(384)“救済なき世界”をそれでも生きる(6)地球温暖化懐疑論検証を通して考えるプロパガンダ

ブログ(376)の「大洪水から学ばなくてはならないこと」で書いたように、昨年2019年10月の台風19号では、進路にあたる71河川が決壊し、夥しい被害がでた。
しかしその被害も、最近の地球温暖化研究者の測定に基づく合意からは、益々到来する巨大台風が頻繁になることが予想されている。
何故なら、2018年の国連気候変動政府間パネル(IPCC)報告では、これまで産業革命以前からの地球の温度上昇を1,5度以内に抑える目標のパリ協定が、最先端の研究者たちの測定に基づく合意から、早ければ10年後に1,5度上昇到来を警告しているからである。
しかし現在の世界経済を統率するアメリカは、パリ協定からの離脱を表明し、アメリカに絶えず追従すると揶揄される日本でも、表向きはパリ協定順守の姿勢であるが、石炭電力の国内増設だけでなく、途上国への拡大、さらには石炭から造る水素社会未来像を打ち上げるなど、実質的には化石賞をもらうほどパリ協定に後ろ向きである。
アメリカがパリ協定から離脱する理由は、単に自国利益優先剥き出しのトランプ政権にあるだけでなく、本質的には2019年1月」の「NATURE CLIMATE CHANGE」誌が詳しく検証しているように、アメリカ国民の半数及び多数の共和党議員が地球温暖化懐疑説(気候変動は人為的なものではないとする考え)に影響され、パリ協定に至った経緯を理解せず、単なる偏った政治的決定に他ならないと信じているからに他ならない。
アメリカ国民の半数が現場での測定に基づく地球温暖化危機を信じないのは、化石燃料消費によって莫大な富を築いた石油産業が様々なシンクタンクを利用して、著名な御用学者のわかりやすい言葉でプロパガンダされているからである。
それは世界的に定評ある「MONTHLY REVIEW」誌の2012年3月号が「Petroleum and Propaganda・The Anatomy of the Global Warming Denial Industry石油とプロパガンダ地球温暖化否認産業の分析」で、具体的にシンクタンク、多くの御用学者や著名人、さらにはメディアや莫大なお金の流れなどについても詳しく報告しており、以後その報告対して虚偽の訴えもないことから、一目瞭然である。
その見事な分析は下のアドレスで現在も見れることから、是非読んでもらいたい。
https://monthlyreview.org/2012/05/01/petroleum-and-propaganda/

そのようなプロパガンダの実状がわかるなら、上の動画『地球温暖化詐欺検証』を載せた理由も理解してもらえるだろう。
映画『The Great Global Warming Swindle ・地球温暖化詐欺』は、2007年3月8日に英国公共放送チャンネル4が放映した番組フィルムである。
そして上の動画は最初の導入部であり、著名な多くの御用学者などを登場させ、人為的な地球温暖化は嘘であると云う主旨を繰り返し訴えている。
しかしこの番組は、真実を求める多くの人たちが直ぐさま真剣に検証し、追及したことから、あらゆる面で偏向性と不公平性が明らかにされ、英国メディア規制オフコムは違反判断を2008年7月2日に下している。
映画『地球温暖化詐欺』の主な主張は二つあり、その一つは要約すれば「人間の排出する二酸化炭素量は火山や動植物排出量に較べ非常に少なく、しかも海洋の吸収でコントロールされている」という主張である。
そしてもう一つの主張は、「地球温暖化の主因は太陽活動にあり、現在の太陽活動は高いレベルにある」という指摘である。
しかし二つの主張は、国際的な学術組織がことごとく誤りであることを明言し、以下のように要約される。
1、化石燃料などの燃焼による人為的二酸化炭素排出量は、火山由来の排出量に較べ100倍以上に上っている。また海洋放出説は、海洋に含まれる二酸化炭素の多くは炭素同位体13であり、人為的排出の二酸化炭素は炭素12であり、二酸化炭素増加の主原因は海洋からの放出ではない。
2、20世紀半ば以降は太陽活動が減少傾向を示し、特に最近20年では太陽活動のプロットが気温上昇と真逆になっており、地球温暖化の原因は太陽活動の活発化とは考えられない。
このような2つの明言は、地球温暖化懐疑論の御用学者たちも誰一人崩すことができておらず、地球温暖化に対する人為的影響を否定する国際的な学術組織は無いと認識されている。
もちろん2つの明言に異論を主張する御用学者や評論家は多く、アメリシンクタンクヘリテージ財団を先頭に、フーバー研究所、Competitive Enterprise 研究所、ジョージ・C.・マーシャル研究所、ハートランド研究所(トランプ政権のパリ協定離脱の旗振り役といわれている)などは絶えず疑念を喚起して、地球温暖化自体を否定し続けている。
しかしこのような異論情報の手口は、国際的学術組織及び関与する雑誌を通して世界にガラス張りに公開されており、私の検証と敢えて断ることなく、地球温暖化懐疑論は明白なプロパガンダである。
もちろん映画『地球温暖化詐欺』は多くの科学者やジャーナリストが指摘するように、古い研究を利用し、データを誤用、捏造していることから、この映画自体が詐欺であることは明らかであろう。

尚私の検証は、基本情報を得るためにウィキペディアWikipedia)から開始した。
もちろんウィキペディアは、編集参加者なら誰でも項目執筆することができ,既存の内容を加筆・編集できることから、正確さ、信憑性には問題があると指摘されてきている。
しかし編集履歴は、すべて記録され,誤った内容や特定の意図をもった書込みに対処していることから、正確さや信憑性に対しても高まって来ていることも確かである。
もっとも中立性を重んじていることから、検証を可能にする資料としては限界があることも確かである。
しかし「地球温暖化に対する懐疑論」のドイツ版「Leugnung der menschengemachten globalen Erwärmung(人為的地球温暖化の否定論)」では、ドイツ自体が「ホロコーストはなかった」と主張するだけで犯罪になることもあって、この件に関しては徹底的な調査がなされており、検証可能なものになっていると確信できた。
そのようなドイツ版の影響か、日本版の「地球温暖化に対する懐疑論」、「地球温暖化詐欺(映画)」も、すべての記載でプロパガンダであるという姿勢が滲みだしている。
確かに2018年国連気候変動政府間パネル(IPCC)の10年後に、1,5度上昇の到来可能性を警告する緊急報告は、経済活動に関わる人たちに受け入れ難いものであり、人為的地球温暖化自体誰もが避けたいと願うことから、米国民の半数が懐疑的であるという調査に見るように、日本においても多くの人たちは未だに懐疑的であるように思える。
しかしもし、パリ協定、そしてグレタ・トゥンベリさんが訴えるものに現在目を背けるなら、武漢封鎖に見るように後手、後手に終始し、大きな禍となるだけでなく、いずれ人類滅亡にもなりかねない。
それとは逆に、世界が一つになって協力して立ち向かって行けば、塞翁が馬に見るように「禍を転じて福と為す」ことも可能である。