(379) メルケル首相2020年新年挨拶・未来は開かれのか?

 

メルケル首相の挨拶を訳して載せるのが、毎年の日課となって来た。
メルケルの新年挨拶は、“避難民を受け入れないなら私の祖国でない”と挨拶した年を除けば、相変わらず倫理的規範に縛られ、益々温和なものとなってきた。
特に2019年は、メルケルが主導してきた保守路線から社民路線への転換が党内抗争を噴き出させ、党首を後継者カレンバウアーに託し、首相に専念する年となったことから、一歩引いた姿勢が感じられる。
それでも2019年初めには、産業界との合意を引き出し、ドイツの2038年までの脱石炭を世界に宣言した。
また、ドイツの2030年のパリ協定を守る地球温暖化対策スケジュールでも、確実に議会で法案を成立させており、世界をリードする救世主であることは間違いない。
確かにドイツの若い世代は、最早メルケルを見限っているが、新年挨拶でもそれを百も承知で話しており、その包容力なくして世界の温暖化対策も平和も前に進まないであろう。
現在のグローバル化で絶えざる成長を求めるネオリベラリズム新自由主義)は、地球温暖化対策、平和、格差是正とは真逆の流れであり、その苦悩がマドリードでのCOP25でも露骨に見られ、客観的に見ればパリ協定の実現は絶望的である。
しかし『これがすべてを変える・・資本主義対気候変動』のクライン・ナオミが言うように、既存システムは既に破綻しており、現在の絶望的状況を救うには、経済の仕組みを根底から変えなくてはならず、気候変動と戦うことは希望に満ちていると断言している。
確かにそのような希望は、これまでは右派産業シンクタンクから発せられる様々な妨害で潰されて来たのも事実であるが、2030年まで年々気候変動危機が激しくなっていくなかでは、最早それにも限界が見えて来ている。
私たちの希求する「すべてが変わる」社会の到来が、2020年から始動することを切に祈りたい。