(411)ドイツ最新ニュースに学ぶ(4)・何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(4)陰謀論とAfDの末路?(ZDFズーム『コロナ神話の力・民主主義の危機(4)』)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(4)

 

1)AfDの党大会・基本法はAfDを裁くのか

(ZDFheute2月7日)

AfDは2014年EU懐疑主義ナショナリズムを掲げて誕生し、2017年の連邦選挙では12、6%という一気に高い支持を得て、連邦議会に94名の議員を送りこんだ。

しかし難民排斥などで絶えず極右的過激な行動が問題を起こし、コロナ禍の2020年には下の陰謀論で見るように益々過激化し、市民やAfD政党以外の政治家から基本法で裁くことが高まっていた。

このZDFニュースでも、1月末には既に憲法擁護庁の監視が始まっていると報道しており、今回の報道からも、AfDが基本法で裁かれる公算が高まったと言えるだろう。

このように憲法擁護庁が動き出したのは、下の陰謀論とAfDの関係を見れば一目瞭然である。

 

2)民主主義女神スーチー拘束に冷ややかなドイツメディア(ZDFheute2月1日)

日本の公共放送NHKミャンマー政変 民主化を後退させるな」(時論公論)から読売新聞「ミャンマー政変 国際連携で平和解決を促せ」に至るまで、ミャンマーの政変クーデターに強い抗議を示している。

これに対してドイツのメディアは、このZDFheuteで見るようにクーデターとして報道し、嘗ての世界の自由のイコン(聖画像)の抗議の訴えを伝えているが、敢えて主張はせず、冷やかさを感じずにはいられなかった。

その理由は、事実上ミャンマーを統率するアウン・サン・スー・チーが、軍のロヒンギャ大量虐殺やイスラム教徒少数派への弾圧への国際世論の抗議を無視するだけでなく、2019年ハーグ国際法廷の大量虐殺事申立に対して、大量虐殺はなかったと却下し、「武装反政府勢力から国を守っただけである」と述べ、ドイツでは少数民族の権利を守る国際非政府組織「脅迫された人々のための社会(STP)」(本部ドイツゲッチンゲンを通してメディアが詳しく伝えていたからである。

したがってシュピーゲル誌オンラインの「ミャンマーの軍事クーデター」の記事では(注1)、このよう事態を招いたのはこの10年間約束していた民主改革も殆どせず、彼女の政治スタイルも独裁的スタイルになっていたからだと述べていた。

またベルリナー・モルゲンポストは(注2)、「軍事独裁政権の復活」と伝えていたが、かつての民主主義のイコンには批判的で、彼女に失望した多くの民主主義者の意見として、「彼女は軍隊や大量虐殺の従順な道具となり果てていた」と述べ、彼女の政府は益々独裁的になり、表現の自由報道の自由が制限するようになって来ていたと述べていた。

報道では国連事務総長が、国際協調で確実にクーデターを終わらせると明言しているが、ヨーロッパの国々は冷めており、中国が鍵を握っていることから協調さえ難しい構図が見えて来ている。

(注1)

Putsch in Myanmar: Aung San Suu Kyi festgenommen - DER SPIEGEL

(注2)

Putsch in Myanmar: Comeback einer Militärdiktatur - Berliner Morgenpost

 

3)ドイツの雇用と障害者(ZDFheute1月29日)

日本人がこの放送見れば、失業率は倍近くあり、2020年の1月に較べて失業者が50万人近く増えており、1日のコロナ感染者数も数倍近いことから、日本以上に暮らしへの不安が拡がっているように感じられる。

しかし実際は、そのようなイメージとは全く異なるものである。

昨年初めドイツにコロナ感染が拡がるや否や、メルケル首相はドイツに暮らす全ての人を救うと誓い、経済対策支援金7500憶ユーロ(約90兆円)を計上し、影響を受ける企業だけではなく、商店経営者から芸術家などの自由業の人たちに至るまで手厚い支援がなされ、約束通り誰一人見捨てない支援がなされて来た。

具体的には、ベルリンに暮らす自由業の人であれば、暮らしに困窮しているという申請書を出すだけで、審査なしに2日後に5000ユーロが個人銀行口座に振り込まれ、市民の満足度kも著しく高いことが、このZDFheuteでも報道されていた。

日本では職を失うことで暮らしに困窮しても、自動車の保有さえ認めないと言う具合に生活保護の審査基準は高く、審査期間も長く、緊急的支援は期待できない。

しかしドイツでは暮らしに困窮すれば、申請するだけで審査なしに、少なくとも生活給付金が6カ月支給されることから、正規にドイツに暮らすものであれば、たとえコロナ禍での失職で収入が絶たれても、行動自由への制限不満は頻繁に報道から聞かれても、暮らしの困窮不満は報道から殆ど聞かれない。

そのように現在のドイツのソーシャルセーフティーネットは充実していることから、失業者も自分に合った職を探すことから、日本に較べて失業率が高いのであって、寧ろ豊かさを示すものとさえ見える(もっとも2000年初めに成立したハルツ労働法前は、専門の職が見つかるまで給付が期待できる時代から見れば、その豊かさは大きく後退したと言えるだろうが)。

でこの放送ではコロナ禍でドイツの雇用も大きな影響を受けており、障害者行動協会の代表は、障害者がこれまで健常者と同じように働けるよう積み重ねて来た努力が5年前に戻ったことを嘆いている。

また障害者が新たな職場を見つけるには、健常者の場合より100日程長くかかることを訴えている。

しかしそれは、障害者のノーマライゼーションを着実に進めて来たドイツだから言えることであって、障害者が100日も長く自分に合った職を探せることは、逆に豊かさだとさえ思える。

 

陰謀論とAfDの末路?(ZDFズーム『コロナ神話の力・民主主義の危機(4)』)

今回のフィルムは陰謀論とAfDの関係テーマであり、陰謀論とAfD過激派の引き起す事件がコロナ禍のドイツで絶え間なく拡がっているからである。

そうした現状に、戦う民主主義を掲げる民主主義を掲げるドイツのメディアも絶えず戦っている。

昨年12月12日には、「日刊シュピーゲル」が「AfD支持者拠点とコロナ感染者数のタイトルで、イエナ民主市民社会研究所(IDZ)の研究報告を載せている(注1)。

すなわち2017年連邦議会選挙のAfD得票数とその地区のコロナ感染者数が、高い相関関係にあることを、相関地図及び相関グラフで分析していた。

例えば地図からは、ザクセン州バウツヱン地区ではAfD得票数32,5%、感染者数2714人(10月1日以降の住民10万人当)であるが、隣のニーダーザクセン州のゲッチンゲン地区では得票数8.1%、感染者423人という具合である。

またこの研究報告に呼応するかのように、12月20日のフランクフルト紙は、コンラート・アデナウアー財団の依頼調査として、AfD支持者の大半がコロナ感染を陰謀説として信じていない分析結果を載せている(注2)。

このような有無を言わせないドイツメディアのAfD包囲網がドイツ市民の基本法裁きを求める声を高め、ZDF報道で見る憲法擁護庁を動かしたと言っても過言ではない。

おそらくAfDは政党解散などと言った厳しい措置が出されるであろうが、それで解決されるわけではない。

AfDの支持者には貧困層の極右、極左支持者が多く、格差の問題に本質的に取組まない限り、陰謀論が極右、極左を巻き込むネオナチ的現象はなくならないであろう。

(注3)

Hängen AfD-Hochburgen und hohe Coronazahlen zusammen? | Tagesspiegel

(注4)

F.A.S. exklusiv: Deutliche Mehrheit der AfD-Anhänger glaubt an Corona-Verschwörung (faz.net)