(448)民主主義は世界を救えるか(8)土地投機と戦う人たち(3)・ 為替相場がなくなる日(3)

土地投機と戦う人たち(3)

 

 最終回のフィルムは、ビオボーデン協同組合の支える共同体が生産した有機農産物を使って、学校や保育園などの昼食を受持ち、地域に雇用を生み出していることから始まる。

そのようなビオボーデン協同組合は、生態系に配慮して農耕する人たちを支えることで地域を蘇らしているだけでなく、具体的に自然保護に貢献していることが語られる。

 バルト海を望む人の住まない孤島リーター・ヴェルダーでは、牛を除いて島への立ち入りが禁止されており、共同体が放牧する牛が生い茂る草を食べることで草原が創られ、そこに希少な渡り鳥が繁殖している実態が描かれている。

 次にフイルムは、最初に描かれたフランスのピレネー山脈の麓で有機農業を開始した若者夫婦のその後の暮らしを描いている。

そこでは、地域で誰も栽培していない作物栽培に挑戦することで、周りの農民と競争するのではなく良き隣人として付合い、互いに助け合って暮らしたいという彼らの生き方の信条が吐露されている。

 最後に、最初に牛を移動させていたラーケンホフ農場共同体が順調に動き出し、進展している様子を、ファイルは描き出している。

またそれを見届けたビオボーデン協同組合代表のウベ・グラフは、「私たちがここを形づくるのではなく、人々がここを形づくるのです」と、連帯経済の融資銀行(マイクロクレジット)とも言うべきビオボーデン協同組合の使命を語っている。

そしてフイルムは、土地が公平に分配される「万人の大地」であることが、現在の危機を乗り越えることに不可欠であると示唆して終わっている。

 見終わった私には、現在の絶えず成長を求める経済が地域から農民を追い出している現状を踏まえて、生態系に配慮した農業、相互扶助で楽しい農業、そのような連帯農業に変えて行かなくては、もう未来はないと言っているように聞こえた。

 事実現在の文明は、絶えず成長発展するために大地、水、空気など、すべて売り物とするまでに達している。確かに空気はまだ直接は売られていないが、大気汚染、気候変動激化を考えれば、産業に売られていると言えるだろう。

そのように万人の大地、水、空気を売り物にするまでに達した文明は滅びるしかないだろう。

 人類が生き延びるためには、現在の競争経済がつくる文明を、すべての人が相互扶助で喜びを分かち合える連帯経済がつくる文明に変えて行くしかないだろう。

 

為替相場がなくなる日(3)

 

 前回は2030年に国連に集う非政府組織が危機を解消するために、新たな国連地域連合創設を宣言し、数年後に5000ほどの世界の地域政府が集うもう一つの国連が発足することを述べた。

 その創設は世界が大きく変わり始める転換点であり、それらの地域政府は新たな国連指導の下であらゆる禍を回避できるよう、地域内での自給自足できる自助経済を創り出すために一丸となって取組むであろう。

具体的には、他の地域から運ばれて来る全ての商品に地域の自主決定権により関税をかけ、長期的視点の10年計画、もしくは20年計画で自助経済を実現しよう。

その関税は地域内のほぼ完全な自給自足を目標とすることから地産地消税税と呼ばれ得るものであり、農産物や食料品などの生活必需品に対しては最初10%から始めるとしても、毎年10%づつ増えて行き、10年で外から運ばれてくる商品には100%の課税がなされることから、自ずと外から運ばれてくる生活必需品は殆どなくなる筈である。

また必ずしも生活に必要でない商品については、緊急性が低いことから5%から始めて行けば20年で外から運ばれてくる商品もなくなるだろう。

 

 何故そのように徹底した地域内の自助経済を目標としなければならないかは、第一に絶えず成長を求める資本主義が限界に達しており、地域が他の地域や国に依存していては益々貧困化が進むだけでなく、日常化する感染症や食料危機に対処できないからだ。

 第二にすべての地域に降り注ぐ太陽は平等であり、それを地域で利用する太陽光発電風力発電バイオマス発電などの分散技術は完成されており、2000年の始め貧しかったきた北ドイツの農村でもそれを利用して10年で地域内で消費される電力の7倍近くを製造しており、最早地域内でのエネルギー自立は何処であろうと可能であるからだ。

 第三に貿易に潜む搾取性であり、相互扶助を目標とする商品のやり取りが競争激化によって強者が弱者を経済支配し、その構図が限界に達して、シリア戦争や現在のウクライナ戦争で見るように世界各地で紛争を起しているからだ。

 

 世界のすべての地域で自助経済が実現すれば、将来頻発する感染症や食料危機に対処できるだけでなく、最早商品のやり取りを必要とせず、人類は相互扶助で連帯できることから、永遠の世界平和も決して夢ではない。

 もっとも現在の化石燃料産業でグローバル資本主義を支配する側は、そのような自助経済文明への移行転換が人類が生き延びるために必要不可欠であったとしても、そのような移行転換に対してあらゆる手段で妨害しよう。

すなわち国連のもう一つの新たな国連、地域政府連合創設宣言に対して、世界の御用学者を総動員して、50年を要したタバコの発がん性や現在の気候変動懐疑論に見られるように、「そのような転換は恐ろしく危険であり、人類のこれまで築き上げてきた冨を皆無にするものだ」と激しく批判しよう。

特に民主主義が表層的な日本では、「そのような自助経済への転換は歴史を過去に戻すことであり、人類の幸せはあくまでも成長発展にあり、それを破壊することだ」と激しく批判され、そのような転換を求める人たちは非国民扱いされ、国連の求める地域の自己決定権を問う国民選挙など、最初は問題外と無視されるだろう。