(47)検証シリーズ7、日本の農業に未来はあるか。第6回(最終回)福島原発事故地域から日本農業の再生を開始せよ!

日本農業の再生を実現するためには、既に述べたように権限をすべて地方政府に委譲させ、各地方政府が地域独自の環境保全型農業計画に基づく農家個別補償制度を競い合うことが重要である。
しかし現在の農業鎖国ともいうべき101種類の主要食料品の200パーセントを超える関税をそのままにすることは、自由貿易を求める外圧からも不可能である。
自由貿易を求める外圧は、世界の産業が飛躍的大量生産の結果行き詰っているからであるが、その流れに逆らうことはできない。
したがってその流れを逆手に取って、現在のルールなき弱肉強食の自由貿易から適正なルールを持った世界全体を幸せにする自由貿易に変えていくために、2国間のFTAに地産地消税を組み込むことを前回提言した。
もちろんそれだけでは不十分であり、ドイツやフランスが強く要請している金融投機税(トービン税)の導入を実現し、金融投資を健全化すると同時に、税収で公正な世界再配分の仕組みを構築していくことが重要である。
日本は昨年のカナダのG20では、アメリカに従ってこの金融投機税導入に強く反対したが、現在の円高は金融投機の一環として起きており、将来日本国債の投機的売りは避けられないだろう。
したがって日本自らを守るためにも、金融投機税の実現に努力すべきである。

そして今回は、具体的に地方政府の地産地消税導入を基軸とした日本農業の再生について述べたい。
何故なら10パーセントほどの地産地消税を組み込んだ2国間の自由貿易FTAでは、現在の関税360パーセントの乳製品を克服することは不可能だという反論も聞こえてくるからだ。
まず規模的にもドイツと同程度である日本の酪農が、乳製品に関してドイツよりも4倍近く高い原因は、酪農農家が国の補助金政策の誘導を通して、余りにも高価な箱物近代施設の建設で莫大な借金を抱えているからであり、流通も安全性を盾に複雑な流通構造を維持しているからである。
すなわち関税の高い食料品では、コメ同様の強固な利権構造が構築されており、建設メーカ、飼料メーカー、化学肥料メーカー、農薬メーカー、農業機械メーカー、農協、そして族議員や官僚たちが甘い汁を吸い合っているからだ。
このような利権構造を解消するには、既に述べているように、国および地方政府の外郭団体の役員を退職専門家の日当だけの名誉ボランティア職とし、ガラス張りにしていくことが必要不可欠である。
日本と同規模で同じ家族経営のドイツの酪農農家が毎年1万軒も倒産するのは、ミルク買い上げ価格が1リットルあたり0,25ユーロ(消費者価格は0,4ユーロ)まで下がっているからであり、0,4ユーロ(消費者価格0,6ユーロ)なら借金を抱えていても十分可能なのである。
したがって各地方政府がドイツの農業技術者の招聘や倒産ミルク農家を誘致して学び、創意工夫で地産地消に取り組んでいけば、農林水産省さえTPPの自由貿易で鮮度が重視される生クリームなどを除いて壊滅を公表する乳製品分野でも決して未来は暗くない。
しかも地産地消税の導入で地域のインセンティブを高めていけば、現在の乳製品価格を3分の1ほどにしていくことは十分可能である。
たとえ価格がオーストラリア産の乳製品に較べて多少高いとしても、近郊農家が環境保全型農業政策に基づいて有機肥料の使用や農薬使用を減らし、田園景観を含めて環境に貢献していれば、多くの消費者は地産製品を選ぶ筈だ。
このようにして行けば、日本農業の再生は必ず実を結ぶだけでなく、農業を通して太陽の光合成を基盤とする未来産業が切り開かれ、二国間のFTAで地産地消を追求していけば、現在の侵略的な世界の自由貿易を適正化するだけでなく、世界全体を幸せにすることも夢ではない。

そしてその第一歩として、福島原発事故地域の農業再生を要に地域再生を総力を挙げて成功させ、日本農業の再生のシンボルとすべきだ。
今回の大震災は数え切れないほどの多くの命を奪っただけでなく、福島原発事故という不条理な人災によって生き残った人も窮地に追い込まれており、地域再生、農業再生が急務の最重要課題である。
しかし何度も補正予算が組まれているが、余りにも規模が小さいことから、未だに瓦礫も殆ど片付いておらず、具体的な地域再生計画は迷走している。
まさに被害者の人たちは、棄民扱いされていると言っても過言でない。
その原因は復興財源を増税によって捻出しようとするため、議員とは違って暮らしにゆとりのない大部分の国民は強く増税に反対せざるを得ず、財源が萎むことで急務である様々な地域再生復興プロジェクトが開始できないのだ。
したがって福島県宮城県、そして岩手県では他県から入荷するすべての食品や製品に5パーセントほどの地産地消税の導入を提唱したい。
そのような課税をすれば、そのままであれば商品価格が5パーセント上乗せ値上げされかねないことから、海外から入荷するものに対しては、関税から地産地消税を支払うようにすれば、物価の維持は可能である。
たとえ値上がりする商品があったとしても、課税されない県内の生産者に有利なことから、ポジティブなインセンティブを与えることができる。
また価格が維持されることで苦しい県外の生産者に対しては、県内に移住して生産するインセンティブを与えることも可能である。
しかも地産地消税は地方政府の収入となることから、年間千億円規模ではあるが様々な独自の地産地消プロジェクトを始動することができる。
それは、県民に未来へ希望を与える意味でも重要である。
もちろん国は、これらの地方政府の環境保全型農業計画に基づいたバイオマスプロジェクトや海外の農業技術者の招致などを、黒子役に徹して支援することが必要だ。

しかし最大の難関は放射能汚染であり、地下にメルトダウンしていることから、将来の地下水汚染の確率は非常に高い。
したがって現在の非難区域の除洗は必要であるが、早急な高台への移転を決断をすべきだ。
すなわち東京電力及び国はそれらの区域の土地や建物を買い上げ、広大な防災林を兼ねた動物も生息できる自然公園とするのがよいだろう。
そして地域住民のために近隣の国有林などを伐採して、代替となるエコタウンを高台に早急に開発することが必要である。
もちろん開発は崖崩れなどの災害がないように十分配慮し、出来得る限り自然工法で建設されなくてはならない。
当然エコタウンでは豚を飼育し、バイオマス発電によって電気やお湯を自給できるようにしたい。
またこれらの地域は、農業を基軸にする以外に他の選択肢がないことから、具体的な農業再生計画を早急に作り、少なくとも来春から実施すべきだ。
しかし地方政府が放射能汚染の安全性のお墨付きを与えたとしても、周辺地域で生産した農作物を消費者に買ってもらうことは、現在も苦労しているように生易しいことではない。
まさに、そこに最大のピンチがある。
しかし最大のピンチにこそ、最大のチャンスがある。
耕作面積が狭ければ、野菜のハウス栽培を選択すればよく、消費者が安全性を心配するならば、日本一安全性の高い有機農作物を生産すればよい。
ハウス栽培で有機農産物を生産することは決して難しくなく、欧米だけでなく韓国においても経営が成立つマニュアルは完成している。
栽培土壌に微量の放射能を含んでいれば、放射能の検出されない有機土壌を他の地域から運び、放射能の検出されない有機農産物を生産すればよい。
毎日の検査で放射能ゼロ、ダイオキシンゼロの日本一安全な有機農産物を供給するビオ農業団地を目標にして頑張れば、必ずや道は開かれよう。
何故ならすべての国民だけでなく、世界の人たちが復興を願って後押しを厭わないからだ。
そして福島原発地域の復興再生は、単に日本農業の再生への道を開くだけでなく、全世界が注目していることからも、地産地消の世界全体の幸せを求める道を開くことになるだろう。