(451)民主主義は世界を救えるか(11)ZDFが警鐘する核戦争への高まり(3)・為替相場がなくなる日(未来シナリオ6)

ZDFが警鐘する核戦争への高まり(3)

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ZDFが警鐘する核戦争危機3 パスワードneko3821

 今回の最終フィルムは、ドイツがこれまで国内生産の1%ほどの年間軍事費を、2%に増加しようとしている有様から始まる。それが実現すれば、ドイツの年間軍事費は750憶ユーロとなり、ロシアの560憶ユーロを抜いて世界第3位の軍事大国になるという。

しかも驚くことに、現在のNATO諸国の軍事費の総計は3000憶ユーロを超えており、米国の1068憶ユーロを合わせるとロシアに較べ圧倒的に多く、さらに増強しようとしているのである。

それは、ロシアの無法な力による侵攻を利用して、これまで縮減が求められてきた欧州諸国の軍備が大きく増大する転機となっているとも言えるだろう。

それゆえフィルムでは、新しい武装へのスパイラルを高価で危険であると述べ、平和交渉の重要性を述べている。

しかし専門家は「プーチン大統領にある程度の軍事的準備や強さを示すことも、残念ながら必要であると思います」の発言に見るように、軍事強化と同時に交渉を行うことを解決の道であると考えている。

まさにそれは、ウクライナ戦争への現在の欧米の対応を支持するものである。

もっともラストは、「ロシアなしではヨーロッパに平和はない」と主張する連邦議会防衛委員会委員長マリー・アグネス・シュトラック・ジーマーマン女史が、「将来がどうなるにせよ、軍備管理に戻らなければならず、言わばこの競争から抜け出すためには、各国間の条約が再び必要です」と、軍備管理による平和条約を訴え、フイルムも「忘れてはならないことは、武器だけでは平和を確保できない」のナレーションで終わっていた。

それは、この戦争で各地で強さを見せつけることなしには和平交渉が始まらないという専門家たちの見方を否定するものではないとしても、早急の和平交渉を求める声に聞こえた。

何故なら戦争で強さを見せつけて、各地で勝利したところで和平交渉に持ち込むことは独裁国家に容認できないことであり、欧米の軍事費の圧倒的大きさから、いずれウクライナ軍が各地で勝利するようになれば、このフィルムで指摘されているように、局地的核攻撃が為される公算が非常に高いからである。

もしプーチンが局地的核攻撃を為した場合、NATOはそれに対して一体どのように対応するのだろうか? 

おそらく諸国の合意なしには誰も決定できず、絶望的なシナリオが見えてくる。

それ故世界は、現在がロシアにとって有利な状況であるとしても、早急にウクライナ永世中立国とするイスタンブール和平案に戻り、民主主義を標榜する欧米が前面に立って一刻も速く、和平停戦を実現しなくてはならない。

それは現在のロシア軍の消耗から見て、欧米が本気になって和平を望めば可能であり、まず第一歩を踏み、様々な問題を話合いで解決する方向に向けて行くことができれば、すぐに解決は無理としても、これまでのように平和を取り戻すことは可能である。

もっとも本質的には、現在の気候正義や社会正義が問われる世界危機のなかで弱肉強食の競争を強いる経済体制では限界があり、平和を絶えず紙一重で取戻すことができても、もはや気候変動の激化、格差肥大に対処できないところまで達していることを認識し、経済の民主化に取り組まなくてはならないだろう。

 

 為替相場がなくなる日(未来シナリ6)

国連地域政府連合憲章(3-1)

 

 2036年に設立された国連地域政府連合の憲章は、1945年に設立された国際連合の憲章に倣って、次のような目的を表明する前文から始まる。

「われら地域政府連合の市民は気候変動激化と貧困拡大で人類生存の危機に立っており、国民国家の世界平和も二つの分断によって人類絶滅の核戦争と紙一重の危機にあり、限界に達している。それゆえわれらはその原因をつくり出したグローバル資本主義経済の利益追求の競争世界から脱け出し、地域自助経済の利益追求のない連帯する世界創設を求め、地域政府が連合する、誰も見捨てない平等で平和な世界を創り出すことを目的とする。

そのような世界を創り出すことは、一つには、地域がエネルギー自立によって太陽(太陽光発電風力発電バイオマス発電)からの過剰エネルギーを水素として蓄積する分散型技術の発展で物質的に可能であり、また一つには、人工知能とデジタル化の発達によって利益追求のない自助経済社会では、人類は単純作業から解放され、週休4日十数時間労働で新しい生き方をすることも生態学的に可能である。

しかし国民国家の国連の安全保障理事会は、すべての決議に国連憲章第27条規定で常任理事国の米国、ロシア、中国、英国、フランスの同意を必要とし、発足以来常任理事国の300を超える拒否権で実質的に機能不全に陥っていたことを鑑み、そのような世界を創り出すために拒否権のない民主主義の実行力ある決議ができる国際機構を創設する。

その創設のため、われら5000を超える地域政府代表はベルリン市中央の“勝利の女神(戦勝記念塔)”野外広場会場に結集し、この国連地域政府連合憲章に同意し、国連地域政府連合という国際機構を設ける」

 

[国連の安全保証理事会での拒否権行使は、2020年8月までに、ロシア(1991年12月までソ連)116回、米国82回、中国14回、英国29回、フランス16回である。ソ連は少数派であることから拒否権の大部分を1970年以前に行使し、ロシアとなってからは21世紀初頭からシリアやウクライナなどの紛争で再び拒否権を開始している。米国は1970年まで多数派であることから拒否権を行使しなかったが、1970年のローデシア問題、1972年のパレスチナ問題を契機に頻繁に拒否権行使を行使するようになり、その多くはイスラエルを擁護するものであり、最近ではトランプ政権での拒否権行使が目立っている。

尚1945年に創設された国連憲章の前文は、以下のように書かれている。

「われら連合国の人民は、われらの一生のうち二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念を改めて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、国際の平和および安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。よって、われらの各自の政府は、サンフランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。」](ウイキペディア参照)