(454)民主主義は世界を救えるか(14)エコロジー転換・何故今、世界の未来シナリオを書くか(2)・為替相場がなくなる日(未来シナリオ8)

エコロジー転換(『民主主義は世界を救えるか?4-3』)

 

 今回の議論では新自由主義の行き過ぎが問題となり、ヴェックは行き過ぎが修正されて行くと見ており、現在の新しい赤、緑、黄の信号機連立政府に対しても希望を託し、社民党(赤)は社会正義の実現、緑の党(緑)はエコロジー転換を推進し、経済の自由民主党(黄)は財源捻出でエコロジー転換を支えるだろうと、プレヒトから見れば余りにも楽天的である。

 エコロジー転換とは、現在の環境負荷によって自然環境を破壊してきた産業社会を環境に負荷を与えない社会に変えることである。

プレヒトは、コロナ感染症危機においても莫大な利益を上げるGAFAの規制にも懐疑的であるが、「民主主義の基本原則、3 つの制度間(立法、行政、司法)の競争、3 つの価値間(自由、平等、友愛)の競争は、私にとって永遠です」主張するヴェックは規制できると信念を持ち、エコロジー転換にも楽天的で、民主主義を推し進める欧州連合にも自然の権利を監視する司法自然権利裁判所が創設されると考えている。

プレヒトは、「誰もがエコロジー風力発電に賛成であるが、自分の家の前の設置に反対である」という例を持ち出して、民主主義とエコロジーは相容れないものがあり、「エコロジー転換は民主主義の基本的な耐久テストであるとさえ考えていますが、手をつないで行けるとは思っていません」と、ヴェックの楽観論には懐疑的である。

私自身も、ヴェックの主張する現在の新自由主義の行き過ぎは、欧州連合のデジタルマーケット法やデジタルサービス法のように徐々に規制を強化していけば解決するという考え方には、懐疑的というより否定的である。

それは本質的な解決ではないからであり、規制は免罪符となって新自由主義に呑み込まれて行くからであり、以下を読んでもらえば何処に問題があるかが理解できるだろう。

 

何故今、世界の未来シナリオを書くか(2)

 前回述べたように既にドイツにおいては分散技術で地域がエネルギー自立を始めており、ホロコーストの重い贖罪を背負い、戦後民主主義を絶えず進化させてきたドイツからは、希望ある世界が見えて来ている。

しかしながら現在の世界は、ウクライナ戦争で世界の分断を深めており、気候正義や社会正義の実現を目標に掲げているが、現実はパリ協定の実現は最早不可能に近く、格差問題は絶望的に拡がっている。

それにもかかわらず、私には本質的な問題へのアプローチが全くされていないように思える。

確かに世界の非政府組織(NGO)が主導する国連は、ローマクラブの「成長の限界」宣言、リオ宣言を経て、本質的な問題解決のための「世界を変える持続的開発目標(SDGs)」を創設し、その担い手は利益を求める企業ではなく、利益を求めない多様な協同組合組織でなければならないとし、社会的連帯経済タスクフォースを設立するなど賢明に努めてきた。

しかし国連総会の国民国家の決議では、担い手として利益追求の民間企業が加えられ、実質的にSDGs多国籍企業の利益追求の手段となっていると言っても過言ではない。

それがまかり通るのは、現在の世界自体が利益追求を目的として動いているからであり、戦争がなくならないのも、気候正義や社会正義が実現しないのも利益追求が最優先されるからである。

人類は狩猟採集から農耕へと移行することで、富の蓄積が始まり、富の蓄積は競争であることから、戦を起こし、格差を拡げ、現在においては地球という惑星が将来住めなくなるほど自然環境を破壊してきた。

その原因は利益追求がグロバル自由貿易によって肥大してきたからであり、その本質を変えない限り、私には地球の未来はないように思える。

 

 

為替相場がなくなる日(未来シナリオ8)

 

国連地域政府連合憲章(3)

 

(第二章の規約の続きから)

 

第六条 (基本権利の不可侵)

 

国民の以下の基本権利は、多数決議決できない不可侵の権利である。(注1)

 

第1項 人間の尊厳、基本権による国家権力の拘束 第2項 人格の自由、人身の自由

第3項 法の前の平等         第4項 信仰、良心および告白の自由

第5項 表現の自由          第6項 婚姻、家族、非嫡出子

第7項 学校制度           第8項 集会の自由

第9項 結社の自由          第10項 通信の秘密 

第11項 移動の自由          第12項 職業の自由、強制労働の禁止

第13項 住居の不可侵         第14項 所有権、相続権、公用収用

第15項 社会化            第16項 国籍、外国への引渡、庇護権

第17項 請願権            第18項 基本権の喪失

第19項 基本権の制限         第20項 抵抗権

 

第7条( 補完原理と地域の自己決定権)

 世界の地域政府の規約は、第一条から第六条の不可侵の規約枠組のなかで補完原理を優先し、家庭の問題は家庭で、地方自治体の問題は地方自治体で、地域政府の問題は地域政府での解決を原則とし、地域政府の議会民主主義に委ねられている。すなわちそれは、地域政府の自己決定権を最優先するものである。

但し少数意見の尊重を目標とし、法案の議決には三分の二以上の賛成を必要とし、絶えず多数政党は少数派政党との合意交渉を欠かさず、少数政党も合意形成に前向きでなくてはならない。

 

第二章 機関

 国連地域政府連合の主要機関として、地域政府総会、世界救済戦略会議、世界司法裁判所及び事務局を設ける。

 

第8条(戦略的一つの自助経済世界構築)

 現在の世界は、大都市からなるグローバル資本主義経済からなる世界と二つに分かれており、一つの世界構築によってのみ救済される。従って世界救済戦略会議は国連地域政府連合を統括するだけでなく、一つの世界になるようにあらゆる手段を駆使して戦略的救済に努める。

世界救済戦略会議は、世界を救う1972年ローマクラブの「成長の限界」宣言から、世界を変える持続的開発目標(SDGs)の担い手として発足した社会的連帯経済タスクフォースの流れを受けて、世界の非政府組織(NGO)からなり、構成員は民主的に選出される。

5000人を超える地域政府代表が集う総会は、世界が一つになるまでは世界戦略会議の決定及び構成員の承認をするものであり、一割以上の反対がある場合は承認されず、少数意見を尊重して承認が得られるよう善処しなければいけない。

 

第9条(救済戦略の方法)

 一つの世界を創るための戦略とは、すべてにおいて救済であり、グローバル資本主義の大都市からなる国民国家が洪水危機、食料危機、感染症危機などの危機を踏台として利益追求をするのに対し、危機に救済の手を差し伸べることで拡大を図り、究極的に一つの世界を創り出す。(尚世界救済戦略会議は、現在の気候正義が達成されない世界では、何れ食料危機によって世界規模のハイパーインフレがドミノ倒しに国民国家を襲い、国民国家の通貨が紙切れとなり、為替相場が破綻すると見ている。その際危機に瀕するもう一つの世界を救うことで、必然的に一つの自助経済の世界は創り出せると考えている)。

 

(注1)ドイツ基本法の20項目からなる不可侵の基本原理は、人間社会に絶対的に必要であることから国連地域政府連合の憲章でも採用されている。尚ドイツ基本法の和訳は中川恒雄氏のドイツ連邦共和国基本法の以下の和訳文を参照した。

ドイツ連邦共和国基本法 – Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland (theaterangelus.com)

尚2002年に基本法20条に追加された20条aでは、自然的な生活基盤保護の法案追加が連邦議会、及び連邦参議院で承認され、現在のエコロジー転換の大きな推進力になっている。

第20条a

国は、将来の世代に対する責任からも憲法的秩序の枠内で、立法により、ならびに法律および法に基づく執行権および司法により、自然的な生活基盤および動物を保護する。