(409)ドイツ最新ニュースに学ぶ(2)・何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(2)陰謀論の目的(ZDFズーム『コロナ神話の力・民主主義の危機(2)』)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(2)

1)ZDFスペシャル(議事堂襲撃でのトランプ総括)

1月7日

前回載せたZDFheuteニュース「トランプ支持者の国会議事堂襲撃」で見るように、最早トランプをアメリカ大統領として扱うのではなく、ドナルド・トランプを扇動者として捉え、同日放送したZDFスペシャル「民主主義は危いか?・アメリカの混沌と暴力」では、トランプが大統領に就任した時から現在の襲撃扇動の4年間を厳しく総括していた。

それはトランプが就任以来民主主義を否定し続け、批判的メディアのニュースを絶えずフェイク(嘘)と攻撃して来たからであり、ドイツの採る姿勢と相反することから、議事堂襲撃事件を契機に、これまで堪えて来た批判が噴出したように思える。

すなわちドイツの採る姿勢とは、ナチズムを真摯に反省し、ホロコーストとはなかったというような陰謀論を法で処罰するだけでなく、極右や極左の政党を禁止する戦う民主主義に他ならない。

しかしそのようなドイツでも、下に連載する『コロナ神話の力・民主主義の危機』が描くように、絶えず法を掻い潜り、陰謀論が拡散されているのが現状であり、その背後には、格差の肥大、コロナ感染症危機、気候変動危機などで、世界を分断する陰謀論が見えて来る。

 

2)ZDFheuteニュース「健康と動物福祉のビーガン」

1月12日

このニュースを敢えて載せたのは、動物の肉さえ食しない菜食主義ビーガンを推めたいたいと思うからではない。

もっとも穀物10キロを飼育動物に食べさせて、1キロの肉にするやり方は将来的に通用しなくなることも確かであり、菜食中心の食生活は健康にも良いことは確かである。

私自身2007年からの4年間のベルリン暮らしで驚いたのは、多種類のヴルスト(ソーセージ)やお肉、さらにはビールやワインの美味しさと安さであり、毎日食材を買ってブラーテン料理を調理し、ビールやワインで食することが楽しみであった。

しかしそのような美食生活は長く続かず、徐々に夜中に口が乾き、不眠に悩まされることが多くなり、度々胸が苦しくなっていた。

私の家系は糖尿と狭心症であることを思い出し、検査してもらったところ血糖値が高く、コレステロール値も異常に高くなっており、このような食生活をしていたら先は短く、不自由な生活を強いられると悟った。

だからと言って直ぐに菜食主義に変わったわけではないが、食生活を守るために、ベルリンでの後半の暮らしは、菜食中心にアルコールも殆ど飲まなくなって行った(それが現在まで継続され、今では健康を取り戻すだけでなく、自信も持てるようになって来ている)。

そのように食生活が変化すると、ドイツでは菜食主義ビーガン運動が盛んであり、自らの健康と動物福祉のために菜食主義で暮らしている市民も少なくないことが見えて来た。

また世界で最も広く充実したベルリン・ティアハイムなどを探索することで、ドイツ人が単に愛玩動物だけでなく飼育動物に対しても、動物の生きる権利を尊重しようとしているかを知った。

そして今、コウモリ由来のコロナウイルスが、そして鳥には鳥インフルエンザが猛威を振るう中で、動物福祉の問題は避けて通れない事項となって来ているように思う

特に日本では飼育動物に対して動物福祉という配慮がなく、生産者は価格競争のなかで狭いケージ飼い量産化が益々肥大化しており、それが新しい年になっても連日報道される吉川元農水大臣収賄事件の原因である。

すなわちその原因は、数年前から国際機関から動物福祉を求める力が強まり、国際機関の要請でE Uのような飼育動物にも厳しい動物福祉の基準が作成されれば、鶏卵生産業者には死活問題であるからだ。

しかも昨年11月より鳥インフルエンザが全国15の県36か所で爆発的に急増し、1月17日のNHKウェーブニュースでは速報値で総計580万羽が殺処分されたと報道されていた。

確かにドイツでも鳥インフルエンザが同時期に発生しているが、飼育動物の苦痛やストレスをかけないことが厳しく求められるため、日本のようにケージ飼い大量生産の飼育工場でなく、平場飼いが主流になってきていることから、一農場あたり数千羽の飼育で、感染での殺処分数も圧倒的に少ない。

ポストコロナの時代は、現在のような環境だけでなく動物福祉を無視するようなやり方は最早通用しなくなるだろう。

それは生産者にとって、地域で動物福祉に配慮して平場飼いで小規模して行くことは厳しいことであっても、本来の動物飼育の楽しさを取り戻すことではないだろうか。

また消費者も伸び伸びと健全に育つ肉や卵を食することは、コストは高くなるとしても、安心で自らの健康にも良いと確信する。

しかし日本では平場飼い卵が3倍価格もするなかでは、消費者も生活にゆとりがなく、動物福祉を配慮するやり方を実現することは難しい。

その実現するためには、このブログで再三述べているベーシックインカム導入といった格差縮小を突破口として、動物福祉や温暖化問題に取組んで行かなくてはならないだろう。

 

何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?

(2)陰謀論の目的

現在のコロナ禍で一寸先は見えないことから、誰もがこの先を不安に思い、最初は行政に期待するが、決して上手く行かない。

それ故に誰もが納得の行く説明を求める所に、陰謀論が蔓延る土壌があるように思える。

ドイツても最初のコロナ感染第一波が押し寄せた頃は、メルケルの毅然とした国民への行動制限要請が高く評価され、メルケルは大量難民受入れで失った信頼を失っただけでなく、世論調査では90%を超える支持と信頼を回復した。

しかし経済界の圧力もあって行動制限が早期に解かれたこともあって、コロナ感染は克服されない中で、上のフィルムでみるようにコロナ陰謀論なり、Qアノン陰謀論が拡散されて行ったことも事実である。

コロナ陰謀論とは、世界のコロナ対策を執るWHOに多額に財源を提供するビル・ゲイツが、WHOを支配し、政治家や学者を操り、世界人口を減らすためにワクチン接種を強制し、その際マイクロチップを埋め込み、5G利用で世界を支配するというものである。

これらの陰謀論を拡散しているのが極右グルプなどが関与する「Qアノン」グループであり、このQアノンはトランプ大統領誕生の求心力とも言われ、バラク・オバマヒラリー・クリントン、そして民主党議員の多くが、アメリカを小児性愛者で組織される「深層国家」(独裁国家)に変えるようとしていると、絶えず訴えているのである。

そしてドイツでのQアノン陰謀論者は、フイルムにも出て来るケン・ジェブセンであり、反ユダヤ主義者であり、ユーチューブを通してコロナ感染の敵はビル・ゲイツであり、その手先となっている学者がウイルス学者ドロスデン(メルケルの下でコロナ対策指導)であり、政治家のスパーン保険大臣であると敵の像を作り上げている。

そしてこれらの陰謀論から見えて来るのは、Qアノングループがトランプの背後で「バイデンは中国の手先」から「国会議事堂襲撃」に至るまで、トランプの求心力であったことから、見えて来るのは明らかであろう。

それはナチズムの如き独裁国家ぐ再来を目指すものであり、彼らこそが大衆が望むわかり易い陰謀論を利用して、独裁国家、さらには世界支配を企んでいると言えるだろう。

しかしその背景には、自国利益第一主義を求める絶えざる成長を求めるグローバル資本主義の行き詰まりがあり、民主主義の危機があることも確かである。

参照資料

フランクフルト紙オンライン「ビル・ゲイツとコロナウィルスに対する陰謀論・政治の背後に何があるか?」

Verschwörungstheorie zu Bill Gates und dem Coronavirus: Was steckt dahinter? | Politik (fr.de)