(317)時代の終わりに・危機と希望(1)・ハラスに満ちた報復的攻撃

上の動画で前の社会民主党(SPD)の党首マティアス・プラツェクが述べているように、少なくとも5,6年前までは誰が極右的なトランプ米国大統領の誕生を想像できたでしょうか。
それは米国だけでなく、既にヨーロッパでは法とメディアを支配する極右的政権がハンガリーポーランドで誕生し、プラツェクの「世界は今何が起きようとしているのか」という問いが、強く心に響きます。
それは時代の終わりであり、再び世界を巻き込む戦争の予感です。
なぜなら大量生産、大量消費の化石燃料産業社会がモノが溢れることで競争が激化し、そのような社会が成り立たなくなるほど格差を肥大させ、益々行き詰っているからです。
その危機の延長線上には、終末的な絶望的戦争が見えて来ています。
しかし同時にそのような終末的危機の向こうに、新しい希望が見えてきたことも確かです。
すなわち現在ドイツで推し進められているように、太陽や風などの自然エネルギーで創る世界であり、これまでの集中型大量生産技術がグローバルに外心的であるのと異なり、分散型少量生産技術であることから地域に内心的に働き、自ずと地域主権の世界を創り出し、貧困から差別に至る現在のあらゆる問題が解消されて行くと思われるからです。
既にそのようなエネルギー転換が進行しているドイツでは、1998年のシュレーダー政権誕生以来競争原理優先で新自由主義に呑み込まれて行った社会民主党が、地域から湧き上がる力に押され、今年9月の連邦議会選挙では前のEU議長のシュルツを大統領候補に立て、以前の社会的公正によるより格差の小さな連帯社会を目標とする社会民主主義バック・トゥ・ザ・フューチャー(過去に戻ることで未来を創るの意味で)しようとしています。
そうした希望の反面、今回の討論番組でも述べられているように、絶望的戦争が既に拡がり始めていることは事実であり、先週NHKで放映されたシリア市民が自ら映し出した「シリア絶望の下で閉ざされた街最後の病院」(動画)は絶望的悲惨さを刳り出し、私自身恐ろしい戦慄を感じないではいられませんでした。

今回の討論で特に印象的であったのは、アメリカのトランプ支持者の政治顧問ペーター・ラウフが「トランプ大統領が裁判官を叱責するのは、オバマも公の場で裁判官を叱責したことであり、ダブルスタンダードは政治的戦略である」と述べたことに対して、サンダース支持者でアメリカ女性作家デボラ・フェルトマンは「トランプのやり方はダブルスタンダードや誤魔化す技術(Whatabouttism)ではなく、ハラスに満ちた報復的攻撃である」と非難している点です。

日本でも自民党改憲派若手議員の総会で「(政権の意向に従わない沖縄2紙を)潰せ」という言論を封じ込めるハラスに満ちた報復的攻撃は記憶に新しく、世界的に同時進行していることに危うさを感じ得ません。
下に載せた私の見た動画18では、沖縄2紙の編集局長が外国特派員協会が開催した会見で激しく抗議しています。
そのようなハラスに満ちた報復的攻撃は、(現在も共謀罪閣議決定自衛隊南スーダン日報隠し、さらには森安問題に鮮明に見られるように)戦前体制へのバック・トゥ・ザ・フューチャーを目論む以外の何者でもありません。
まさにそれは、悲惨で残忍な戦争の扉を開けることです。

尚上のフィルムでオバマ大統領が最高裁裁判官を公の議員総会で叱責した理由は、2010年市民連合(反ヒラリー団体)の最高裁への「法人の上限のない政治献金」告訴に対して、最高裁は「法人にも政治献金する権利がある」という判決を出したからです。その判決は、実質的に政治が金で支配されることを意味するからです。
またトランプ大統領が資産破綻法(破産法)に異議を唱える上院議員をハラスに満ちた報復的攻撃した理由は、現在の企業の資産範囲でしか賠償責任が問われない破産法が廃止、もしくは変更されれば(例えば原発事故で企業資産を超えて賠償責任が問われれば)、新自由主義を推進する起業意欲が損われるからだと思われます。