(271)世界危機第九回・『地球2100年7−1』・不正が生み出す危機5(力によっては何も解決しない)


ABC放送が世界に訴える世界危機『地球2100年』

『地球2100年』は、住宅ローンに始まる世界バブルで自ら造りだした2008年の世界金融危機を受けて、ABC放送が世界的に権威ある専門家の裏付けに基づいて2009年に制作し、世界に公表した映画である。
映画の冒頭は(劇画)、地球温暖化によって干ばつと洪水の激化、台風の巨大化、海面上昇の深刻化、恐ろしい感染症の蔓延で、最早人が住めなくなった廃墟ニューヨークのシーンから始まる。
この映画では現在の2015年は6年後の未来であり、2009年に生まれた少女の家もガソリン価格の暴騰によって郊外での豊かな暮らしができなくなり、マイアミに移住して行く。
おそらく地球温暖化防止に積極的でない人たちは、現在の原油価格暴落している事実だけを取り上げ、この映画が信憑性に欠けることを強調するだろう。
しかし客観的に見れば、1バーレルあたりの原油価格は暴騰へと向かっていることは確かである。
戦後日本が高度成長した頃は1バーレルが2ドル前後であり、70年代初めの3ドルが石油ショックで10ドルの大台を超えて暴騰した。
その後80年代から2002年のサブプライムローン過熱兆候が始まるまでは20ドル前後で推移していたが、それ以降急激に上昇し続け、2008年6月には133、88ドルまで暴騰した。
2009年2月には39ドルといったん急落したが、すぐさま上昇に転じ、2011年には再び100ドルを突破し、少なくとも昨年2014年7月(103、59ドル)まで高値園で推移していた。
したがって現在の40ドルまでの急落にはそれなりの裏と操作があり、次の高騰への足場を固めているに過ぎないからである。
何故なら既に書いて来たように、2025年のEUエネルギー政策さえ化石燃料に依存し、途上国や新興国の成長は化石燃料消費を肥大させ、これから開かれるパリCOP21でも予備折衝で5年ごとの先送りともいうべき決着が図られており、この映画が描くように高騰へと向かうことは必至であろう。
それこそが、気候変動を深化させ、干ばつと洪水の頻発で世界の大部分の人たちを困窮させ、さらにテロと伝染病を益々深刻に蔓延させ、世界危機を招いているのだ。

不正が生み出す危機5(力によっては何も解決しない)

前回述べた規範の道具化による不正容認は、成長神話に依存する産業の要請に他ならず、公正を求めて取り締まるべき規制が、益々不正を生み出す手段になっている。
それは公害規制では濃度規制を設けることで、薄めて海洋に流すことで有害物質の海洋への拡散肥大に他ならない。
また開発による環境危機に対しては、企業による企業開発のための環境アセスメントで合法的に開発を推進していると言っても過言ではない(リニア開発や辺野古基地開発などなど)。
今回の旭化成の杭不正は、最初にも述べたように業界全体に拡がり始めていることから、表面的には業界による不正の生じないシステムの構築がなされるだろう。
しかし競争原理最優先で工期にゆとりがない中では、不正が巧妙化されていくだけで、ほとぼりが冷めたころ繰り返されていくことは必至である。

このように不正を書いている際、事もあろうに厳戒態勢のパリ市街で余りにも悲惨な同時テロが起きた。
世界の平和と連帯を願うパリ市民を自爆テロと無差別乱射で殺戮した余りにも残虐なテロは、どのような理由からも決して許されてはならない。

しかしそのようなテロが、ニューヨーク同時多発テロ以降15年という長い年月力によって撲滅を求められてきたが、アフガニスタンの制圧すら機能不全となり、益々世界に拡がり続けていることも事実である。
その背景には、力によって制圧を求める側に不正肥大を容認する現実がある。
例えば途上国支援で見るように、支援をすればするほど途上国の大部分の人たちが益々貧困になっていく不正の現実がある。
すなわち天然資源に恵まれた途上国でも、支援で開発が進めば進むほど多国籍企業の搾取で、大部分の人たちが困窮していく不正の現実がある(詳しくはブログ121参照 http://d.hatena.ne.jp/msehi/20121222/1356174828)。
また軍産複合体の肥大で、武器輸出(闇ルートを含めて)が容認肥大していく不正の現実がある。

そのような国家の不正も世界市民にガラス張りに開き、本気で不正を正す努力なくして、ABC放送の『地球2100年』が描くように、現在の文明は廃墟にもなりかねない。