(198)地域分散型自給社会が創る理想世界への道15・・『第三次産業革命』(7、絶滅危機さえ無視する世界)


5月初旬ブラジルの極度に乾燥する耕地(写真は南ドイツ新聞2010年5月17日「致命的な気候変動」記事より)

人類絶滅の危機

リフキンは現在の地球環境の悪化を国連の気候変動に関する報告書から、今世紀末までに少なくとも摂氏3度を覚悟しなければならないと説き、洪水の頻発、長期化する干ばつ、生態系の劇的変化で、人類は半世紀前には全く見られなかった絶滅の危機に直面していると訴えている。
しかし人類は打開策に合意できず、「私たちは現実から目を背けて行動している。化石燃料に依存した工業化時代が終わりに近づき、地球が今や世界の安定を揺るがしかねない気候変動に直面しているという証拠が山積していても、人類はおおむね現実を認めることを拒む。代わりに、私たちが本当にゲームの終局にいるのならどうすべきかという考えたくない問題から逃れようとして、依存を続けられるように先細りの石油や天然ガスの供給源が確保されることに望みを託し続ける(54ページ)」と述べている。
それ故に、緊急にエネルギー転換で『第三次産業革命』の選択を世界に著書で訴え続けている。

危機警告など無視して突き進む恐ろしい世界

気候変動進行速度は益々増大しており、今年環境省による国立環境研究所の研究班(代表=三村信男・茨城大教授)が2014年3月17日に公表した報告書では、これまでの予想を遥かに超え今世紀末までに日本は3,5度から6,4度の気温上昇し、洪水被害だけでも年間6800億円を見積り、生態系、食糧、健康への恐るべき国内影響を予測している(注1)。
また4月8日のドイツのシュピーゲル誌の「海洋の危険な変動」記事では、空気中のCO2濃度の増加は海洋を酸性化させ(これまでは広大なな海洋がCO2を緩衝するとさえ言われていた)、カキなどの貝類や甲殻類、そして珊瑚などを絶滅させ、食物連鎖によって海洋生物全体の生活基盤が失われると警告している(注2)。
さらに先週ベルリンで開催されていた国連の政府間パネル(IPCC)は、最終日の4月13日の新しい報告書で、「石油、ガス、そして石炭からの離脱だけが救う。そうしなければ私たち人類は先に進むことができないだろう。それこそが新しい国連報告の第三作業部会の核心メッセージであり、温室ガスの世界的排出を今世紀中頃までに現在の40%から70%削減(今世紀末までに100%削減)しなければならない」と強調している(注3)。
そのような厳しい警告が出されたのは、世界は1992年リオの気候変動会議から京都議定書を経て、絶えず緊急克服課題としてCO2の排出量削減に取り組んできた。
しかしベルリンでの新しい報告書が問い質すように、この最近10年においてさえも世界のCO2排出量は毎年平均2,2パーセントも益々増え続けている。
それは、世界が気候変動の危機を認識しながらも、競争原理による国益を最優先して、危機警告を無視してきたと言っても過言でない。
特に日本は1997年京都会議(COP3)の京都議定書で、2012年までに1990年比で6%CO2排出量を削減公約にも拘らず、逆に10%近く増加させている。
その間政府は国民には環境税導入議論などを通してCO2排出量削減を求めてきたが(結果として国民にとって不本意なガソリン環境税が実施された)、産業に対してはあくまでも自主規制を貫き、旧産業構造の国益を優先させてきた。
その反動もあり、原発と旧産業構造にイノセントな鳩山政権は2020年までに1990年比で25%削減を、環境政策の柱として世界に明言した。
しかし安倍政権が誕生すると直ちに25%削減政策を撤回し、逆に1990年比で3%増加を新しい目標とした。
この新しい目標こそは、まさに京都議定書の約束を完全に反故にするだけでなく、最早CO2削減努力からの撤退を意味している。
何故なら、現在の10%近い増加(2011年CO2排出量12億4100万トン/1990年CO2排出量11億4100万トン)を3%増加に抑えるという目標は、あくまでも世界に向けた努力目標であるからだ。
しかしこのような実質的撤退は日本だけではなく、新自由主義を掲げる米国から中国まで同じであり、人類絶滅の危機さえ原発ルネッサンスやCCS(CO2を捕え蓄える)技術の売物にしており、最早人類は欲望の肥大に麻痺している。

こうした現状を認識するリフキンは、『第三次産業革命』では具体的な転換には触れず(論理的に展開すれば私の考えるようにラジカルな転換になることから)、輝かしい未来の抽象的パラダイムシフトに絞り、述べているように思われる。

ドイツはエネルギー転換で世界を救済できるか

既に非公式には言われていたことであるが、今年2014年3月10日ドイツ連邦環境省は2012年の温室ガス排出量が前年より1100万トン増加し、1990年比の削減量も前年の25,6%から24、7%に悪化したことを公表した(注4)。
この悪化原因は、2011年の脱原発宣言で巨大電力企業の要請する褐炭火力発電所の容認などによっている。
もっともこの報道でも、連邦環境省は2020年までに1990年の12億5100万トンの排出量を40%削減の7億5000万トンに削減し、2050年までに少なくとも2億5000万トン(最大6250万トン)に削減、すなわち少なくとも80%削減(最大95%削減)することを図を載せて提示している(下図)。
現在のドイツのエネルギー転換速度の加速から、そして何よりも、ドイツ国民が電力の高騰にも拘らず大部分がエネルギー転換を支持していることから、ドイツの2050年エネルギー転換達成は確信できる。
しかし新自由主義という競争原理最優先の欲望世界が、人類絶滅の気候変動を推し進めるだけでなく、日本が憲法解釈による集団的自衛権平和憲法を葬ろうとしているように、その時まで核戦争の引金を引かない保証はない。

(注1)「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」2014年報告書(添付資料3番目PDFに詳しく報告されている)
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2014/20140317/20140317.html

(注2)http://www.spiegel.de/wissenschaft/natur/ipcc-klimawandel-und-ozeane-ph-wert-im-meer-steigt-durch-co2-a-956022.html

Die gefährliche Wandlung der Ozeane海洋の危険な変動
Von Axel Bojanowski
Eine unsichtbare Veränderung hat die Meere befallen: Das Treibhausgas CO2 lässt das Wasser saurer werden, Kalkschalen lösen sich auf. Forscher sprechen von einem der größten Umweltprobleme der Welt.
海は目に見えない変化に襲われている。温室ガスCO2は水を酸性化させている。研究者は世界の最大の環境問題について述べている。
Hamburg - Das Problem ist gewöhnlich unsichtbar. Doch im Herbst 2011 blieben an der Westküste der USA die Netze der Austernfischer plötzlich leer. Was war geschehen? Der pH-Wert, ein Maß für den Säuregehalt, lag erheblich niedriger als sonst, das Meerwasser war saurer geworden. Tiefenwasser war an die Küste geströmt. Das haben die Austern nicht vertragen.
ハンブルグ発。問題は通常目に見えないことである。しかしながら2011年の秋アメリカ西海岸でカキ採集者の網が突然空になった。何が起きたか?酸性基準のPH値が以前より著しく酸性になった。深部の水が海岸に流れ出しており、それがカキを殺した。
Der Vorfall war nur ein Vorgeschmack auf das, was noch kommt, warnt der Uno-Klimarat in seinem neuen Sachstandsbericht. Weltweit werden die Ozeane saurer.
その出来事は、既に起きていることの前触れに過ぎず、国連気候委員会は物的基準報告において、海洋が世界的に酸性化に進んでいることを警告した。
Ursache ist das Treibhausgas Kohlendioxid CO2, das aus Autos, Fabriken, Heizungen und Kraftwerken in die Luft gelangt. Gut zwanzig Millionen Tonnen CO2 pro Tag nehmen die Ozeane auf.
原因は自動車、工場、暖房、発電所が空中に放出する温室ガスCO2である。毎日2000万トンのCO2が増加している。
Im Wasser wandelt sich das Gas zu Säure. Manchen Meerestieren wie Korallen oder Austern und anderen Krustentieren fällt es in saurerem Wasser schwerer, ihre Schalen aufzubauen. Andere Organismen aber scheinen regelrecht aufzublühen. Was geht vor?
ガスは水中で酸に変化する。サンゴ、カキ、そして甲殻類ような海の生物は、殻を酸性水の中ではつくることが難しくなる。他の生物は通常通り栄えているように見える。何がこれから生じるのか?
Die Warnungen des Uno-Klimarat klingen dramatisch:国連気候委員会の警告は劇的に鳴り響く。
Seit Beginn der Industrialisierung seien die Ozeane deutlich saurer geworden.
Die Versauerung schreite vermutlich so schnell voran wie seit Millionen Jahren nicht. (Diese Einschätzung ist allerdings umstritten).
産業化の始まり以来海洋は明らかに酸性化が始まった。酸性化はおそらく数百万年以来なかったように非常に速く進行した(その評価は一般的に異論がある)。
Besonders das Wachstum von Korallen könnte in einigen Jahrzehnten erheblich gehemmt werden.
Besonders gefährdet sind Krustentiere in Polarregionen; in kühlem Wasser löst sich mehr CO2.
Indirekte Auswirkungen auf den Lebensraum Ozean könnten gravierend sein: Kleinstlebewesen mit ihren Kalkskeletten bilden eine Basis der Nahrungskette. Mit ihrem Verschwinden ginge die Lebensgrundlage vieler größerer Meeresbewohner verloren.
特にサンゴの成長はこの数十年で著しく妨げられた。特に冷たい水に多くのCO2が溶け込む極地地域の甲殻類の生物は危険である。海洋生物圏の間接的影響は深刻である。石灰質骨格をもった微小生物は食物連鎖の根幹を築いている。その消滅でより多くの大きな海洋生物の生活基盤が失われる。
"Die Versauerung hat uns Meeresforscher überrascht", sagt Verena Tunnicliffe von der University of Victoria in Kanada. Zunächst hatten die Forscher angenommen, dass die Ozeane eine verstärkte Zunahme des CO2 "wegpuffern", also ausgleichen könnten.
Ein Irrtum. Allmählich erkennen die Wissenschaftler das Ausmaß der Umweltveränderung.
カナダのビクトリア大学のベレナ・トゥニクリーフェは、「酸性化は私たち海洋学者を驚愕させている」と述べている。最近まで研究者は、海洋がCO2の劇的増加を緩衝し、緩和できると受け取っていた。しかしそれは誤りであった。学者たちは徐々に環境変化の規模を認識してきている。(以下省略)

(注3)http://www.spiegel.de/wissenschaft/natur/ipcc-wg3-neuer-klima-bericht-fordert-umbau-des-energiesystems-a-964104.html

Neuer Uno-Klimabericht
Es hilft nur der Abschied von Öl, Gas und Kohle

Von Christoph Seidler
So können wir Menschen nicht weitermachen: Das ist die Kernbotschaft des dritten Teils des neuen Uno-Klimaberichts. Der weltweite Ausstoß an Treibhausgasen muss bis Mitte des Jahrhunderts um 40 bis 70 Prozent sinken. Die Kosten sind Experten zufolge überschaubar.
新しい国連気候報告 石油、ガス、そして石炭から離脱だけが救う。
そうしなければ私たち人類は先に進むことができないだろう。それこそが新しい国連報告の第三作業部会の核心メッセージである。温室ガスの世界的排出を今世紀中頃までに現在の40%から70%削減しなければならない。費用は専門家によれば見通しの立つものである。
Die schlechte Nachricht zuerst: Die weltweiten CO2-Emissionen sind in den vergangenen zehn Jahren so stark gestiegen wie noch nie zuvor, um durchschnittlich 2,2 Prozent pro Jahr. Schuld daran ist neben dem Wachstum der Weltbevölkerung vor allem das Wirtschaftswachstum. Die Finanz- und Wirtschaftskrise hat den Trend nur kurz bremsen können. So ist es im dritten Teil des Weltklimaberichts nachzulesen, der an diesem Sonntag in Berlin vorgestellt wurde. Er befasst sich mit den Strategien im Kampf gegen die Erderwärmung.
まず悪いニュース:世界のCO2排出量はこの10年で、以前には決して見られなかったように、毎年平均2,2%と激的に増加している。その原因は世界人口の増加と並んでとりわけ経済成長にある。金融危機や経済危機はその傾向にほとんどブレーキとなっていない。この日曜日にベルリンで開催された世界気候報告の第三作業部会で、そのように結論づけられた。その報告は温暖化に戦う戦略を持って取り組んでいる。
Die Menschheit muss dringend handeln, wenn sie den Klimawandel auch nur halbwegs im Griff behalten will - das ist das Urteil der Experten. Dazu müsse der Anteil an CO2-armen Technologien zur Stromerzeugung bis zum Jahr 2050 um den Faktor drei bis vier steigen. Das betrifft die erneuerbaren Energieträger wie Wind, Solar, Wasser und Biomasse - aber eben auch Atomstrom und Energieerzeugung aus fossilen Brennstoffen mit anschließender CO2-Abtrennung und -Speicherung, kurz CCS.
人類は気候変動を幾分でも制御しよう望むなら、緊急に行動しなければならない。それが専門家の意見である。そのためには電力製造のためのCO2排出の少ない技術の割合は2050年までに3倍から4倍に増加しなければならない。それは風力、太陽光、水力、バイオガスのような再生可能エネルギー担体に関与すると同時に、原発やCO2回収と貯蔵に連結した、簡略にはCCS技術、化石燃料からのエネルギー製造に関与している。
Dumm nur, dass das Uno-Umweltprogramm gerade festgestellt hat, dass die weltweiten Investitionen in erneuerbare Energien gegenwärtig sinken - was nur zum Teil damit zu tun hat, dass die Technik billiger wird. Gleichzeitig, so berichten es die IPCC-Experten, steigt weltweit die Bedeutung der Kohle für die Stromerzeugung.
国連環境計画がまさに決定したこと、再生可能エネルギーの世界的に投資が現在低いのは愚かしいが、部分的としてもやらなくてはならないことは、技術をより安くすることである。同時にIPCCの専門家たちは電力製造のために石炭の重要さが世界的に増加していると報告している。(以下省略するが、人類が先に進むには今世紀末までにCO2排出量100%削減を明言している)。

(注4)2014年3月10日ドイツ連邦環境省公表資料
http://www.umweltbundesamt.de/daten/klimawandel/treibhausgas-emissionen-in-deutschland