(273)世界危機第11回『地球2100年7−3』(文明滅亡の示唆)・成長至上主義が日本を滅ぼす1

フィルムの第三回は、帰れない分岐点2015年を渡った主人公の少女ルーシーが2030年には20代に成長している。
温暖化の進行で食料や生活必需品の高騰が日常茶飯事となり、干ばつによる市民の水不足が深刻になり、社会にポジティブに生きようとするルーシーも脱塩水供給企業への抗議集会に参加する。
そこで一人の青年ジョシュと出会い、意気投合して恋に陥り結婚する。
1年後には娘のモリーが生まれ、仲間たちと未来に希望を持って生きようとする。
しかし後日楽天的であったと語るように、帰れない分岐点を渡ったことから最早止められない問題が溢れ出してきた。
メキシコとの国境には何百万人もの難民が食料と水を求めて押し寄せ、緊急対応スタッフのルーシを巻き込んでいく。
それは現代の文明の崩壊を示唆し、専門家たちによってマヤ文明ローマ帝国文明、イースター島文明の滅びた理由が語られる。
すなわちいかなる文明も、持続可能性を越えて絶えず発展成長が求められるようになると、自ずから滅びるという戒めでもある。

成長至上主義が日本を滅ぼす1
上のABC放送制作の『地球2100年』フィルムが、帰らざる転換点と指摘する2015年のCOP21が11月30日より始まった。
人類文明の崩壊か、持続かを決定的に左右する分岐点にあると言っても過言ではない。
政府間の予備折衝では先進国と途上国の溝は埋まらなかったが、世界の環境団体や専門家、そして危機を共有する世界世論の高まりもあり、脱化石燃料が主要テーマとなり、新たな実効性を担保する合意への期待も生じている。
特にこれまで成長最優先で温暖化効果ガス排出量削減に後向きであった中国とアメリカが、既に悪化している気候変動の危機感から率先して石炭火力発電削減に積極的に取り組み始め、脱化石燃料の気運が生じている。
そうした中で日本の後向きな姿勢は突出しており、日本国内での新設石炭火力発電所計画は40を超えており、12月1日の安倍首相の開会演説での「二酸化炭素を発生しない水素エネルギー開発」もオーストラリアの石炭開発に基づいており、従来の化石燃料維持に必死にしがみついているといえよう。
それは石炭火力発電所のコストが、建設費も含めて天念ガス(石油も含め)火力発電所の3分1で済むからに他ならない。
しかし二酸化炭素排出量は、最新型の効率高い石炭火力発電所でも天然ガス発電所より2倍も多く、新設では40年から50年使用が前提となっていることから先進国では排出量増大が吐出し、将来日本への非難が押し寄せることは避けられない。
しかも2030年までのアジアでの石炭火力発電所の増大は2倍にも膨らむと見積もられており、まさに今回安倍首相が「気候変動で苦しむ途上国の窮状は見過ごせない」と会議冒頭で表明した3割増額の年間1兆3千億円の途上国開発支援で、日本企業受注の産業戦略が目論まれている(既にインドネシアやマレーシアでは世界最大級の石炭火力発電所が日本企業によって受注されている)。

さらに言えば、日本の自賛する2030年の排出量26%削減目標(2013年基準比較)はうわべは見劣りするものでないにしろ、EUの国々をはじめとして多くの国々は京都議定書で約束した1990年を基準としていることから見れば偽装的とさえいえよう(日本の1990年CO2排出量は11億4100万トンであり、2013年の地球温暖化ガス排出量は13億9500万トンであり、単純に見れば22,3%の増大であり、2030年の目標さえ1990年の排出量レベルへの削減に過ぎない)。

そのような目先の利益しかない成長至上主義は、COP21の合意に水を差すだけでなく、日本自らを滅ぼすことになろう。
それは、ようやく開花し始めた再生可能エネルギー技術をイソップ童話「黄金の卵を産むガチョウ」で見るように殺し続けるだけでなく、アジアでの石炭火力発電所建設、中東での原発建設が、安全保障という大義でかつての日本の軍国主義を呼び覚ますからに他ならない。