(197)地域分散型自給社会が創る理想世界への道14・・『第三次産業革命』(6、生けるものすべての権利が認められる日)


世界最大規模のベルリン・ティアハイム(動物の家)にてボランティアで鳥の世話をする看護婦Cさんは、「まだまだ実際は動物の権利は認められていない」と話してくれたが、日本とは比べようもない。

すべての生物を含めたグローバルな拡大家族への希求

リフキンは著書『第三次産業革命』の最終章の章末を、「歴史上のあらゆる文明は、新たな未来に出会うかそれとも滅亡の可能性に直面するかの重大な分かれ目となる判断を迫られる、決定的瞬間を経験している。・・・。私たちが人類のみならず地球上で進化の道程を歩むすべての生物を含めたグローバルな拡大家族として物事を考えだしたときにはじめて、私たちは将来の世代のために共通の生物圏コミュニティーを守り、地球を再生させることができるのだ。」と結んでいる。
現在の危機に瀕した世界に、「すべての生物を含めたグローバルな拡大家族」として対処を求めるリフキンの言葉には、私自身も共感せずにはいられない。
私の視点からすれば、現在の世界危機、さらには人類絶滅の危機は、富への飽くなき欲望が人間以外の生き物を犠牲にするだけでなく、他国の人々、そして自国の大部分の人々さえ犠牲にしてきた結果である。
すなわち自国利益のために開発を最優先し、途上国の人々だけでなく先進国の大部分の人々をボトム競争に駆り立てる現在の新自由主義にこそ、手立てを失って進行する気候変動や、迫りくる核戦争の原因であるからだ。
それは化石燃料が築いた文明が終局を迎え、旧体制が競争支配を強化することで、必死に生き残ろうとしているからでもある。
現在ウクライナ北朝鮮などで戦争が勃発しようとしており、日本国内では従来の武器3原則や集団的自衛権の見直しで、再び軍事国家へ踏み出そうとしていることにも見られる。
それを避けるためには、世界の市民がエネルギー転換によってソーラ燃料の築く文明を緊急に選択しなくてはならない。

生けるものすべての権利が認められる日

脱原発宣言でエネルギー転換が進むドイツでは、2002年に基本法の改正で「動物の権利」が連邦議会の圧倒的多数で認められ、ペットの犬や猫だけでなく、飼育動物に対しても飼育環境の快適さ、長時間輸送の禁止など厳しい規定が設けられている。
もちろん日本では当たり前のように行われている犬猫の殺処分はなく、犬猫がペットショップで売られることもない。
犬猫をペットとして手に入れるためには、ドイツの何処の都市にもあるティアハイム(動物の家)、もしくは繁殖家から直接手にいれるしかない。
こうした動物の権利を認めるドイツの取り組みは、戦後の“万民の幸せ”を求める社会的市場主義から湧き上がった“競争より連帯を優先する教育”に起因しており、70年代の環境保護自然保護運動の拡がりを経て、勝ち取られたと言えよう。
裏返せば、生けるものすべてを尊重することが求められていることから、競争原理を最優先する新自由主義に流されることなく、エネルギー転換に突き進むことができたと言えよう。
それは、エネルギー転換で再生可能エネルギーが地域に溢れだす世界において、生けるものすべての権利が認められる日の到来を予期している。

*下にドイツとの違いを具体的に理解してもらうために、私がドイツ滞在中しばしば気分回復のために訪れた、世界最大規模のベルリン市郊外のティアハイム(動物の家)を紹介しておきます。

動物の天国というべき世界最大規模のベルリン・ティアハイム(写真ベルリン動物保護協会より)。ベルリン中心部から都電と市バス乗り換えで50分くらいの広大な緑地にあり、年間保護された12000にも上る犬猫やウサギ、ラットなどの小動物を、新しい飼い主(里親)に仲介している。犬猫の通常仲介料金は避妊手術、予防接種込みで犬が250ユーロ、猫が60ユーロから100ユーロである。もちろん動物の家では病気治療やしつけなどに加えて、動物ケーアの講習から動物飼育用品の販売まで多岐に渡っている。また野良犬や野良猫を増やさない目標を掲げ、ベルリン市内の野良犬や野良猫の避妊手術を無料で実践している。この施設は120人ほどの専属スタッフ(獣医15人)と数百人のボランティアスタッフの非営利民間動物保護団体によって運営されており、年間800万ユーロかかるとしているが、ベルリン市は60万ユーロしか支援していない。すなわち運営費の大部分は、1万5000人の会員会費と年間1万件ほどの寄付で成立っている。












上の写真で見るようにここに引き取られた犬猫は素晴らしい個室に住み、そこで新たな飼い主(里親)となるかもしれない人たちと面会する。犬の個室部屋は外のフェンスで仕切られた専用の芝生に出れるようになっている。そのうえボランティアのスタッフが毎日散歩に連れていってくれるといった至れり尽くせりの待遇である。そのような愛情で飼われる犬や猫は、面会で進んで近寄ってきて、私の里親になってくれませんかと話しかけてくるように、吠えたり鳴くのであった。ここのすべての犬や猫は避妊手術が徹底され、それが野良犬や野良猫の減少に寄与している。それに比べまるでホロコースト扱いの日本の保健所では、毎年何十万の犬猫が殺処分されているが、野良犬や野良猫の減少に寄与していない。まるで流行商品のように生き物が売り買いされ、避妊手術も法外に高い。それに加担する行政は、非営利民間動物保護団体によって動物の家が創設できるように支援するプランさえない。日本は市民の税金ではなく、市民の寄付やボランティアで運営できる動物の家をドイツに学ばなくてはならない(写真は2010年撮影)。


施設に隣接する動物の墓は、ベルリン市民のペットの墓としても利用され、ここで黙祷すると何故か心が癒された。土葬の場合3年間の個別の墓管理料は40×50cmスペース(子猫、小動物)で150ユーロ、60×65cmスペース(猫、子犬)で180ユーロ、90×75cmスペースあるいは115×60cmスペース(中犬)210ユーロ、100×115cmスペース(大犬)250ユーロとなり、その後の延長は同料金で2年間ごとに70ユーロとなっている。土葬共同墓の場合は永代で小動物80ユーロ、猫、子犬150ユーロ、大中の犬200ユーロである。個別火葬の場合は動物の家から火葬場への輸送料を含め、小動物115ユーロ、10キロまでの犬猫195ユーロ、10キロ以上の犬猫225ユーロとなっている(写真は2009年撮影)。