(48)検証シリーズ8、新自由主義を葬るためには(TPP阻止はその第一歩)

10月15日の先週の土曜日に、ニューヨーク、ワシントン、ロスアンゼルスなどのアメリカの「99パーセントデモ」に連帯して、ドイツでも全土の50都市で行われ、金融中心都市フランクフルトでは5000人、首都ベルリンでは10000人を超える市民が金融市場の権力、すなわち99パーセントの貧困者を生み出す新自由主義に抗議した。 
(ZDF heute de Politik 15. 10. 2011)
このようなデモは日本の東京、京都を含めて世界で82カ国、900以上の都市で連帯して行われ、世界の大きな潮流となりつつある。
それは、2008年の金融危機以降世界の1パーセントの人たちは益々金持ちとなっているが、残りの99パーセントの人たちは貧困への転落を続けており、益々暮らしが困窮していくからだ。
このような99パーセントの貧困者を生み出す世界にしたのは、例外なき規制撤廃を求める新自由主義に他ならない。
この新自由主義を推し進めている本体は、アメリカ中心の金融産業、原子力を含めた軍需産業、石油産業、食料産業などの巨大資本に他ならない。
例えばモンサント社は、ダイオキシン含有のPCB製造や遺伝子組み換え作物の世界支配で悪評が高いが、2008年の純益は1兆1090億ドル(2010年発表)もあり、1社だけで日本の国家予算を遥かに超えている。
そして豊富な資金力で政治献金を通してオバマ政権だけでなく、世界の殆どの国々の政権をコントロールしている。
このような新自由主義の誕生は、1971年のブレトン・ウッド体制の終焉以来お金が自由に国境を飛び越え、市場に投機されるようになったことに由来している。
すなわち本業の生産業で窮地に陥ったアメリカ巨大資本は、それ以来世界で200回近くの金融危機を意図的に起こすことで、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、東南アジアなどの国々の築いた富を喰い尽し、最近ではギリシャ金融危機などを通してEUの富を喰い尽くそうとしている。
もっとも新自由主義産業の社員、そして新自由主義の司令塔とも言うべきIMF世界銀行の職員がそのようなやり方に反対しても、まるで世界の富を喰い尽すことを至上命令としてインプットされている人工頭脳のように、官僚化した機構を通して遂行されており、現状では変えることが不可能となっている。
それ故世界銀行上級副総裁であったスティグリッツは辞職し、新自由主義との戦いに真向から挑み、「99パーセントデモ」の先頭に立っている。
この新自由主義を葬る手段は「99パーセントデモ」の世界の潮流を大きく拡げていくことで、金融投機税(トービン税)を世界の金融市場に導入することだ。
そうすれば新自由主義の本体は、金融危機を通してお金を喰い尽すことができなくなり、概ね制御可能となるだろう。
しかしそれはあくまでも見かけであり、そのままにすれば豊富な資金力で金融投機税を無力化するためにあらゆる手段で攻撃してくるだろう。
新自由主義を葬るためには、世界分業を加速する中央集中型官僚支配社会から地産地消による地域分散型民主社会に変えていくことが重要である。
そうすれば巨大資本企業はその大きいことが致命的となり、必ずや新自由主義は葬り去られよう。
そして地域の地産地消を実現するための手段として、この数年をかけて私が考え着いたのが、地域に入るあらゆる商品に地産地消税を導入することだった。
しかしそのような考えは、フランスなどの地域危機が深刻なところでは地域関税の復活を求める声があるが、全く聞かれない。
また現在の日本社会が国民の利益(幸せ)よりも産業の利益を優先する社会であることからも、受け入れられなくても当然であろう。
すなわち「日本の農業に未来はあるか」で私が掲げた、二国間FTAに地産地消税を導入することで、自由貿易は180度転換して世界全体を幸せにできるという提唱は、阿修羅のコメントなどから私自身がハンメルの笛吹きと見られても致し方ないように思った。
明らかに時期尚早の提唱であり、まずは日本を産業の利益よりも国民一人一人の利益(幸せ)が優先される社会に変えていくことが先だと反省している。

日本を国民一人一人の幸せが優先される社会に変えていくためには、まずは目先の日本の農業を壊滅させるだけでなく、新自由主義支配を強固なものとするTPPを阻止しなくてはならない。
私自身も近隣の長野市などでTPPデモがあれば、参加したいと思っている。
TPPデモでは、我々の正当な抗議アッピールを国民全体に拡げていくことが重要であり、あくまでも当局の挑発に乗らないで整然と行うことが必要だ。

(訂正のお詫び)
モンサント社の公表している純益が1,1billion$となっており、ドイツ語ではbillionは兆を意味するため(英語では10億、但し英語古語では兆)、うっかり間違えました。
純益を11億ドルに訂正します。