(422)ドイツ最新ニュースから学ぶ(15)

 

ドイツの徹底した「過去の克服」(ZDFheute5月28日)

 ドイツは、20世紀初頭の帝国主義植民政策を採るなかで、当時の植民地ナミビアにおいて先住民族ヘロン属とナマクワ属の数万人を虐殺した。

その過去の過ちに対して、5年前から和解への対話を続け、今年5月28日ドイツ政府はその際の虐殺をジェノサイドと公式に認め、道義的責任としてナミビア発展のために11憶ユーロ支援供出を表明した。

まさにこれは、ドイツの徹底的な「過去の克服」であり、ナミビアの次は第二次世界大戦でのポーランドギリシャだと言われている。

戦争での過ちに対して言及するだけで、自虐史観として激しい批判がある日本では、このような徹底した「過去の克服」は理解不可能であり、何故ドイツはそこまでやるのかと問わずにはいられない。

実際ドイツは、ホロコーストの犠牲者に対しては、被害者補償や司法訴追だけでなく、ネオナチ規制から公的な認識共有に至るまで、徹底した「過去の克服」に努めて来た。

ベルリンの中心には、何千の石碑が天に叫ぶかのような「ユダヤ石碑」が建設されている。

またドイツの行動を歩けば、そこから強制収容所に輸送された人の名前が刻まれている10センチ四方ほどの真鍮プレートを至る所で見かける。

もっともこうしたドイツの徹底的「過去の克服」は、最初は前進と後退を繰り返し、戦後のナチズムの反省がなされた後は、50年代の終わりには過去の過ちを忘れようとし、ナチ犯罪を65年で時効にしようした時代もあった(現在ではナチ犯罪に時効はない)。

それを変えたのは、60年から始まった「競争よりも連帯」を優先する教育の民主改革だった。

もちろんそれを引き起こしたのは、二度と過ちを繰り返さないことを誓ってつくられた基本法であり、十数年をかけて熟成して来たからこそ開始されたと言えよう。

そして教育の民主改革は、官僚や政治家を市民奉仕に転換させるだけでなく、司法も裁判官たちを高座から市民目線に引き下ろし、市民奉仕に変えたと言えるだろう。

またそうした土壌が70年代終わりには、保守中立を保っていたメディアを奮い立たせ、現在ではタックスヘイブンから気候正義に至るまであらゆる問題で、「戦う民主主義」の姿勢が感じられる。

そこには、よりよい社会、よりよい世界を築きたいと願う市民と連帯するドイツのメディアがある。

同様にドイツの「過去の克服」も進化しており、最初は周辺諸国との賠償や司法訴追を終わらせることで、国益を追求しているという非難の声さえ聞かれた。

しかし今では、これまでの世界では考えられなかった帝国時代の植民地政策の過ちにさえ、謝罪と和解を求め、さらに第二次世界大戦の戦争下おける過ちにも謝罪と和解を求めようとしている。

それは、「過去の克服」にドイツが長年に渡って真剣に向き合い、対話を続けるなかで、ドイツの民主主義を成熟させ、「過去に目を閉ざす者は、現在に対してもやはり盲目となる」を心底悟らせたからと言えるだろう。

また被害者側も、過去の死ほど辛い苦しみは賠償というお金だけで報われるものではなく、和解対話を続けるなかで、封印していた苦しみを語り、加害者と共に過ちのない未来を創ることに救済を見つけたからである。

このようにドイツの徹底した「過去の克服」は、過去の過ちを未来への問いかけに発展させており、究極的には国家間戦争を国際司法解決に変えるものだと信じたい。

それはドイツの未来のためであり、世界の未来のためでもある。

 

喫煙がなくなる日(ZDFheute5月31日)

 

ドイツの戦う民主主義は気候正義、社会正義を掲げ、世界の先頭に立って絶えず戦っている。

しかしドイツほどロビー活動が公然と為され、強固な国はない(本元の米国を除いて)。

それゆえ結論から言えば、喫煙がなくなる日は来ないと言ってもよい。

それは、私がドイツで暮らした2007年から2010年までの4年間に強く感じたことであり、CDUの州首相たちは、「原発は安全、安い、クリーン」というロビーイストたちの標語を使って、原発運転期間の28年延長(2060年まで原発運転)を求め、2010に原発運転期間延長が議決された際は、ドイツでも脱原発は実現しなのかと思った程であった。

2011年10月に災害のお見舞いで日本を訪れたドイツ大統領クリスティアン・ヴルフは、長年ニーダーザクセン州首相として原発推進の急先鋒であったが、その頃はロビー支配が解かれ、日本の講演では「日本でも脱原発は可能だ」と強調していた。

しかし帰国後汚職疑惑が次から次へと明るみに出され、大統領職から引きずり降ろされた事実を、ドイツ人なら理解できるだろう(ブログ79参照)。

その事実からして、ドイツのロビー活動の強さは想像を絶するものがあり、メルケル脱原発宣言後も原発さえ決して諦めていない。

喫煙に対しては、タバコの有毒性葉50年以上も前から科学的事実が報告されて来たにもかかわらず、ロビーイストたちはそのような科学的論拠には全く関心がなく、専門外の世界の著名な御用学者を利用して、都合のよいことだけを指摘し、人々の感情に絶えず訴え続けている。

ZDFの記者はそうしたロビー活動の圧倒的強さを知るからこそ、2040年までに喫煙をなくす癌研究センターの要請に、疑問符を投げかけるのである。

このようなロビー活動の司令塔は、アメリカの財源豊かなハートランド研究所であり、そこからドイツのEIKE研究所(ドイツの大学都市イェーンに2007年に設立された気候変動やエネルギー問題でのヨーロッパ研究所)にお金や指令が出されている。

そのような事実を検証したのは公共放送ZDFであり、昨年2020年に市民調査機関CORRECTIVと共同で潜入取材を強行し、ロビー活動の不正を実証し報道している(ブログ385参照)。

そのような篤いドイツの戦う民主主義にもかかわらず、タバコをなくすこと、そしてロビー活動の不正をなくすことは、ポランニーが“悪魔のひき臼”と呼んだ市場がある限り不可能にさえ見える。

それでも世界が気候変動激化、コロナ以降の感染症激増していくなかで、世界は変わる日は近いと確信する。

国連は現在の危機に、2015年「世界を変える持続可能な開発目標SDGs」を開始し、誰も取り残さない2030年までの実現を宣言している。

SDGsの担い手は、国連が積み重ねて来た議論では、利益を求めない様々な形態の協同組合となっていたが、2015年の国連決議では担い手に多国籍企業も加わり、今やSDGsは経済成長の免罪符に利用されるほど市場に絡め取られている。

それでは京都議定書のように殆ど機能しないことは最初から判り切っており、必ずや世界が動きき出す時が来ると信じたい。

(421)ドイツ最新ニュースから学ぶ(14)

何故ドイツでは気候保護法が5年早まるのか

(ZDFheute5月12日)

 5月12日のZDFheuteでは、ドイツのパリ協定のため政府の昨年決議した2050年までに二酸化炭素排出量ゼロを実現する気候保護法を、5年早めて2045年までに実現すると改正した。

何故政府がドイツ産業連盟の圧力が強いなかで改正したかは、この報道で述べているように連邦憲法裁判所が2週間前に、現在の気候保護法では「将来世代の権利を侵害」しており、2022年までに是正しなくてはならないという判決を下したからである。

このようなドイツの画期的な歴史的判決を引き出したのは、環境団体ブンドなどと共に提訴していた「未来のための金曜日」の若者たちである。

ドイツの憲法である「基本法」は人間不信の憲法といわれるように、人間の尊厳、基本的人権、そして万民の幸せ追求を憲法改正できない普遍原理とし(第1条から第20条まで)、戦争に導くファシズム共産主義などの全体主義を厳しく禁止し、自由に対しても厳しく規定していることにある(「ホロコーストはなかった」という表現の自由さえも、犯罪と見なされる)。

そのような多数決で改正できない普遍原理として、第20条aで「自然的な生活基盤保護」を保証しており、それを遂行するのは国家の義務であるからだ。

判決では、2019年に出された基本保護法を原告の要請に従い詳細に検証し、2030年以降の実現するための確かな踏み込んだ計画がないことは、基本法第20条aに違反するとして、改正を求めたのである。

日本においても憲法第25条は、1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と国民の生存権を保障し、その2項で「国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国の責務であると明記しているにかかわらず、コロナ禍では数えきれないほど多くの人たちが暮らしに困窮しているにかかわらず、見捨てられている。

確かに国は困窮者には特例貸付制度で困窮者を救っているとしているが、困窮者が自ら職を見つけて稼ぐことは難しく、何度も特例貸付制度が利用され、返済不可能にまで借金が膨らんでいるのが実態である。

しかもこのような人々が生活保護を申請しても、予算枠があることから、生存するための預金などがなくても、就職活動が積極的でないなどの理由で認可が難しいのが現状であり、孤独死に追いやられていると言っても過言でない。

このような実態は明らかに憲法に違反するものであり、ドイツであれば違憲判決が出され、即座に改善がなされる筈である。

何故なら予算がないわけではなく、Go To では1兆円以上を計上し、土建国家維持のためには将来世代からの負債である国債を無尽蔵に増発しており、憲法上問題がある防衛費増大にも糸目を付けずに出していることからしても、国が真剣に憲法25条を責務と考えるなら即座に実現できる筈である。

しかし実現しないのは、国が憲法を建前ぐらいにしか考えておらず、それ故に平和憲法の改正をコロナ禍でさえ急ぐのであろう。

何故ドイツでは憲法裁判がそのように機能するかは、ドイツがナチズムを誕生させた富国強兵、殖産興業優先の官僚支配を、国民への官僚奉仕に逆転させたからである。

それは行政訴訟を簡易にするだけでなく、裁判では行政の全ての記録資料提出が義務付けられており、徹底した官僚責任が問われているからである。

またそのような官僚奉仕のなかでは、政治家も国民への奉仕が第一に求められるため、今回の判決でも映像で見る政府の連邦環境大臣や経済大臣は、まるで力を得たかのように判決を歓迎し、2週間で気候保護法を強化改正したのである。

日本も明治政府がドイツ帝国から学んだ官僚支配を、いつまでも固執しているようでは最早国が倒壊しかねない時代が、間近に来ていることを喫緊に悟らなくてはならない。

 

パレスチナ紛争エスカレートが投げかけるもの

(ZDFheute5月11日) 

11日間に渡ってエスカレートしたパレスチナ紛争が、前日ドイツ外相ハイコ・マースがイスラエルを訪れ、戦闘停戦を強く要請したことから、イスラエル側も特別な関係にあるドイツ、そしてEUの要請拒否は難しいことからようやく停戦が実現した。

今回のハマスパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織)が5月10日に突然開始したロケット弾攻撃は、それなりに理由があるとしても、イスラエル市民の無差別砲撃は絶対に許されるものではない。

そのような砲撃をすれば、これまでの経緯から圧倒的力の差があるイスラエルが、ゴザ市民を徹底的に無差別空爆することは判り切ったことである。

それにもかかわらずパレスチナ市民を生贄にしてまで実行した裏側には、想像を絶する恐ろしい目的があったようにさえ思える。

またイスラエルにしても、祖父母世代がホロコーストというジェノサイドを受けたにもかかわらず、無防備なゴザの市民や子供たちをを11日間に渡って、徹底的に空爆で殺戮したことはジェノサイド行為である。

ホロコーストでは、人の命が“もの”としてしか考えられず、600万人ものユダヤ人が虐殺されたが、それはアドルノ等が指摘するように、理性による啓蒙が近代において自然や人間支配の道具となったことに依っている。

そのような理性の道具化は戦後においては益々拡がっており、ポルポトの大虐殺から最近の香港やミャンマーの市民虐殺に至るまで、目的達成のために人の命が“もの”として扱われることが日常茶飯事となって来ている。

しかし国民の多くが餓える国でも北朝鮮のように核大国になれる事実からして、最早このようなジェノサイドを国際社会が直接関係ないとして放置すれば、憎しみの連鎖がエスカレートして行き、核戦争、すなわち世界絶滅戦争を招くことは必至である。

国際社会が真摯に関与しても、従来のように平和協定を目標にするとすれば、カントの言うように平和協定は将来必ず破られるものであり、実際中東紛争では何度も何度も破られ、その度に憎しみの連鎖を激化させており、究極的に世界絶滅戦争は避けられないだろう。

本質的解決のためには、例えば国連軍がイスラエルパレスチナの間に中立緩衝地帯を造って、ハーグ国際裁判所を緩衝地帯に移転するくらいの行動的積極性が不可欠である。

中立緩衝地帯はイスラエル誕生前のようにユダヤ人とアラブ人の共存を望む人たちを入植させ、国際司法が時間をかけて解決していかなくては人類の未来はないだろう。

 

(420)ドイツ最新ニュースから学ぶ(13)

中国とのバランスが壊れるとき(ZDFheute4月28日)

 

2年ごとに開かれる中国とのこれまでウィンウィン関係のバランスを保って来た首相会議は、4月28日オンラインで開かれたが、ポストトランプの時代も米中対立激化を受けて、メルケルも執拗に人権問題を持ち出し、ウィンウィンの関係が崩れたことを露呈した。

もっとも既に4月23日の連邦議会で、中国通信機器ファーウェイを対象として、「情報システムセキュリティ強化の2法案」が決議され、使用する部品の技術検査だけでなく、製造業者の信頼性での政治評価がなされることになり、ドイツでのファーウェイ採用に事実上ブレーキがかけられていた。

そうした後での会議であったことから、映像から見る中国首相もぎこちなく、いつもの自信に溢れた表情が陰を潜めていた。

しかし本質的な問題は、香港や少数民族ウイグルなどでの中国の全体主義的独裁支配であり、もしそれらに対して民主的に解決する姿勢があれば、ドイツ、そしてEUも中国とウィンウィンの関係を継続したかった筈である。

気候変動が激化し、コロナ感染が猛威を世界に振るうなかでは、気候正義、社会正義を求める声が高まっており、世界の政治家もそれを無視できない時代に突入している。

 

インドの脅威的コロナ感染(ZDF5月3日)

 

 私が50年ほど前カルカッタインダス川の畔で、死を待つ人が路上で寝起きし、その横で何体もの死体を焼く風景には荘厳さが感じられた。

しかし今映像から見るものには、哀れみを感ぜずにはいられない。

また50年前も、インドでは注文料理を1時間以上待ったり、時刻表にある列車を数時間待つことは日常茶飯事であり、私には絶えず腹立たしく思えたが、当時のインド人は誰もがそんなもんだと述べ、ゆったり生きれることを羨ましくさえ思えた。

しかし50年経った今、そのゆったりさも消えていた。

もっとも今も生きること、死ぬことは神様(ヒンドゥー)のお導きなのか、今も死など恐れていないように見える。

実際感染者発生率1000は、発生率100を超えても脅威と感じるドイツの記者には思考さえ停止させるものなのか、感染者数が2000万人を超えたにもかかわらず、実際はその何十倍と言わせるのだろう。

しかし世界が感染拡大をそのままにすれば、容易に変異を繰り返すコロナウイルスは益々手に追えないものになって行き、人類を滅ぼすこともあり得よう。

だからこそ今、社会正義が叫ばれ、WHOが今年末までの貧困国での20億人分ワクチン接種を唱え、米政府がワクチン特許放棄を提案し、それを欧州だけでなくロシアまでが支持する流れが高まっているのである。

それは、現在を変える“塞翁が馬”とも言えるだろう。

(419)ドイツ最新ニュースに学ぶ(12)

コロナ禍で一進一退の緊迫が続くなかで、世界の未来を切り開く出来事があった。

一つはバイデン大統領が強く打ち出したグリーンニューディール政策で、それで地球温暖化が本質的に解決するとは思えないが、それで世界が遅まきながら連帯して取組むとすれば、少なくとも未来は繋がるだろう。

もう一つは緑の党が党の誕生以来初めて首相候補を決め、政治のあらゆる分野で気候政策に取組むと宣言したことである。

緑の党は、社会民主党やリンケ(左翼党)のように労働組合基盤を持たず、また保守のキリスト教民主同盟のように産業ロビーイストとの関係もなく、言わば市民がロビーイストの市民政党である。

そのような市民政党から、世界初の首相誕生は何を意味するか考えて見たい。

 

『バイデンが開く気候正義ZDFheute4月22日』

・・・気候正義は世界を変えられるか?

 

バイデンがグリーンニューディール計画で、2030年の温室化効果ガス排出量を少なくとも半減すると世界に宣言したことは、パリ協定を画期的に加速する。

しかも気候正義の実現では、中国からロシアまですべての国が一体となる世界が戻って来たことは、競い合いとしても素晴らしことである。

しかしバイデンの唱える雇用のためのグリーンニューディール計画は、地球温暖化という危機さえも絶えざる経済成長に利用するもので、90年のリオ宣言以来の温室効果ガス排出量を絶えず増大させて来た事実からも、前途は決して楽観できない。

例えば日本は2050年までに炭素ゼロの水素社会実現を掲げているが、水素製造では殆どがオーストラリアでの石炭からであり、それでは水素発生と同量の二酸化炭素

が発生する事から地下貯蔵を計画している。

しかし二酸化炭素地下貯蔵技術は完成された技術ではなく、たとえ将来完成してもコスト面で実現不可能である。

何故ならドイツ経済研究所は、既に10年近く前に世界の研究結果を検証してそう結論づけている。

結局それでは、他の国で排出されるだけで、先進国の表向き炭素ゼロとなっても、絶えざる成長を求めている間は変わらない。

それ故、地球温暖化は益々進み、気候変動による洪水や干ばつ被害に加えて、世界的食料危機の発生、さらにはコロナ終息後にも頻繁な感染症襲来は避けられそうにない。

しかしそれでも世界が一体となって気候正義に取り組めば、たとえ恐ろしく険しい途を辿るとしても、自ずと希望ある未来が見えて来るだろう。

それは私の考えでは、地域分散技術の自然エネルギー利用の地域自給社会であり、すべての地域自給社会が連帯する一つの世界である。

 

 

緑の党女性首相が誕生する勢い』

・・・何故今そのような時代が生まれているのか?

 

68年の世界の平和と平等を求める若者たちのうねりは、ドイツでも議会制民主主義を放棄し、力による変革を求めた。

しかし若者の力による変革が当然の如く燃え尽きた後、その灰の中から緑の党が誕生し、環境から平和に至るまで議会民主主義を通してオルタナティブな突破口で、世界に轟く環境先進国を築いて来た。

しかし緑の党が掲げる理想原理「エコロジー、社会的連帯、底辺民主主義、非暴力」は、誕生以降のドイツ社会でもラジカルであり、あくまでも未来への途先案内人であり、緑の党からの首相誕生など、誰も夢にも思わなかった。

それが、キリスト教民主同盟の牙城であった原発王国バーデン・ヴュテンベルク州の不正が明るみ出ると、瞬く間に原発の“クリーン、安全、安い”の嘘が剥がれて行った。

それが折しも、2011年の福島原発事故直後の州選挙で、緑の党クレッチャマン首相政権を誕生させ、今日の緑の党の勢いを創り出している。

何故なら、クレッチャマン政権は緑の党の理想原理にこだわることなく、3期に渡って市民ための政治を現実に沿って実践し、市民を裏切ることがなかったからである。

緑の党についてはブログ112,113、114参照)

すなわちドイツ国民のそのような信頼醸成が、産業側に組する保守政党労働組合に組する政党よりも、すべての市民がロビーイストでもある緑の党に首相誕生の期待を生み出していると言えるだろう。

そして産業成長や労働組合に関与しない市民政党の首相が生まれるとすれば、これまでの絶えざる成長政治では地球温暖化が激化する未来を乗切れないと、市民が判断した証しであり、世界の国々にそのような市民政権が誕生すれば、間違いなく世界は変わるだろう。

 

 

 

(418)ドイツ最新ニュースに学ぶ(11)・ワクチン接種ルーレット(6最終回)

連邦政府の権限強化 (ZDFheute4月8日)

結局月曜日の首相会議は、州首相の多くが権限奪うものだという考えであることから、中止された。

しかし連邦政府のコロナ感染への統一的対処は強く、各州は発生率(住民10万人あたりの7日間の発症者数)が100を超えたら夜間外出禁止、店舗閉鎖のロックダウンを採るという具合に、全州一律の規制を適用することで合意した。

メルケル首相が、昨年秋のコロナ感染第二波を許した反省から、コロナでの連邦政府の権限を強化し、コロナパンデミックを終息したい思いは理解できる。

実際これまでの感染防止法では各州の事情に配慮して、一律の規制を強いることはできず、連邦政府の4月18日までのロックダウン規制にもかかわらず、ザールラント州は8日から解除している。

確かに連邦共和国で各州の事情を配慮し過ぎれば、各州が独自の権限を持つことになり、連邦政府政権と真逆の右派、もしくは左派州政権では、連邦政府と対立すれば究極的にスペインで見るように独立運動になりかねないからだろう(私自身は、地域が分散的に自立し、自治権を持つのは賛成であるが)。

しかしコロナ感染では、各州の感染状況も異なり、各州の事情に配慮せず、権限の強化で連邦政府が介入するのは、ヨーロッパが採る補完性原理にも違反する(もっとも、今回のドイツの連邦権限の強化は、あくまでも統一した一律規制を求めるもので、州に配慮した介入とも言えるだろうが)。

補完性原理とは、もっとも身近なところが優先して対処するという原理で、家族で対処できない場合はコミュニティが、コミュニティが対処できない場合は自治体が、自治体が対処できない場合は州が、州で対応できない場合は連邦が、連邦で対応できない場合はEUが対応するという原理である。

私が思うには、コロナ禍で国(連邦)の権限強化はもっての他で、むしろコロナ禍を踏み台として、これからの未来に降りかかる禍に対応するためにも、地域対応優先の補完性原理を推し進めるべきである。

 

ハンガリーでのコロナ脅威(ZDFheute3月31日)

(何故独裁もどきの東欧が今コロナ非常事態なのか?)

ドイツがコロナ発症率(住民10万人あたりの7日間の発症者数)が100を超えて来たことから(4月12日発症数が140,9)、連邦のコロナ防止法改変で権限強化を打出すほど深刻な対応から見れば、現在の東欧の発症率は余りにも高すぎる(4月12日ハンガリー353.9、チェコ共和国264.2、ポーランド359.6、ルーマニア165.3)。

2月末に世界最高の発症率と紹介したチェコ共和国では、3月6日には発症率805.1を記録し、3月31日には449.4に下がり、さらに264.2まで下がって来ていることから峠を越えたようにも見える。

しかしチェコ共和国では、昨年秋に始まった第2波は10月27日に806の頂点に達し、その後12月始めには200台前半まで下がると、再び上がり出し、1月11日には846.8の頂点を打つという具合にアップダウンを繰り返している。

このアップダウンは、ハンガリーポーランドルーマニアでも同じであり、これらの東欧諸国では、1989年ソ連全体主義に支配されて来た市民が民主革命を成功させ、その後新自由主義の競争原理浸食によって困窮し、再び公平性を求め、国家社会主義的独裁者とドイツなどでは批判される首相を選んだ国々である。

これらの首相たちは、新自由主義での経済的成功者であり、EUの補助金では自らの企業着服嫌疑さえかけられている。

何故これらの国でロックダウンにもかかわらず、コロナ猛威が繰り返されているかについては、チェコ共和国の際に述べたように様々な憶測がなされている。

前回はARD傘下のバイエルン公共放送が述べる、危機の時代に生き延びる戦略として培われた伝統的な逆らう気質に説得力を感じたが、それだけでもないようだ。

現在も世界で最もコロナ猛威が激しいのはアメリカとブラジルで、アメリカはトランプ、ブラジルはボルソナーロの経済優先の失政と言えるだろう。

両者とも独裁的権力でコロナ第1波では即座にロックダウンをするが、自らの事業も経済的打撃が大きいことから、第2波ではロックダウンを先送りし、経済を優先して来た構図が見られる。

時期を失い一旦拡がってしまうと、後に戻らないし、その後で市民の暮らしをロックダウンしても、製造企業の操業は止めず、コロナ禍でも絶えず経済優先の構図である。

そのような構図が、まさに東欧諸国でも見られる。

 

ARD『ワクチン接種コロナルーレット6』最終回

 

企業側はワクチン開発は他社との競争ではなく、競争すべき敵はコロナウイルスであると言う。

しかし誰の目にも明らかなように、ワクチン開発は利益追求の最前線であり、市場(株式相場)を陶酔状態にさせるカジノルーレットでもある。

今回の冒頭で現在の世界は理想社会ではないと言っているが、理想社会とはどのような社会であろうか?

私が思うには、カジノルーレットが回らない社会であり、カール・ポランニーが『大転換・市場社会の形成と崩壊』で述べているように、市場という「悪魔のひき臼」がすべてを粉々に砕き、粉々になるまで退路のない社会ではなく、「互酬性」と「再配分」を基調とする新たな経済社会であろう。

それなくしては、社会正義や気候正義の実現は不可能であり、人類は滅亡するしかないだろう。

尚ドイツ第一放送(ARD)のこの作品は、私自身が50年近くも前、製薬会社の化学研究室で抗免疫剤開発をしていたこともあって、興味深いものであった。

当時は疾患部細胞を鍵穴と見なし、有効物質に化学合成で鍵を付けることで増強するというやり方で、殆ど体の免疫作用機序も知らずに取組んでいたが、サリドマイドやキノホルム(スモン病)など多くの薬害が問われる時代でもあった。

今回のワクチン開発では、コロナウイルス突起部の人工合成の遺伝子情報(mRNA)ワクチンであったり、またコロナ感染で苦しむ患者には患者体内に生ずる抗体をCHO細胞培養で大量生産するという薬剤開発にも、驚くものを感じた。

しかもこの作品は、そうした現場をドキュメンタリーで描くだけでなく、現在進行形のコロナ禍で様々な問題を投げかけており、必見の価値はあるだろう。

 

*前々回述べたように『ワクチン接種ルーレット』終了しましたので、「ドイツ最新ニュースに学ぶ」に絞り、隔週で継続します。もっとも今回のように友人が脳梗塞で運ばれるというように、一寸先は何があるかわかりませんが。

(417)ドイツ最新ニュースに学ぶ(10)・ワクチン接種ルーレット(5)

勇気あるメルケルの撤回と謝罪(ZDFheute24日)

 

ZDFの解説によれば、3月23日に行われた連邦及び州首脳会談で第二波のようなコロナパンデミックを避けるために、ロックダウン規制をより強化し、国民にとって重要な4月1日から4月5日までのイスター(復活祭)を、4月1日4月と3日を休日とする決定であった。

すなわち賑わいが予想されるイスター5日間を、店舗などを閉じる厳しい規制休日として、コロナ第3波の防波堤とするものだった。

この決定に対して、連邦議会、経済界、市民からの批判が高まるだけでなく、既に準備が始まっているイスターを取止めることで、店や企業への保証など様々な問題が浮上した。

そのためメルケル首相は、差し迫った時間では対処できないと判断し、翌日の議会で進退をかけて謝罪したのであった。

議会では、野党のFDP(自由民主党)やリンケ(左翼党)はメルケル首相の信任投票を求めたが、緑の党女性代表カトリン・ゲーリング・エッカルトは、「誤りを認めることは尊敬に値するEinen Fehler einzuräumen, verdient Respekt」と述べ、信任投票をすることは、決議さえされなかった。

経済界はこのメルケルの謝罪決断を大いに評価し、自動車産業会長ヒルデガード・ミュラー女史は、「誤りを認めることは、(メルケル首相)の偉大さの徴だと思うIch finde es ein Zeichen von Größe, wenn man Fehler eingesteht」と述べていた。

また各州首脳も、会議で皆で決めことでもあるのに首相が進退をかけて謝罪したことを評価し、バーデン・ヴュルテンベルク州のウィンフリード・クレッチマン首相(緑の党)は、「このイニシアチブに対して、再び首相に大きな敬意を払いたいnoch mal meinen großen Respekt für diese Initiative zollen」と述べている。

このようにメルケル首相の進退をかけた謝罪は、非難した側からも大いに評価され、新たな連帯感さえ生み出している。

それこそが戦後ドイツが採って来た、「過去に目を閉ざすもの・・・」が語るように、・過去を真摯に反省し、未来を創る姿勢である。

(それに較べ日本は過去の“誤り”を自虐史観と戒め、森友問題に見られるように、至る所で漏れ出して来る“誤り”を、改ざんしてまで無謬神話を貫こうとしている)

もっともメルケルが誤りと許しを請うたものは、イスター規制自体の誤りというより、国民の待ち望んでいたものを奪うには、余りにもコンセンサスがなかったことへの誤りである。

それ故イスターに対しては、市民自らの自粛を懇願している。

また28日のARDでのインタビューでは(下のアドレス参照)、コロナパンデミック第3波を克服する決意と責任が感じられた。

具体的には、今回のコロナ変異種はより攻撃的で、より感染速度がより速く、より致死率高く、「基本的に新たなパンデミックの始まりである "Wir haben im Grunde eine neue Pandemie."」と警告し、状況の深刻さ気づいていない人、さらには州知事に、イスター後も発生率を100以内に抑えることができないなら、ロックダウンを州に任せるのではなく、連邦介入で一体となってさらに厳しい措置を取ることも示唆していた。

https://www.tagesschau.de/inland/innenpolitik/merkel-annewill-corona-101.html

 

EUの天安門事件以来の制裁(ZDFheute22日)

 

中国の少数民族への迫害、香港への力による弾圧、さらにはこの報道でも描かれているミャンマー軍事独裁の市民攻撃は益々エスカレートしている。

現在のミャンマーでの市民、さらには子供への攻撃を見ると、天安門広場民主化を求めた市民を、皆殺しに射殺した映像光景がオーバーラップする。

そこでは、市民に銃を向ける兵士に、ヒューマニズムを期待しても無駄である。

何故なら、戦後ドイツのフランクフルト学派を生み出したホルクハイマーやアドルノが、『啓蒙の弁証法』で厳しく批判しているように、理性による進歩(啓蒙)が自然や人間を支配するための道具と化してしまったからである。
すなわちカントの「正義はなされよ、たとえ(邪悪な連中の)世界は滅ぶとしても」が、ナチズムの「正義はなされよ、ホロコーストがなされるとしても」、そしてナチズムに抗する連合国側の「正義はなされよ、原爆投下がなされるとしても」に容易に転化するからである。

それ故ドイツではそれを許さないため、戦う民主主義と言われる倫理的民主主義が一貫して追求されて来たと言えよう。

しかしそれを中国やミャンマーに求めても無駄であり、たとえその他の世界が一丸となって非難、制裁を実施しても、ここでの本質的解決は難しいように思える。

ここでは、緑の党のブティコファーの言うように「制裁は政治的象徴以上のものであり、EUが貿易や投資利益のため、人権を無視していないことを示す」ことで、これ以上迫害や市民の虐殺が起きないよう妥協点を見出すしかないように思える。

本質的な解決は、現在のコロナ危機で求められ始めた社会正義、そして地球温暖化危機で世界が連帯して求めている気候正義のなかでしかないように思われる。

 

ワクチン接種ルーレット(5)

 

コロナパンデミックは、感染者が1億人を遥かに超え、300万人近い命を奪い、より攻撃的で、感染速度がより速く、より致死率が高い変異種に進化して、益々猛威を強めている。

特にその猛威が激しいのは、ブラジル、インド、アフリカなどであり、それらの国々の人々をワクチン接種で救済することなしには、コロナ危機は何度でも感染爆発を繰り返し、終息しないと言っても過言でない。

それ故このフィルムで描かれているように、WHOは公正で、公平なワクチン接種を目標としたCOVAXを立ち上げ、2021年末までに20憶人分のワクチンを購入し、貧困国75%の人々がワクチン接種できるようすると宣言している。

しかしカジノ資本主義のルーレットが回る中で、停滞を余儀なくされているのも現実である。

何故なら、例えばEUではCOVAXに10憶ユーロを提供しているが、製造されたワクチンはEU域内優先で、輸出されるワクチンも殆どが先進裕福国という現状があるからである。

それがこのフィルムで描かれているアマゾン先住民の村には、全くワクチン接種の目途が立たない理由であり、益々世界のコロナ感染猛威を激しくさせている。

そうしたなかで一筋の希望は、ドイツのメルケル首相やシュタインマイヤー大統領が、公正で、公平なワクチン接種という社会正義を、世界に強く訴え始めたことである。

具体的にはメルケル首相は、今年1月開催された世界経済フォーラのオンライン会議で、世界経済フォーラムのCOVAXとの締結を歓迎し、「もちろん、配布が迅速に始まるように、できる限りのことを行います」と述べ、さらに「世界で誰が何時、どのワクチンを受け取るかという問題が、国際連帯と新たな記念を創り出すでしょう」と付け加えている(下の資料参照)。

https://www.dw.com/de/merkel-verlangt-globale-bereitstellung-von-corona-impfstoff/a-56349904

またドイツ連邦大統領シュタインマイヤーは、COVAXの試みが成功できるかどうかは人類の問題であり、国際連帯のリトマス試験であると、世界に訴えている。

https://www.tagesschau.de/ausland/corona-impfstoff-steinmeier-who-101.html

(416)ドイツ最新ニュースに学ぶ(9)・ワクチン接種ルーレット(4)・今コロナ禍で問われているもの(3)

ドイツ最新ニュースに学ぶ

 

ドイツの段階的ロックダウン解除が3月7日から始まったが、チェコ共和国など東欧でコロナパンデミック猛威が止まらず変異種が押し寄せて来ていることや、イタリヤやフランスの第3波開始などで、感染が再び増え始め、少なくとも中旬前半までは発生率(10万人あたりの7日間の平均症例数)が60台であったが、中旬から再び急速に感染が拡がり、3月21日には発生率が100を超えたことから、4月18日までロックダウンが再度為されることが、今日23日の発表で決まった。

それについては次回で取り上げることにして、最新ニュースは、「コール以降の最大の汚職」と「メルケル時代の終わりを告げる州選挙結果」に絞った。

コール以降最大の汚職(ZDFheute3月12日)

キリスト教民主同盟CDU連邦議員3人が、ドイツ統合の立役者コール首相以降、最もスキャンダラスな政治汚職関与が判明し、すぐさま連邦議会から追放された。

それを受けて与党CDUとCSU議員連盟は、残った243名議員全員の汚職に関与していない宣言署名を提出し、政治家への寄付禁止や、政治家報酬以外の副収入を10万ユーロ以上から報告義務を課する10法案を作成した。

これに対して連立政権を組む社会民主党SPDは、副収入は1セントからでなくてはならないと明言しており、現在の状況からそうなる公算が高い。

日本では政治家の副収入は当たり前であるが、ドイツの政治家は8割が副収入を持っておらず、国民も政治家汚職に対して驚くほど厳しい。

しかし政治家の2割は企業などから、顧問などの名目で多額の収入を得ており、以前から透明性が、連邦議員監視協会などから強く求められていた。

2018年に連邦議員監視協会とシュピーゲル誌の合同調査報告では(下の資料参照)、連邦議員709人のうち555人が副収入なしで、154人が少なくとも年間550万ユーロの副収入があり、副収入のある連邦議員の割合は、CDU、CSU連盟が25,6%、SPD15,0%、AfD18,5%、FDP43.8%、リンケ14.5%、緑の党7.5%であり、しかも透明性に欠けることが指摘されていた。

Das sind die Nebeneinkünfte der Bundestagsabgeordneten | abgeordnetenwatch.de

ドイツの連邦議会議員は年間議員報酬は約12万ユーロで、そこから課税及び社会保障費などで少なくとも6割近くが徴取されることから、民間企業従事者に較べ決して高くない。

しかもその8割が副業なしで政治家だけに専念しており、まさにドイツの政治家も、ドイツの官僚同様に国民奉仕精神なくては務まらない職業である。

メルケル時代の終わりを告げる州選挙結果

(ZDFheute3月15日)

今回の州選挙結果は単にメルケル時代の終わりを告げるだけでなく、グリーンな時代の到来を示唆するものである。

何故ならメルケルが政党から出て首相職に専念するようになった理由は、左派(メルケル支持派)と右派の最早溝の埋まらない党内抗争からであり、今回の汚職はそれを受けた党規の緩みからであり、メルケルなき後のキリスト教民主同盟CDU(キリスト教社会同盟CSUも含め)の今年9月の連邦議会選挙では、支持率がさらに落ち込むことが予想される。

実際直近の世論調査では、Kanter(3月20日)の国民支持率は、CDU/CSU27%、緑の党22%、SPD17%であり、またINSA(3月20日)でも、CDU/CSU28%、緑の党20%、SPD18%となっており(2つの世論調査機関では今年2月初めまでCDU/CSU支持率は35%ほどを維持していた)、緑の党が率いる連立政権誕生の公算は極めて高い。

まさにそれは、2011年3月の選挙でそれまでCDU支配の牙城であったバーデン・ヴュテンベルク州が、緑の党クレッチャマン政権の誕生を彷彿させるものであり、連邦での緑の党首相の実現を想起するものであるn。

クレッチャマンが嘗て保守王国であったバーデン・ヴュテンベルク州で、再選されるたびに支持を拡大させて来たのは、市民奉仕に徹し、緑の党の理想目標「エコロジー、社会的連帯、底辺民主主義、非暴力」を、原理主義者と異なって現実に即し、徐々に実現してきたからに他ならない。

既にブログ112から114の3回に渡って、「緑の党の連邦首相誕生は可能か」の題目で、(クレッチャマンが初当選の際、州の中枢4部局幹部を市民派官僚に総入れ替し、これまで巨大電力などへの産業奉仕を市民奉仕に大転換し、圧倒的に市民に支持されているように、)緑の党が現実に即し地道に市民奉仕を継続して行けば、連邦首相も可能であると書いたが、それがようやく実現する時でもある。

ワクチン接種ルーレット(4)

フイルムは、ワクチン開発で臨床試験被験者として接種されているが、国民の多くがワクチン接種の期待さえ持てない新興国ブラジルから始まる。

新興国ゆえに経済が優先され、結果として感染者は1200万人にも上り、感染の猛威はますます拡大し、3月19日の新たな感染者は9万5000人である。

一方で世界一の大国アメリカは、既に国民全体のワクチンが確保され、接種が数か月で完了にまで漕ぎつけている。

そうした不公平が、人類が感染症の脅威に晒されている時容認されてもよいのかというのが、社会正義の問いかけである。

それはこのフィルムでも、メルケル首相を始めとして多くの著名な政治家の「ワクチンはグローバルな公共のもので、誰もが接種しなくてはならない」という主張を、保健衛生学者を通して語らせている。

ドイツではそのような社会正義を求める活動は、日本では考えられないほど積極的であり、フランクフルトに本部のあるメディコインターナショナル(人権団体)は、連邦政府の財政支援を受けて、世界の紛争危機、環境危機、感染症危機などに対して、WHO 及び世界の30カ国以上の人権団体と連帯して活動している。

今回のコロナ危機では、公共機関の医学基礎研究が巨大製薬企業の利益追求に集中して利用される不公正を訴え、必須医薬品の特許を制限し、世界の誰もが公平に接種できるよう、世界と連帯して訴えている(下の資料参照)。

medico international - Gesundheit, Soziales, Menschenrechte

実際このような社会正義は単に人道的であるだけでなく、最早それを容認して行けば人類存続にかかわる問題にまで達しているように思える。

何故なら現在のブラジル変異種は、ファイザー・ビオテックのワクチンの有効性を低下するとアメリカで言われ始めており、途上国や新興国のコロナ感染を放置するなら、或はコロナ終息後の新たな感染症を放置するなら、人類存続は難しいところまで達してしまっているからである。

それは気候正義も同じであり、寧ろその危機にこそ世界を連帯させ、危機を乗り越えるだけでなく、希望ある未来を創り出す道があると言えよう。

話をフイルムに戻せば、後半はコロナ感染者を如何に医療的に救うかであり、カテリーナのようにコロナ感染で重症化した患者を救う薬剤開発がテーマである。

ワクチン開発とは異なり、感染者の多くに生ずる抗体を抽出し、スパイク阻止部分の遺伝子配列を特定することで、人工的に中和抗体を合成する開発である。

ドイツ感染症センター(DZIF)に属するブラウンシュヴァイク研究所では、膨大な試行錯誤を経て、その中和抗体を試験室で合成することに成功した。

しかし公的機関が臨床試験を経て製品化するには、更に膨大な費用がかかり、現在の仕組の中では公的に製薬化することは難しい現状が語られている。

それ故その後を受けて、ブラウンシュヴァイクにある民間製薬企業コラトセラビュティク社が開発し、コロナ感染で苦しんでいたカテリーナに臨床試験として投与され、一命を取りとめたことが伺える。

具体的に詳しい説明はないが、中和抗体投与で1週間で退院し、人工呼吸器も付けずに家庭で治療し(その中和抗体は、モルモットの肺で99%コロナウイルスを減少できると証言されている)、今年夏のハンブルクでのトライアスロン競技に再び出る決意を誓うまでに快復している。

今コロナ禍で問われているもの(3)

上の「コール以降の最大の汚職」書いたように、日本では口利きでの汚職は日常茶飯事の如く繰り替えされ、本質的な問題は官僚支配構造にあるため、止まらないように思える。

それに較べドイツでは、官僚奉仕、政治家奉仕の仕組があらゆるところで構築されているので、汚職が皆無になることはないとしても、政治に、そして国の未来に期待できる。

現在日本で問題になっている政治家や官僚の会食は、国民の目線で見れば、誰が見ても便宜を図るものであり、コロナ禍で今問われている6兆円近い除染マネーも、「誰のためだったのだ」と怒鳴りたくなるほど、国民を馬鹿にしたものである。

その結果、国民が10%の消費税値上げに必死に耐えているにもかかわらず、国の負債は益々肥大し続けており、国民の税収を遥かに超える額を短期国債で賄い、このような酷い自転車操業ギリシャでさえなかった。

確かにコロナ禍では、お金に糸目をを付けず困窮している人たちを助けるべきである。

しかしコロナ禍で見えて来たものは、本質的に困窮する人たちを救うというより、除染マネーが物語るように、行政を仲介する業者、企業へのばら撒きである。

そのように日本が希望なき未来へと歩んでいくなかで、私のような昨日の出来事さえ多々思い出せない老い耄れが、悔いなく生きることは、今を生き抜くことであり、ドイツから学ぶ提言を書き残していくことだと思っている。

それはブログとは異なる形で、これまでブログで書いたことを総括するのではなく、新たに私自身がドイツから日々学ぶことを通して、書き残しておきたい。

それ故ブログは、『ワクチン接種ルーレット』が6回(後2回)で終了後は、「ドイツ最新ニュースに学ぶ」に絞り、隔週で継続に留めたい思っている。