(152)タイタニック日本のないことを願って(17最終回)希望の始まる時・・・自然エネルギーがつくる共生社会


この映画は「産業革命以来の最大の経済構造変化が我々の目の前にある」と主張し、化石燃料エネルギー(ウランによる原発を含)から太陽光エネルギーへの転換を求め続けたドイツの巨人ヘルマン・シェアーの思想に基づいて制作されており、彼自身も出演している。
偉大な科学者であり、経済学者であり、政治家であったヘルマン・シェアーは2010年10月急死したが、彼の意思はドイツに脈々と受け継がれ、自然エネルギーへの転換が始まっている(注1)。
彼の考えに従えば、現在の巨大企業による独占支配は化石燃料が稀少であることに基づいており、弱肉強食の競争原理で電力だけでなく、世界の富の集中化を生じている。
太陽に基づく風力、太陽光、水力と言った自然エネルギーは全て地域で、全てのものに無償で、無尽蔵に与えられことから、熱帯雨林におけるように共生原理で(注2)電力だけでなく世界の富の分散化を必然的に生じる。
すなわち自然エネルギー社会へと転換されれば、15世紀以来の植民地政策に基づいて経済ベクトルを外へ外へと求めてきた世界は、経済ベクトルを内へ内へと地域に求め、競争原理から共生原理へと変化し、究極的に出来うる限り地産地消の地域自立を確立し、地域主権世界市民一人一人の豊かさを求める世界連邦を築こう。

だからと言って、一刻一刻迫りくるタイタニック日本の危機を未然に防ぐことは、不可能と言っても過言でない。
何故なら、化石燃料による独占支配を求める社会が時代的要請で退場を求められる故に、あらゆる手段で一層激しく抵抗しているからである。
特に戦後も国民に国家への奉仕が継続された官僚支配の国では、大半の国民が大なり小なり利権構造に巻き込まれており、2008年のドイツの金融デフォルトのように、大半の国民が涙することなしには変わりようがないからだ。
したがって私自身は、タイタニック日本に備えよ、と叫ぶのである。
しかしタイタニック日本は、決して絶望ではなく、希望が始まる時でもある。

(注1)著書『ソラー地球経済』(2001年 岩波書店)によれば、初めのうちは生産において多くの人手を要し、植物化学原料の生産は石油化学原料の生産より4倍近い人手を要するとあり、人手を要することは雇用の観点からすれば理想的であり、まさに誰もが能力に応じて栽培生産から土中への廃棄還元に至る工程に関与でき、失業のない社会を創出することも可能である、と述べている。
また、現在世界で年間に消費される化石燃料は80億トン弱(石油35億トン、天然ガス20億トン、石炭25億トン)であり、太陽光の光合成によって生産される植物(食物を含む)や木材の年間で2200億トンに較べて驚くほど少なく、現在消費されている化石燃料をすべてソーラー資源で賄うには、1200万平方キロメートルの森林もしくは耕作地が必要であり、現在の世界の森林4000万平方キロメートルと殆ど利用されていない乾燥地4900万平方キロメートルの一部を使用すれば十分可能であるとしている。
何故なら、殆どの乾燥地で植物(干草で1ヘクタール当たり12トンから18トン、麻で10トンから12トン、ススキで30トン以上、ユウカリで35トンから40トン)による開墾は十分可能だからだと述べている。

(注2)熱帯雨林の形成過程では樹木でさえも競争原理で争われるが、形成された熱帯雨林では樹木や昆虫などの多様性が示すように、熱帯雨林を形成する樹木、植物、昆虫、動物、そして原住民に至るまで共生原理が支配している。