(452)民主主義は世界を救えるか(12)『世界は民主主義を救えるか?それとも 民主主義は世界を救えるか?4-1』・為替相場がなくなる日(未来シナリオ7)

『世界は民主主義を救えるか?それとも民主主義は世界を救えるか?4-1』

 

今年2月28日に放送されたZDF対談「プレヒト」の『世界は民主主義を救えるか?それとも民主主義は世界を救えるか?』では、現在の世界の本質的問題を抉り出し、民主主義は世界を救えるか?」と問い正している。

この対談収録は、ウクライナ戦争が議論されていないことから、2月24日のロシア侵攻前と思われるが、寧ろ民主主義をじっくり考える意味では相応しいと思い載せることにした。

リヒャルト・ディヴィツト・プレヒトはリュネブルク大学哲学名誉教授であり、彼の著作した現在を告発する多くの本がベストセラーになっており、2012年以来年6回のZDFの対談「ブレヒト」で、現在及び将来の問題に光を当てている。

今回のゲストであるロジャー・デ・ヴェックは、スイスの広報担当者であり、以前ハンブルクで「ディ・ツァイト」の編集長も務めており、最近の著書『民主主義の力・権威主義反動派への回答』はドイツで話題となっている。

今回の議論でヴェックは、「貧困と裕福、有色人種と白人、女性と男性、自然と人間、国家と経済の5つの不均衡が世界にあるが、コロナパンデミックにおいても民主主義はその不均衡を埋め合わせており、ゆっくりではあるが止められない進歩をしている」とポジティブに語っている。

 

 為替相場がなくなる日(未来シナリオ7)

国連地域政府連合憲章(3-2)

 

第一章目的

人類が生存の危機に瀕するなかで、絶えず成長を求め、利益追求のグローバル資本主義ではどの様に努力しても、努力自体が益々危機を推し進めるという判断から、資本主義の克服を目標に掲げている。

それ故国連地域政府連合の目的は、世界のどの地域も地域内で自給自足する自助経済実現を目的とし、市民にとって他力本願の競争世界から自力本願の連帯世界へ移行させることによって、気候正義と社会正義が履行されるだけでなく、永久に戦争と貧困のない世界を実現する。

 

第二章規約

これまでの国際連合の原則ではあくまで原則であることから、第一章の目的とする世界構築は永久に不可能であることから、原則を規約とし、規約第一条から第五条までを目的達成と維持のための普遍規約とし、第六条から第二五条までの人間の尊厳や人権などの基本原理を多数決では決議できない不可侵の規約とする。

 

第一条(自助経済実現と維持)

国連地域政府連合に加盟するすべての地域政府は、地域外から入るすべての商品に地産地消税をかけ、農作物や生活必需品には10%の課税から開始し、10年で100%課税にすることで地域での自給自足を成し遂げる。

またその他の商品には10%の課税から開始し、20年で200%課税にすることで地域での自給生産を成し遂げる。

 

第二条(エコロジー税制改革)

地球の汚染は温室効果ガス排出の増大だけでなく、「沈黙の春」以降も農薬や化学物質がまき散らされており、大地や水、そして大気の汚染は限界を超えており、いずれすべての市民にシックハウス症候群の発症が見られようになるだけでなく、その害毒によって生存を脅かすのは時間の問題にさえなっている。

それ故地域内の環境に望ましくない、化石燃料原発、大規模水力発電、農薬及び化学肥料、大地に還元されないプラスチック製品などにエコロジー税制を導入し(注1)、毎年10%引き上げて行くことで、地域内から環境に負荷を与える要素を徹底してなくして行く。

 

第三条(地域の徹底したエコロジー化)

地域は自然エネルギーでエネルギー自立するだけでなく、余剰エネルギーを水の電解で水素として蓄えることで、富の蓄積の必要のない社会を創り出し、エコロジー税制を通して地域の農業を10年で有機農業に転換することを目標とする。

そのため地域に暮らす市民は、自ら食する野菜から穀物まで有機栽培することを早朝の日課とし、地域のエコロジーな自給自足を推進するだけでなく、薬に頼らない健康を維持する。

また地域では森林を育成し、林業を生業として取戻すだけでなく、大地に還元できない石油化学製品を大地に還元できる植物化学製品(注2)に10年で転換していくことを目標とする。

 

第四条(強いられる労働からの解放とベーシックインカム導入)

現存する職業の85%がお金儲けに関与するブルシットジョブと言われ、15%のエッセンシャルジョブさえオートメーション化、ロボット化に加えて人工知能化とデジタル化かで殆どが軽減され、嘗てケインズが予言した週十数時間の労働で十分足りる段階に達している。

しかしそれらの技術は、利益追求の社会ではコストカットを求めることで、低賃金と長時間労働を強いるだけでなく、人間を機械に隷属させている。国連地域政府連合の社会では、地域内のすべての企業が利益追求のない人への奉仕を掲げる様々な形態の協同組合に10年で転換されて行くことから、それらの技術は強いられる労働から解放する。

そこでは将来的に、冨が絶えず水素として蓄積される豊かな社会になって行くことから、ベーシックインカム導入ですべての人の基本的暮らしを保証している。

 

第五条(グローバル資本支配の克服)

すべての地域政府は地域でのみ使用可能な地域通貨を発行し、初年度は流通割合を10%とし、毎年10%づつ増やして行くことで、基本的自助経済が達成される10年後には100%流通を目指す。但し10年後の地域市民の地域通貨と地域政府の保持する国民国家通貨の交換は、地方政府が所持する国民国家通貨で年間所得の10%以内とする。(この段階では生活必需品以外はまだグローバル資本支配から完全に抜出していないが、最早国民国家為替相場に殆ど影響されないことから、大局的に見れば地域政府のグローバル資本支配の克服が為されたと言えるだろう)。

 

(注1)このエコロジー税制改革は、80年代末に環境政策研究者ワイツゼッカーによって提唱された「現在の税制は労働課税が高すぎ、環境および天然資源への課税が安すぎる」という理論に基づいている。

具体的には環境に望ましくない全ての要素(化石燃料原子力エネルギー、大規模水力発電、水、市販肥料、建設目的の土地利用、金属や原料、有毒化合物など)に環境税を導入し、毎年価格を少しづつ引き上げることで、エコロジー社会を実現すると同時に、不足する年金などの社会保障費を補うだけでなく、引き下げることを約束していた。

 

(注2)現在世界で年間に消費される化石燃料は80億トン弱(石油35億トン、天然ガス20億トン、石炭25億トン)であり、太陽光の光合成によって生産される植物(食物を含む)や木材の年間2200億トンに較べて驚くほど少ない。

そして現在消費されている化石燃料をすべて太陽光で賄うには、1200万平方キロメートルの森林もしくは原野が必要であり、現在の世界の森林4000万平方キロメートルもあり、さらに殆ど利用されていない乾燥地は4900万平方キロメートルもあることから、その一部を使用すれば十分可能である。

何故なら植物化学原料(干草で1ヘクタール当たり12トンから18トン、麻で10トンから12トン、ススキで30トン以上、ユウカリで35トンから40トン)の栽培生産は、そのような悪条件の乾燥地でも十分可能であるからだ。

ドイツのエコロジー第一人者のヘルマン・シェーアによれば、植物化学原料の生産は石油化学原料の生産より4倍近い人手を要する。しかし人手を要することは、雇用の観点からすれば理想的であり、まさに誰もが能力に応じて栽培生産から土中への廃棄還元に至る工程に関与でき、失業のない社会を創出することも可能であると述べている。