(381)“救済なき世界”をそれでも生きる(3)・グレタ世代の若者が挑む、実存的、民主的、非党派的、献身的な文明への戦い

上の動画は、公正な民主主義を追求する「デモクラシーナウDemocracy now」が(下記アドレス参照)、「私たちの家はまだ燃えている」のタイトルで21日ダボス会議のグレタ・トゥンベリさんの講演スピーチを載せていたことから、その声を少しでも届けようと思い、日本語字幕を付けたものである。
https://www.democracynow.org/2020/1/21/our_house_is_still_on_fire
前回のブログでの2019年ダボス会議では、直ぐに地球温暖化危機に取組まない出席者に対して、それを恐怖しパニックに陥ることで直ぐに行動する事を訴えたが、この一年益々パリ協定実現に消極的になって行く世界に、忍耐の限りを尽くして諭すように訴えている。
スピーチでは、ともすれば先送りの口実ともなりつつある「低炭素経済」や2050年「二酸化炭素排出量ゼロ」という遠い未来へのスローガンは必要なく、今日から行動することを強く求めていた。
それは、世界の指導者たちが「悲観的にならず、私たちに任せてくれ」と約束するにもかかわらず、困難なことには挑戦せずあきらめてしまい、何も始まらない現状を問い正す言葉からも、その痛切な思いが伝わって来る。
それは、前回の私のブログでのグレタ・トゥンベリさんの検証を通して感じたことでもあり、宮沢賢治のごとく「世界中全ての人々が幸せにならない限り、自分の幸せもない」という献身的な思いである。

そのような献身的なグレタさん思いは、普通の人より何倍、何十倍も強く、スエーデン議会前に一人座り込むことで、自らを投機した実存的戦いからも見えてくる。
それは救済なき世界で、大人から見れば荒唐無稽であるとしても、世界を変えたい、変えなくてはならないと一途に思う純真無垢な戦いでもある。
それ故に、2018年8月のスエーデン議会前抗議活動開始から瞬く間に世界に拡がり、2019年には世界の数百万の若者たちが抗議の「未来のための金曜日」デモに参加し、2020年には益々拡がる勢いを増している。
特にドイツではその拡がりが爆発的で、2019年3月15日のグローバル気候デモでは、ドイツ全土230の都市で30万人を超える生徒たちの「未来のための金曜日」デモへと発展した(下記参照)。
https://www.klimareporter.de/protest/300-000-bei-fridays-for-future

さらに2019年9月20日の地球規模の気候デモでは、ドイツ全土575都市で「未来のための金曜日」デモが為され、140万人を超えるまでに膨れ上がっている(下記参照)。
https://www.zdf.de/nachrichten/heute/fazit-fridays-for-future-und-beschluesse-klimakabinett-100.html

そこでは今や、世界の科学者や識者の支援を受けて、実存的、民主的、非党派的、献身的に、文明への戦いが挑まれている。

そうした若者の抗議デモに対し、ドイツメディアは真摯に向き合っており、下に載せた動画ℤⅮf『ドイツの金曜日デモの若者たち3-1』(2019年10月31日ZDF37で放送)では、境遇の異なる3人の若者を通して、ドイツの若者たちが地球温暖化危機を実質的に容認してきた救済なき世界で、いかに生きようとしているかをドキュメンタリーで描いている。
ザムエルやラグナは「未来のための金曜日」デモに積極的に参加して抗議する若者であるが、アンドレアスはデモに参加して抗議する若者ではなく、地域のビオガスエネルギーに取組み、週末の休みも自動車で地域の外へ出かけることを控え、地域の将来、地域の幸せとひたすら向き合おうとしている。
そのような彼らの真摯に生きる姿勢、そしてドイツの若者たちを立ち上がらせたグレタ・トゥンベリさんの生きる姿勢には、終末期にあるとさえ言われる現代文明への新しい萌芽が感じられる。