(199)地域分散型自給社会が創る理想世界への道16最終回・・ドイツに学ぶ理想世界への道


日本は福島原発事故の恐るべき悲劇から3年後原発再稼働に踏み切る(4月12日シュピーゲル誌記事より)


恐るべき人類悲劇さえ顧みない原発再稼働

2014年4月12日ドイツの殆どすべてのメディアが、日本の原発再稼働を計る新しいエネルギー計画を厳しく批判した。
何故なら3年前の福島原発事故は殆ど何も解決されておらず、3基原発メルトダウンした炉心は未だに恐ろしく高いレベルの放射線を出し続け、汚染水が溢れ出しているからだ。
また原発廃棄物リサイクルの核燃料サイクル計画も、高速増殖炉が全く目途が立たなくなり、完全な行き詰まりは誰の目にも明らかである。
それにもかかわらず先送りされ、莫大な国民の血税が注ぎ込まれて行く。
さらには原発安全性の検証もされていないなかで、原発新設の容認だけではなく、トルコやアラブ首長国連邦への原発輸出を認める原子力協定承認(4月17日)が、与党だけでなく民主党の賛成で遂行されて行く。
万一事故が起きれば、日本の賠償責任は逃れられないだろう。
危惧すべきはそれだけではなく、秘密保護法案決議、憲法解釈による集団的自衛権確立によって戦前の翼賛社会に向かっていることは明らかであり、その先には核燃料サイクル計画での有り余るプルトニウム利用、すなわち抑止力を文言とした積極的平和維持のための核保有、さらには徴兵制さえ見えてくる。
そのような恐ろしい未来は、国民の誰も望まないだろう。
しかし原発再稼働のエネルギー計画のように、国民の圧倒的多数が再稼働反対にもかかわらず(朝日新聞2014年3月世論調査で再稼働反対59%、賛成28%)、全く国民の意思が無視されている。
それは、政治が金で買われる新自由主義を象徴している。
何故なら新自由主義の世界では、政治政党が政治献金を通して支配されているからだ。
すなわち化石エネルギーに依存する産業社会が大量生産、大量消費の肥大で行き詰まり、政治支配によるあらゆる規制の撤廃で生き残ろうとしているからに他ならない。

ドイツがエネルギー転換で地域分散型自給社会に進行する理由

ドイツにおいても数年前までは、現在のようにエネルギー転換が急速に推し進められ、新自由主義が見直される国ではなかった。
既に私のブログで述べてきたように、ドイツは1990年の再統一後急速に新自由主義の波にさらされ、弱者に配慮した社会的市場経済が弱肉強食のグローバル市場経済に飲み込まれて行った。
そこでは新自由主義に反対して1998年に誕生した赤(社会民主党)と緑(緑の党)のシュレーダー政権は公約の脱原発協定を締結したが、僅か1年で180度回転し、逆に「アジェンダ2010」政策で2005年までひたすら新自由主義を追及した(2005年選挙敗北後もメルケル率いるキリスト教民主同盟と大連立を組み、アジェンダ2010を完遂した)。
その結果ドイツ市民の大半が暮らしに困窮したことから、社会民主党は2009年の連邦選挙で歴史的な敗北をし、メルケルキリスト教民主同盟(黒)と自由民主党(黄)を大勝利させた。
しかし巨大電力企業の政治献金によって支配されている黒と黄色のメルケル連立政権は、大勝利宣言の際脱原発協定を実質的に反故にする原発運転期間28年延長政策を明らかにした。
これには大部分のドイツ市民が怒るだけでなく、公共放送ZDFを先頭に殆どすべてのドイツメディアが原発運転期間延長に反対姿勢で臨んだことから、延長宣言以来州選挙で負け続け、2010年の法案決議では12年間の延長に短縮された。
しかしドイツ市民は原発運転期間延長を決して認めなかったことから、それ以降の州選挙でも黒と黄色の連立政権は負け続けた。
したがってキリスト教民主同盟さえ、メルケルの機転を利かした脱原発宣言、そして新自由主義の見直しがなければ、政党自体が崩壊し兼ねなかった(現に原発運転期間延長に推進的で、金融投資税にも難色を示した自由民主党は、2013年の連邦選挙で93議席全てを失っている)。
そのようにドイツでは、2011年脱原発宣言、そして金融投資税決議や全州での大学授業料無料化回帰などの新自由主義見直しがなされていくのは、2000年に踏み出した脱原発協定でエネルギー転換が地域に活きずいたからでもある。
すなわち現在の化石エネルギーによる行き詰る産業社会が、再生可能エネルギーによる湧き上がる産業社会を要請しているからに他ならない。

ドイツに学ぶ理想世界への道

現在の日本はデフォルトを盾にした際限なき消費税増税原発再稼働による致命的再事故、集団的自衛権による軍国主義復活など、無関心でいられない危惧が山積みされ、あらゆる側面で翼賛社会に向かい、まるで蟻地獄に足を踏み入れたようである。
そこでは世論さえ、恰も世論を尊重するかのように巧妙な言回しで無視されていく。
そうした絶望的な現在を乗り越えるには、ドイツに学び、地方選挙や自治体選挙で圧倒的多数の原発再稼働反対世論を結集する以外に道はない。
そのような脱原発の選択こそが、日本を未来なき土建国家から、未来に輝く自然エネルギー国家へ蘇らせる。
すなわち日本全土の地域に太陽光発電風力発電、バイオ発電などを湧き上がらせることで、ドイツと同様に2050年までにはすべての地域に再生可能エネルギーを溢れさせ、地域分散型自給社会を築くことも可能である。
そのような地域分散型自給社会とは、既に述べたように再生可能エネルギーが地域に溢れだすことで、食物の地産地消だけでなく、地域で消費される殆どのものを地域で生産する全てにおいて豊かな社会である。
またそのような社会、そして世界は、他国への経済侵略がないだけでなく、互恵的に助け合える平和世界である。
しかもそのような平和世界では、格差が必然的に限りなく縮小し、生けるものすべての権利さえ認められる世界でもある。