(290)万人の幸せを求める社会 第七回 「パナマ文章」を世界を変える力に(3)最強の武器は透明性と公開

上の動画はベルリン市民団体「ロビーコントロール(ロビー監視)」の創設10周年大会(2015年11月21日)に、創設時から関与する日刊シュピーゲルのジャーナリストのハラルド・シュウマンの力強いメッセージであり、まさに現在の不正なる世界を正すには、ガラス張りに公開することが民主主義の最大の武器であると強調しています。

(尚シュウマンが家に忘れたいうカントの引用文「他者の権利に関わる行動が、公開するにふさわしくない場合には、その行動はつねに不正である„;Alle auf das Recht anderer Menschen bezogenen Handlungen, deren Maxime sich nicht mit der Publizitat vertragt, sind unrecht.『永遠の平和のために』中山元訳」は祝辞原稿に載せられており、実際の演説では現在のガラス張りに公開されない大衆迎合の政治こそが不正の根源であると述べています)。

私がドイツで学び始めた2007年頃には、既に連邦議会国益と称してフリーパスで横行するロビイストたちの活動が問題視されていましたが、「ロビーコントロール」の存在は知れ渡っていませんでした。
しかしこの大会前日には、提訴していたベルリン上級憲法裁判所の判決でロビー活動の特権である連邦議会フリーパス企業(団体)名の公開に勝利するまでに名を馳せています(公開された607のフリーパス名企業PDF)。

何故今回ロビー活動を取り上げたかは、「パナマ文章」の暴露するタックスヘイブン法人税引下げ競争の根源には、世界を支配する巨大資本のロビー活動があるからです。

世界にロビー活動監視で世界に名を馳せている市民団体「オックスファーム・アメリカ」が2016年4月14日のメディア会見で公表した25ページにも及ぶ報告書では、アメリカのオフショア金融に関与する50の巨大企業の約1、4兆ドルの資産がタックスヘイブンで税から逃れてることを明らかにしています。
http://www.oxfamamerica.org/static/media/files/Broken_at_the_Top_FINAL_EMBARGOED_4.12.2016.pdf

オックスファームは2015年4月20日に公表された「Senato Office of Publc Recods」を分析し、具体的にアメリカの50巨大企業の名前を明らかにするだけでなく(18ページから20ページ)、各々の企業が2008年から2014年までにどれだけ少なく税を払い、どれだけのオフショア資産を有し、どれだけのロビー活動費を支出し、どれだけの利益を得ているか詳細に載せています。
それによれば、これらの50企業は、全体でロビー活動費におよそ26億ドルを支出し、その活動費用の130倍もの利益をだしています。
すなわちロビー活動によって、法人税引下げ競争やタックスヘイブンの仕組がつくられると言っても過言ではありません。
報告書の終わりにオックスファームは、租税回避阻止を求めて透明性の徹底と公開を上の動画と同様にアッピールしています。

確かに今回の「パナマ文章」暴露でアメリカ司法省が調査を開始したことが伝えられており、より透明性の高い国際ルールが構築されるでしょう。
しかし本質的な問題をそのままにしては、どのようなルールが構築されたとしても、これまでのようにロビー活動を通して新たに巧妙な抜け口がつくられ、益々世界の格差が肥大し、99パーセントの人たちが窮乏する世界の到来は必至です。

本質的な問題とは、世界を支配する化石燃料産業の巨大資本が盛者必衰のことわりを忘れ、力によって永遠の繁栄を維持しようとすることにあります。
それ故に今回明るみに出た3度目の三菱自動車の不正が物語るように、うわべは公正が求められとしても、中身は不正が求められており、何度でも繰り返すことに他なりません。
そうした世界の未来は絶望的です。

しかしエネルギー転換を推進するドイツから見えてきたことは、依然として化石燃料産業支配が継続するなかで、既に述べたように弱者を支える社会的市場経済の復活が湧き上がっていることです。
ドイツにおいても、フォルクスワーゲンの不正や今回の「パナマ文章」でもシーメンスを始めとして多くのドイツ企業が関与している実態は同じですが、「ロビーコントロール」のような市民団体が先頭に立って不正の膿を出し尽くそうとしていることに、大きな違いが感じられます。
その原動力は地域分散型の無尽蔵の自然エネルギー再生可能エネルギー)への転換にあり、現に2011年のドイツの脱原発まで巨額の利益を出していた四大電力企業は赤字に転じ、2014年には自ら化石燃料から再生可能エネルギーの方針転換を打ち出しています。
それはまさに、巨大企業の中央集中型大量生産よりも、地域分散型適量生産が有利であることを示し、人類文明に次の章があるとすれば、そのような自然エネルギーへの転換が現在世界を横行している不正を根絶し、困窮を強いられて行く世界の99パーセントの人たちにも豊かな暮らしと平和をもたらすと確信します。
最近ドイツの環境保護と民主主義のシンクタンクである「ハイリッヒ・ベル財団」が日本へ無料送付して来た『エネルギー転換・・ドイツのエネルギーヴェンデ(日本語版2016年3月8日発行)』は、それを実証しています。
http://www.renewable-ei.org/activities/reports_german_energiewende_20160308.php

ドイツの戦後は日本とは本質的に全く異なるものであったことは確かですが、ドイツ統一以降少なくとも2011年の脱原発宣言まではロビー支配で新自由主義を推進していたことも事実であり、それは逆に言えば、現在のように絶望的未来展望しかできない、日本、そして世界が変わり得ることを示唆しています。

(追伸)今年1月は現在の日本危機感から本を書く事に挑戦しましたが、思うように書けませんでした。今私の田んぼで苗を育てながら、何故ドイツは変わり得たか?、どのようにすればドイツのように変わり得るか?、今ドイツから何を学ばなくてはならないか?、そのような視点で書ける気がして来たことから再挑戦することにしました。そのためこのブログを見てくださる方には申し訳ありませんが、しばらくブログを休ませていただきます。