2013-01-01から1年間の記事一覧

(183) ハネケを通して現代を考える(最終回)タイム・オブ・ザ・ウルフ・・世界の終末に救いはあるのか?

この映画は、いきなり救いのない暴力から始まる。 どうやら第三次世界戦争が既に核攻撃で終わりを遂げ、人類の未来は絶望的状況にさらされているといった状況設定である。 それゆえ母親アンナの4人家族は山の別荘へ街から避難してくるが、東欧から非難して…

(182)世界を変えるドイツのエネルギー転換(最終回)・・・日本のエネルギー転換は可能か

市民の屋根だけでなく緑地には太陽光パネルが敷き詰められる電力自給の未来も近い。2011年在ってはならない福島原発事故を引き起こした日本は、二度とこのような悲惨な事故を起こしてはならないという国民の思いが脱原発(原発ゼロ)社会へと結集されて…

(181)ハネケ映画を通して現代を考える(21)ピアニスト・・官僚肖像の死

ミヒャエル・ハネケ第7作の『ピアニスト』(2001年)はこれまでの題材や描き方を一変させ、ドイツ最高の文学賞ビューヒナー賞を受賞したエルフリーデ・イェリネクの自伝とも言われている、愛の脱神話化をテーマとした長編小説『ピアニスト』の映画化で…

(180)世界を変えるドイツのエネルギー転換(7)・・市民主役の太陽光ルネッサンス開花

ディンゴルフィング・ランダウ郡の地方駅屋根に設置された太陽光パネル私が市民の設立した南ドイツのシェーナウ(山岳の小さの都市)の市民電力会社を訪れた頃は(注1)、シェーナウさえ太陽光発電は小学校と坂の上の教会に見られるだけで、実際は省エネ運…

(179)ハネケ映画を通して現代を考える(20)71フラグメンツ後編・・世界はマクシミリアンを救えるか、日本は大本営再構築を避けられるか?

ドイツではマクシミリアンのような無差別殺人者をアモック(文化依存症候群・・元々は東南アジアの心を病む風土病)患者と呼び、社会及び環境に要因する心の病と捉えている。 何らかのショックや軋轢で周囲とのコミュニケーションが難しくなり、独善的に引き…

(178)世界を変えるドイツのエネルギー転換(6)・・再生可能エネルギー280%達成地域の驚異的挑戦

前回紹介した分散型エネルギー技術研究所の指導の下に、2013年現在再生可能エネルギーが地元地域電力消費の100%を超える地域は、ドイツ北部を中心に増え続けているが、ディトマールシェン郡(クライス)の280%は驚異的である。 ディトマールシェ…

(177)ハネケ映画を通して現代を考える(19)71フラグメンツ前編・・愛の流れで氷河が融け始めるとき

ミヒャエル・ハネケの第3作『71フラグメンツ』は既に述べた第一作『セブンコンティネンタル』、第2作『べニーズビデオ』の“感情の氷河化”3部作として制作され、71のフラグメンツシーン(カットシーン)は“コミュニケーション不可能”な生き難い社会を…

(176)世界を変えるドイツのエネルギー転換(5)・・100%再生可能エネルギー地域の挑戦

分散型エネルギー技術研究所(交通システム研究室)の精鋭達前回紹介したバイオエネルギー村プロジェクトは連邦農業省の後ろ盾で、ニダーザクセン州のゲッチンゲン大学の循環型社会研究センターが中核となって農村自治体の住民参加で推進しているのに対して…

(175)ハネケ映画を通して現代を考える(18)べニーズ・ビデオ後編・・古き竜に抗いて永山則夫裁判を考える

この映画の初めと終わりで少年たちが二度も歌う、「彼の古き竜に抗いて、死の口に抗いて、彼の恐怖に怯えることもなく、猛れ、猛れ、世界よ猛り立て。私はここに立ち、それを歌う」という合唱は、この救いのない物語のテーゼであり、私にはミヒャエル・ハネ…

(174)世界を変えるドイツのエネルギー転換(4)・・バイオエネルギーが示唆する未来

Einheimische Bioenergie: Was kann sie 2050 leisten?(土着のバイオエネルギー:2050年のエネルギー割合予想図・・出典 2008年連邦農業省委託の成長原料調査機関FNR及び連邦環境省の国内バイオマス行動計画から)*ドイツの2050年の年間発電量…

(173)ハネケ映画を通して現代を考える(17)べニーズ・ビデオ前編・・両親告発の意味するもの

ミヒャエル・ハネケ第二作の『べニーズ・ビデオ』は衝撃的な豚の屠殺ビデオから始まる。 消費者である観る側は、その残忍さを思い知らされずにはいられない。 もっともドイツやオーストリーでは屠殺銃で瞬間的に失神させ、飼育動物も如何なる場合も苦しませ…

(172)世界を変えるドイツのエネルギー転換(3)・・見えてきた風力発電投資への失速

ドイツ及びEUの風力発電の発展は下図で見るように驚異的であり、2011年のドイツ総発電量の20%が再生可能エネルギーであり、その50パーセントが風力発電である。 (出典ドイツウィキペディア・風力発電)しかも脱原発宣言から、巨大風力発電投資で…

(171)ハネケ映画を通して現代を考える(16)コード・アンノウン 後編・・・生き難い世界の克服

ミヒャエル・ハネケはインタビューで、「この映画は二つの中心テーマを持っています。一つはパリやロンドンのような大都市で、明確に街路像に読み取れる新しい民族移動現象です。もう一つはコミュニケーションの困難さであり、愛する伴侶、家族間、異なる人…

(170)世界を変えるドイツのエネルギー転換(2)・・ドイツの経営者雑誌が掲げるソラーレボリューション

2012年7月のドイツ農業経営者雑誌ランドビルトは、「自ら利用する太陽光電力・・ソーラレボリュション」というタイトルで革命的変化の到来を告ている(注1)。 記事には上のグラフが載せられ、「ドイツの固定全量買取制度の買取価格は、キロワット時あ…

(169)ハネケ映画を通して現代を考える(15)コード・アンノウン 前編・・・生き難い世界

ミヒャエル・ハネケ第6作の『コード・アンノウン』は冒頭に聾唖の子供が登場し、ジェスチャーで何かを表現する。 仲間の聾唖の子供たちはその表現に対して、一人ボッチ?隠れ家?ギャング?心のやましさ?悲しみ?刑務所?などと答えて行くが、いずれも違っ…

(168)世界を変えるドイツのエネルギー転換(1)・・転換は失敗しているのか?

ハネケ映画を通して現代を考えるシーリズは月曜日とします。ドイツのエネルギー転換の現状と問題を浮き彫りにしたZDF動画 第一章ドイツ電気料金高騰原因と処方箋(賦課金免除企業の適正化で半部以下にできる) 第二章下がり続けるエコ電力市場価格(20…

(167)ドイツ巨大電力企業の終わりが意味するもの・・・万民が救済される第七大陸は近い

アールターグドイツ14・ドイツが創る未来への希望5・見えてきた理想社会の到来上の9月18日放映されたエネルギー転換を支援するZDFフィルム『電気料金のトリック3−3』では、現在ドイツ社会の一世を風靡する専門家ウベ・レプリヒ教授は、エコ電力は市場…

(166)ハネケ映画を通して現代を考える(14)セブンス・コンチネント後編・・・考えないことを強いる社会で今求められているもの(特定秘密保護法案)

ミヒャエル・ハネケが水槽破壊を娘エヴァの生への暴力として描き、ラストシーンの夫ゲオルクのフラシュバックで後悔を表現していたが、ハネケ自身の第七大陸を否定するものではない。 『セブンス・コンチネント』のファーストシーンのラジオから湾岸戦争のニ…

(165)ハネケ映画を通して現代を考える(13)セブンス・コンチネント中編・・・矢川澄子さんの第七大陸への決意

この『セブンス・コンチネント(第七大陸)』でのアンナは、最後の晩餐の際これまでになかった夫の和んだ表情や娘の微笑む表情の中で、控えめであるが明るい表情で輝いていた。 しかし水槽を壊した時アンナは第七大陸が幻想であることを悟り、娘を薬で死なせ…

(164)ハネケ映画を通して現代を考える(12)セブンス・コンチネント前編・・・観客に考える事を要求し、理想に向かって疾走する映画

アールターグドイツ12・ドイツが創る未来への希望3・・メディアと官僚が創る未来『セブンス・コンチネント』はハネケが47歳にして制作した最初の映画であり、一家心中した3人家族の新聞記事を読んで、映画化を切望したと言われている。 何故なら家族は…

(163)ハネケ映画を通して現代を考える(11)隠された記憶 後編・・・集団自衛権解釈変更が目論む新重商主義

アールターグドイツ11・ドイツが創る未来への希望2・・新重商主義決別のメルケルの戦略 上の映像はメディアの自由な編集で、すなわち番組の改ざんによって反対も容認に変わる現代を映し出している。 ハネケの『隠された記憶』での息子ピエロの共犯を通して…

(162)ハネケ映画を通して現代を考える(10)隠された記憶 中編・・・ハネケが希求する脱植民地政策

アールターグドイツ10・ドイツが創る未来への希望1・・自らを封印したメルケルの戦略ハネケはドイツ市民の日刊紙として定評のある「タッツ」のインタビューで(注1)、「個人的罪について、『隠された記憶』では具体的罪、アルジェリア戦争の無関心が問…

(161)ハネケ映画を通して現代を考える(9)隠された記憶 前篇・・・驚愕のラストがすべてを語り始める

アールターグドイツ9・ドイツ連邦選挙(3)・・どんでん返しはあるのか?この映画はスリラー映画の手順に忠実に従って、犯人から送られてきた手紙に代わるビデオテープの再生クレジットシーンから始まり、不気味な絵も添えられたビデオテープが次々と送ら…

(160)ハネケ映画を通して現代を考える(8)ファニーゲーム後編・・シリアでの暴力はどのように解決されなくてはならないか。

アールターグドイツ8・ドイツ連邦選挙(2)・・あらまほしきこと・・ドイツのように首相さえも公僕であること 暴力阻止・・・国連での化学兵器共同管理提案(ARD)ハネケによれば、『ファニーゲーム』は観客に本当の暴力の恐ろしさを体現させることで、暴…

(159)ハネケ映画を通して現代を考える(7)ファニーゲーム前編・・観客に対する挑発

(アールターグドイツ・ドイツ連邦選挙(1)・・テレビ討論優勢にもかかわらず社会民主党復権が絶望的理由)1997年制作のこの映画は、中流富裕層の幸せな家族休暇が二人の若者の侵入で奪われていくだけでなく、善良な家族が恐るべき不条理で消し去られ…

(158)ハネケ映画を通して現代を考える(6)白いリボン後編・・ハネケの叫びかける心の声

上に載せた『ミヒャエル・ハネケ・・マイライフ』を見れば、『白いリボン』がどのように制作され、映画制作の際ハネケが注文の多い監督であり、支配的に取り仕切っているにもかかわらず、いかに俳優やスタッフに慕われ愛されているかが伝わってくる。 またネ…

(157)ハネケ映画を通して現代を考える(5)白いリボン中編・・現代が対峙するファシズム再来

ハネケは2010年のシュピーゲルのインタビューで、『白いリボン』の制作アイデアが生じたのは20年ほど前であり、ユーモアに富んだ女性友達でもあったウルリケ・マインホフ(ドイツ赤軍の設立者)が左翼テロリズムに傾倒することで、全く人が変わってし…

(156)ハネケ映画を通して現代を考える(4)白いリボン前編・・ナチズム醸成を予感させる子供たちの制裁

この物語は村の医師の落馬事故から始まり、小作人妻の男爵納屋での事故死、誘拐による男爵息子ジギの逆さ吊りと鞭打ちの制裁、男爵納屋の全焼、牧師の愛育していた文鳥のハサミによる机の上の磔、助産婦のダウン症の息子カーリンの誘拐と目への危害など、次…

(155)ハネケ映画を通して現代を考える(3)。『城』(全体的支配構造克服のテーゼ)

ハネケの『城』はカフカの小説(注1)を踏襲しており、「Kが到着したのは晩も遅くであった」とナーレションで語ることから始まる。 ハネケはインタビューで、複雑な内容ではシンプルに制作することが鉄則と述べているように、この映画は非常にシンプルに坦々と…

(154)ハネケ映画を通して現代を考える(2)。『愛、アムール』後篇

上に載せた字幕を付けた『アムール映画制作現場にて』では、この映画の3人の主人公がハネケについて語っているが、彼の映画監督としての巨人像が溢れ出している。 それについては追々と述べていくが、今回はこのハネケ映画が投げかけるものについて考えて見…