(331)時代の終わりに(15)・核戦争が起きないために(4)本質的解決策ローカリゼーション・危機を警鐘する国内報道(4)民進党の解体

核戦争が起きないために(4)本質的解決策ローカリゼーション

『ラダックの懐かし未来』の著者で、人類学者でもあるヘレナノーバーグが自ら制作したフィルム『幸福の経済学(短縮版)』を見れば、現在の世界危機の原因がグローバリゼーションであり、本質的解決策はローカリゼーションであることが理解できるだろう。
事実現在起きているアジア最大の浄化と言われる50万人も達するロヒンギャ避難民(下の掲載動画参照)、そしてヨーロッパのシリア避難民は500万人を超え(国連難民高等弁務官事務所UNHCR今年3月報告)、世界の現在の難民及び避難民の総計は6000万人を遥かに超えている事実(今年6月のUNHCRの報告によれば、昨年末の総計は6560万人)は、世界の危機を警鐘している。
このように難民や避難民が恐ろしい勢いで増大している原因は、グローバリゼーションが世界の隅々まで浸透し、地域経済を破綻寸前に追いやり、地域の多くの人たちが都会へ出て行かなくてはならないことに始まっている。
都会へ出て来た人たちもグローバリゼーションのボトム競争の激化で困窮し、地域に残った人々も暮らしに困窮し、平和に共存していた民族も、上のフィルムで述べられているように、過激な原理主義やテロリスト集団を生み出し、争いにによって難民や避難民が底なしに増大し、争いの肥大化が世界の国々に益々軍事力を強化させることで、究極的に核戦争の危機を招いていると言っても過言ではない。
確かに世界のお金に換算した利益はグローバリゼーションによって増大するとしても、格差の拡大により、大部分の暮らしが困窮して行くことも明らかになって来ている。
グローバリゼーションとは地域でそれなりに充足されていた経済を、究極的には各々の商品が最も安く生産されるところで造られるように、世界分業生産支配経済に変えることに他ならない。
それを支配するのはひと握りの巨大企業(多国籍企業)であり、人間の幸せよりも目先の利益を優先し、地域経済を崩壊させ、世界の安定を壊している。
またそのような世界分業生産支配経済への推進は、地球温暖化のスピードを速めさせ、干魃や洪水の激化によって益々人々を窮乏させている。
しかもそのような世界分業生産支配経済は順境においては商品を安く提供できるとしても、一旦争いや世界規模の干魃などがあれば、商品が外から入らなくなり、弱者の餓死すら現実化することもあり得よう。
それ故に、出来うる限りエネルギーも含めて地域での地産地消求められ、その実現こそが暮らしの安定に直結するだけでなく、その総和として世界平和をもたらすものである。
20世紀の終わりにEUでは、行き過ぎたグローバリゼーションへの批判からローカリゼーションが唱えられ、EU市民の幸せを最優先することが求められていた。
事実97年の京都議定書では、EUはドイツなどの産業先進国のCO2排出量を大幅削減を求め、ギリシャポルトガルなどの産業後進国には逆に大幅な排出量を認め、EU参加国の平等の豊かさへの発展を追求していた。
しかしそのようなEUも、英国の労働政権(ブレア)とドイツの労働政権(シュレーダー)による「もう一つ別な成長計画(ドイツではアジェンダ2010)」という政策に乗せられ、逆にこの20年間グローバリゼーションを急激に推進させて来たことも事実である。
もちろん労働政権がそのような選択をしたのは、行詰る産業危機からの圧力からであり、市民の幸せより多国籍企業の目先利益を優先させたからと言えるだろう。
そのような転換は、ドイツの労働党である社会民主党SPD支持率の変遷を見れば明白であり、SPDは連邦議会選挙で98年の反グローバリゼーションを掲げて大勝利した時から(得票数40、9%)、選挙ごとに著しく支持票を減らし、2009年には結党以来のワースト記録の23%に下がり、今回の選挙ではそのワースト記録を更新して20、5%に落ち込み、解党の危機に直面しているのである。
それ故に世論調査からは社会民主党SPDとの大連立が望まれ、連立の継続が予想されていたが解党の危機に望んで、連立からの下野宣言をすぐさま出さずにはいられなかった。
確かにSPDは2007年のハンブルグ大会の綱領で新自由主義を真摯に反省しているが、絶えず新自由主義容認派が主導権を奪い、実質的には絶えずメルケル政権で経財相を握り、新自由主義を推進して来たことは、ドイツの市民の目には明らかである。
もっとも産業側から見れば、20世紀後半には大量生産、大量消費の化石燃料産業がクライマックスに達し、ドイツ産業においても20世紀末には危機に陥り、98年連邦議会選挙の際雇用や教育などで反グローバリゼーションを掲げた政権を、どのような手段を使っても組合組織母体を骨抜きにし、反転させることが必要だったと言えるだろう。
そのような大企業側への反転は2013年以降のメルケル大連立政権でも継続されており、2014年SPDのガブリエル経財相によるEEG法(再生可能エネルギー法)改正での固定価格買取の実質的廃止や再生可能エネルギー施設の入札導入は、まさに経営危機に陥った4大巨大電力企業を救済するためであり、ドイツ市民はそれを公共放送を通して熟知し、それ故に市民はSPDから離れて行くのである。
しかもそれを契機に巨大電力企業側は、化石燃料エネルギーから自然エネルギーの転換を積極的に打出し(同時に現存する石炭発電所は出来うる限り継続して)、自然エネルギーの時代にも支配を強化しようとしているのである。
すなわち表に現れている大きな流れからは、ドイツでさえグローバリゼーションの波に上手く乗っている姿しか見えてこない。
しかし実際はエネルギー転換を通してローカリゼーションが急速に進展しており、それが最近のドイツの財政黒字を確固としたものにしている大きな要因である。
すなわちドイツ市民が、ドイツ全土でEEG法を利用して推し進めて来た風力発電、太陽光、バイオ発電が地域を潤すだけでなく、雇用創出で地域自立を安定させているからに他ならない。
そしてそのように市民自ら推し進めることが出来た理由は、自然エネルギー利用が分散型技術であり、近くで利用されればされるほど有利であるからだ。
それ故、たとえ自然エネルギー及び自然エネルギー産業が一時的に支配されても、世界に普及する頃には、地域での生産利用(地産地消)が断然有利であることから、この分野の専門家ウベ・レプリヒ教授が指摘するように、将来的には巨大企業を滅ぼすのは必然とも言えよう。
そうした視点からみれば、現在のローカリゼーションの世界的退行は、飛躍へのスプリングとしての退行であり、世界に極右とテロが台頭する地域危機を冷静に見つめ、止めどもなく湧き上がる様々な問題に対症療法的に取組むだけでなく、本質的な解決ローカリゼーションを見据えて取組んで行けば、核戦争の危機を回避するだけでなく、世界のすべての人々が平和に豊かに暮らすことは可能である。

直近のドイツニュースに見る予兆(8)

今回の連邦議会選挙の結果は予想通りであったとは言え、極右的なAfDが12%を超える得票数で連邦議会に進出したことは、グローバリゼーションがもたらした世界の危機の兆候に他ならない。
もっともドイツの地域はエネルギー転換によって希望ある未来へと進展しており、その原因は増え続ける避難民への不安感にある。
現在行われている連立予備会談では、緑の党が石炭火力発電所の廃止やジーゼル車廃止を強く主張して難航しているが、最終的にその主張を尊重しないと行かないことも確かである。
SPDが下野せざるを得なかったことも、政権の議席過半数規約が緑の党を含めたジャマイカ連立政権誕生に向けて合意形成が求められるのも、ドイツでは政治に公正さと透明性が規約を通して確保されているからに他ならない。

すぐさま世界は、国連を通して全力で取り組まなくてはならない。
ロヒンギャ民族の避難民も増え続けているが、世界最大の無国籍のクルド民族がイラククルド自治区で独立のための選挙を強行したことから、イラク政府及び周辺各国と緊張が高まっており、武力衝突が起これば、最早世界は救済の限界に達していることから、避難民を見捨てることにもなり兼ねない。
まさにそれは、核戦争に繋がる転轍である。

危機を警鐘する国内報道(4)民進党の解体

上の動画に見るように、政治家がどのように美しい巧みな言葉で語っても、社会党結党以来憲法9条の護憲政党がその改正をかかげる新党「希望の党」に合流して政権奪還を目指すことは、明らかに国民を騙すまでに変質したことを意味し、その変質こそが現在の日本の危機を警鐘しているように思える。
もっともドイツの社会民主党の変遷からすれば、既に社会党分裂当時に民主党は大企業組合組織を通して支配されており、国民よりも大企業優先の姿勢は既に民主党政権時においても節々で見られ、唐突な今回の表明も、後から見れば当然の感じさえする。
確かに戦争に向けて舵を取り、議会制民主主義を全く無視する安倍政治を止めなくてはならないとしても、「希望の党」の小池知事も、当初政治の公正さと透明性を公約していたが(私自身も一時的に期待していたが)、従来の上辺だけのものであることが見えて来ている。
それゆえに危惧すべきは、国民に迎合する決められる政治で、結局のところ戦争に向けて憲法を改正し、大企業の求めるグローバリゼーションを加速しかねない危うさにある。