガン運動が盛んであり、自らの健康と動物福祉のために菜食主義で暮らしている市民も少なくないことが見えて来た。

また世界で最も広く充実したベルリン・ティアハイムなどを探索することで、ドイツ人が単に愛玩動物だけでなく飼育動物に対しても、動物の生きる権利を尊重しようとしているかを知った。

そして今、コウモリ由来のコロナウイルスが、そして鳥には鳥インフルエンザが猛威を振るう中で、動物福祉の問題は避けて通れない事項となって来ているように思う

特に日本では飼育動物に対して動物福祉という配慮がなく、生産者は価格競争のなかで狭いケージ飼い量産化が益々肥大化しており、それが新しい年になっても連日報道される吉川元農水大臣収賄事件の原因である。

すなわちその原因は、数年前から国際機関から動物福祉を求める力が強まり、国際機関の要請でE Uのような飼育動物にも厳しい動物福祉の基準が作成されれば、鶏卵生産業者には死活問題であるからだ。

しかも昨年11月より鳥インフルエンザが全国15の県36か所で爆発的に急増し、1月17日のNHKウェーブニュースでは速報値で総計580万羽が殺処分されたと報道されていた。

確かにドイツでも鳥インフルエンザが同時期に発生しているが、飼育動物の苦痛やストレスをかけないことが厳しく求められるため、日本のようにケージ飼い大量生産の飼育工場でなく、平場飼いが主流になってきていることから、一農場あたり数千羽の飼育で、感染での殺処分数も圧倒的に少ない。

ポストコロナの時代は、現在のような環境だけでなく動物福祉を無視するようなやり方は最早通用しなくなるだろう。

それは生産者にとって、地域で動物福祉に配慮して平場飼いで小規模して行くことは厳しいことであっても、本来の動物飼育の楽しさを取り戻すことではないだろうか。

また消費者も伸び伸びと健全に育つ肉や卵を食することは、コストは高くなるとしても、安心で自らの健康にも良いと確信する。

しかし日本では平場飼い卵が3倍価格もするなかでは、消費者も生活にゆとりがなく、動物福祉を配慮するやり方を実現することは難しい。

その実現するためには、このブログで再三述べているベーシックインカム導入といった格差縮小を突破口として、動物福祉や温暖化問題に取組んで行かなくてはならないだろう。

 

何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?

(2)陰謀論の目的

現在のコロナ禍で一寸先は見えないことから、誰もがこの先を不安に思い、最初は行政に期待するが、決して上手く行かない。

それ故に誰もが納得の行く説明を求める所に、陰謀論が蔓延る土壌があるように思える。

ドイツても最初のコロナ感染第一波が押し寄せた頃は、メルケルの毅然とした国民への行動制限要請が高く評価され、メルケルは大量難民受入れで失った信頼を失っただけでなく、世論調査では90%を超える支持と信頼を回復した。

しかし経済界の圧力もあって行動制限が早期に解かれたこともあって、コロナ感染は克服されない中で、上のフィルムでみるようにコロナ陰謀論なり、Qアノン陰謀論が拡散されて行ったことも事実である。

コロナ陰謀論とは、世界のコロナ対策を執るWHOに多額に財源を提供するビル・ゲイツが、WHOを支配し、政治家や学者を操り、世界人口を減らすためにワクチン接種を強制し、その際マイクロチップを埋め込み、5G利用で世界を支配するというものである。

これらの陰謀論を拡散しているのが極右グルプなどが関与する「Qアノン」グループであり、このQアノンはトランプ大統領誕生の求心力とも言われ、バラク・オバマヒラリー・クリントン、そして民主党議員の多くが、アメリカを小児性愛者で組織される「深層国家」(独裁国家)に変えるようとしていると、絶えず訴えているのである。

そしてドイツでのQアノン陰謀論者は、フイルムにも出て来るケン・ジェブセンであり、反ユダヤ主義者であり、ユーチューブを通してコロナ感染の敵はビル・ゲイツであり、その手先となっている学者がウイルス学者ドロスデン(メルケルの下でコロナ対策指導)であり、政治家のスパーン保険大臣であると敵の像を作り上げている。

そしてこれらの陰謀論から見えて来るのは、Qアノングループがトランプの背後で「バイデンは中国の手先」から「国会議事堂襲撃」に至るまで、トランプの求心力であったことから、見えて来るのは明らかであろう。

それはナチズムの如き独裁国家ぐ再来を目指すものであり、彼らこそが大衆が望むわかり易い陰謀論を利用して、独裁国家、さらには世界支配を企んでいると言えるだろう。

しかしその背景には、自国利益第一主義を求める絶えざる成長を求めるグローバル資本主義の行き詰まりがあり、民主主義の危機があることも確かである。

参照資料

フランクフルト紙オンライン「ビル・ゲイツとコロナウィルスに対する陰謀論・政治の背後に何があるか?」

Verschwörungstheorie zu Bill Gates und dem Coronavirus: Was steckt dahinter? | Politik (fr.de)