(425)ドイツ最新ニュースから学ぶ(18)タックスヘイブンの克服・定常化するトルコの独裁

タックスヘイブンの克服 ZDFheute7月10日

 

社会民主党のオラフ・ショルツ(第4次メルケル内閣で2018年3月以来連邦財務大臣)は、100年前にできた国際課税ルールが変わる“歴史的瞬間だ”と歓喜する。

もっともドイツ公共第一放送では、シュルツの見解は楽観的だという専門家も多く、世界経済研究所所長ガブリエル教授も「利益の定義自体が難しい」と述べている。

もっとも乗り越えないとならない障害はまだあるとしても、これまで巨大ĪT企業のように拠点がない企業に法人税が徴収され、タックスヘイブンによる課税逃れができなくなるのは確かである。

連邦財務省が報道するイタリア新聞「ラ・レプリカ」の財務大臣ショルツのインタビューでは、「私は何年もの間、交渉成果のために取り組んできました。これは、より国際的な税務司法に向けた歴史的かつ前例のない一歩です。そして、多国間主義と国際協力の強い兆候は、我々の税制への信頼を強化します Für dieses Verhandlungsergebnis habe ich mich über Jahre eingesetzt. Das ist ein historischer und beispielloser Schritt zu mehr internationaler Steuergerechtigkeit. Und ein starkes Zeichen für Multilateralismus und internationale Zusammenarbeit, die das Vertrauen in unsere Steuersysteme stärkt.」と自信を覗かせている。

https://www.bundesfinanzministerium.de/Content/DE/Interviews/2021/2021-07-08-la-repubblica.html

 さらに欧州連合EU経済の持続的回復を生み出す手段として、排出量取引税や金融取引税などの導入で財源の確保を強調している。

確かにコロナパンデミック猛威という禍を契機として、タックスヘイブンの克服がOECD加盟諸国131カ国の合意やG20の合意で実現する段階まで漕ぎつけたことは確かである。

それは電気や水から教育や医療に至る公共財まで、すべての民営化で市場競争に委ねる新自由主義経済に、公平で公正な規範を築く第一歩である。

そのように“禍を転じて福と為す”の諺に従えば、未來に待ち構えている気候変動激化による洪水災害や食料危機も、より公平で、より公正な社会を創り出すための試練とも言えるだろう。

 

定常化するトルコの独裁(クーデター鎮圧5周年記念日)ZDFheute7月15日

 

2016年7月15日夜、トルコで起きたクーデター未遂事件に対して、ドイツメディアは総じてドイツジャーナリストが逮捕されたこともあって、エルドアン大統領独裁に批判的であった。

エルドアンの右派公正発展党(AKP)が2007年に政権を取って以来、エルドアン政権はメディアを統制し、法の支配を形骸化させ、非暴力の抗議を容赦なく弾圧してきたからである。

事実ドイツ語版のウキペディアでは、エルドアンの支配は、権威主義、拡大主義、検閲、反対意見の政党禁止であると指摘している。

このクーデター未遂では、8000人に及ぶ軍関係者だけでなく、何万人もの学者、政治家、公務員などが逮捕拘留された。

しかもクーデターを阻止したのは、エルドアン支持の市民がクーデター派の戦車の進行を止めたことにあり、トルコ市民がクーデターを阻止したと言っても過言でない。

市民が民主主義政権より民族主義独裁政権を望む理由は、東欧の独裁化でも同じである。

すなわちグローバル資本主義が進展するなかでは多くの市民が貧困者へと没落し、新自由主義経済を容認する民主主義に期待しても無駄であり、市民の多くは公正さを求めて、国家主義社会主義(ナチズム)ごとき政策を唱える政権に絡め捕られて行くからである。

しかもそのような政権は、メディア支配と法支配で独裁体制を築くことから、益々独裁化が強められ、何時まで経っても変わらないのである。

そのような独裁体制を変えていくためには、現在の弱肉強食の競争を容認するグローバル資本主義経済を変えて行くしかない。

すなわち競争による強者の自由な経済ではなく、弱者に配慮した規範ある経済であり、経済の民主化である。

それはタックスヘイブンの克服、炭素取引税や金融取引税の導入で課税を公平、公正なものとするだけでなく、弱国の地域に暮らす人々の経済が壊されないように、例えばハンディキャップを設けるような仕組が必要である。