(386)“救済なき世界”をそれでも生きる(8)メルケルの「国民の7割近くの感染」発言の真意と日本が学ばなくてはならない恐るべき警鐘

ヨーロッパのコロナパンデミックは日々恐ろしい勢いで拡がっており、ジョン・ホプキンスセンターのコロナパンデミック26日朝の速報では(注1)、世界の感染者数は46万4026(死者2万946人)となり、特にイタリアでは外出禁止令にもかかわらず感染者7万4386人のうち死者は7503人と10%を超え、最早医療体制さえ崩壊していると言われている。
そのような惨事を予期して、ドイツのメルケル首相は3月11日の記者会見で、現在のままでは専門家の証言(ロベルト・コッホ研究所見解)として、「国民の60%から70%の感染を覚悟しなければなりません」と明言している(上の動画参照)。


さらに3月18日には、医療機関の必死の努力にもかかわらず、益々患者数が増えていくなかで、上の動画で見るように異例の国民演説を行い、「第2次大戦以来の挑戦」であると危機の大きさを訴え、「困難な戦いで勝ち取った権利である移動や行動の自由」という民主主義の根幹を尊ぶことを誓いつつも、絶対の必要性がある場合はその権利の制限も行わなくてはならないことを述べている。
そして連邦各州首相との合意を受けて、3月22日に国民に第一公共放送ARDで「推奨事項ではなく規則である」と題して、現在の危機を乗り越えるために国民の守るべき具体的規則を求めている。
生活必需品を売る店以外の飲食店や美容院などの営業が禁止されるだけでなく、市民の他者との接触も必要最小限にし、接触する場合は少なくとも1.5メートル距離を保つなど、市民にとっても厳しい移動と行動自由制限が求められた。
しかしそれでも、ドイツの感染拡大は止めることが出来ず、3月11日の「国民の60%から70%の感染を覚悟しなければなりません」という言葉が重く圧し掛かってきている。
このメルケルの発した言葉は、ロベルト・コッホ研究所専門家の見解であり、1918年に起きたスペイン風邪の調査で、当時の世界人口28億にのなかで3分の1近くたちが感染し、1憶人に亡くなったデータに基づいている(おそらくロベルト・コッホ研究所見解の60%から70%感染は、現代のグローバル化によるシミュレーションによるものだろう)。
このスペイン風邪については、ケンブリッジ大学が制作した動画『スペイン風邪・歴史からの警告』がよく描かれており、下に日本語字幕を付けて載せた動画を見れば、当時の恐ろしさが垣間見えてくる。

フイルムが語るように、感染者が自らの痰によって溺れる悲鳴や、青くあるいは紫に変わり果てた遺体が病院から通りに放り出されていく光景が浮かんで来る。
そしてこのウイルスが根絶できないのは、コロンビア大学の専門家が語るように絶えず突然変化し、動物から動物へのウイルスが動物から人へ、さらには人から人へと急速に進化し、生き延びるために絶えず感染力を増して来るからである。
それでもコロンビア大学の専門家はアメリカを象徴するように、実験室とコンピューター内で人工的に将来進化するウイルスによってワクチンを製造し、いつの日か克服できる日が来ると明言している。
しかし本当にそうだろうか?
病原菌との戦いにおいても人類は次々と抗生物質を見つけ克服しようとしたが、たえず病原菌は生き残るために急速に進化し、耐性菌を生み出し、むしろ強化されているという見方さえできる。
私見を述べれば、科学進歩も必要であるが、パスカルの言うように「一つわかれば、十わからないことが出てくる」という謙虚さが必要であり、病原菌や病原ウイルスを進化させている原因を改めるべきである。
それは、動物のウイルスが人間ウイルスにまで劇的進化を遂げても不思議でないような、狭い場所で餌に抗生剤さえ混ぜる競争原理最優先の大量生産飼育であり、熱帯雨林奥地までの開発であり、国連の地球温暖化非常事態宣言すら無視する絶えざる成長を求める世界である。
今回のコロナパンデミックは、最悪の場合メルケル首相の述べたようにドイツ国民の60%から70%の感染し、さらには世界の60%から70%の人が感染したとしても、殆どの人が免疫を持つことからいずれ終息するだろう。
もっとも残念なことではあるが、早期に国民に自粛を求め万全な医療体制を備えたドイツでさえ、感染者の増大数遷移から見ても最悪のシナリオに向かっているように思える。
すなわちメルケルの国民への要請演説をした3月11日のドイツの感染者数は1296人であったが、18日9360人、23日2万4873人、26日3万7323人と増え続けている。
もっとも医療体制が備わっていることから、26日朝発表の3万7323人の感染者のなかで、死者は206人と著しく少ない。
しかしこのドイツの感染増大からも、日本も爆発的に拡大する公算は非常に強く、亡くなる人を最小限にするためにも、国民の命を最優先して備えなければならない。

(注1)ジョン・ホプキンスセンターのコロナパンデミックの速報
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6