(168)世界を変えるドイツのエネルギー転換(1)・・転換は失敗しているのか?

ハネケ映画を通して現代を考えるシーリズは月曜日とします。

ドイツのエネルギー転換の現状と問題を浮き彫りにしたZDF動画


第一章ドイツ電気料金高騰原因と処方箋(賦課金免除企業の適正化で半部以下にできる)


第二章下がり続けるエコ電力市場価格(2011年脱原発以降38パーセント下降)

第三章地域エコ電力企業が創る未来(巨大電力企業が壊滅する理由)

上のZDFフィルム『電気料金のトリック』は、ドイツの現状と問題を浮き彫りにしている。
日本では原発再稼働と海外への原発売込みを掲げる安部政権の誕生で、目障りなドイツエネルギー転換が失敗したという表層だけの記事が駆け回っている。
しかし実際は2004年の再生可能エネルギーの到達目標2010年12、5パセント(全電力に対する割合)、2020年20パーセントを大きく上回り、2012年には22、9パーセントに達し、2020年までには確実に40パーセントを超える状況にある(注1)。
特に失敗と揶揄されている太陽光発電では、その普及拡大と設置価格の急降下は著しく、全量固定買取価格制度で2000年の買取価格50、62セントが(35メガワット上限、2004年からは上限撤廃)、20012年4月には13、5セント(1メガワット以上10メガワットの枠内で、しかも7月からは毎月1パーセントずつ15ヶ月減額され、2014年からも1年ごとにさらに1パーセントずつ減額)に恐ろしく下がっており、大量生産で太陽光パネル設置コストが数分の一になる程飛躍的発展を遂げている。
それは具体的に上のZDFフィルム三章のドイツゼー企業に見るように、既に企業の太陽光発電による自家発電コストの方が市場で電力を購入するより安くなっており、ドイツではこのように太陽光発電による自家発電企業が急速に拡がりつつある。
また地域の風力発電による中小の電力企業は、第二章で見るように巨大電力企業RWEより安い電気料金でエコ電力市場を通さず直接地域の人々に提供を始めている。
さらにこうした流れによる巨大電力企業の需要先細りで、第三章で専門家が巨大電力企業の将来を壊滅的と明言するように、最早ドイツエネルギー転換の流れを止めることはできない。
それにもかかわらず、日本でドイツのエネルギー転換を失敗とする根拠はドイツ家庭の電気料金の高騰であり、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度が消費者負担に支えられていることから、上のZDFフィルムでも年間の家庭平均消費者負担(賦課金)が2008年の40ユーロ(5000円程度)から2013年の185ユーロ(24000円程度)に著しく高騰しており、年間の買取総額が約168億ユーロ(2兆2000億円程度)に達していることを上げている(注2)。
これはZDFが指摘するように、国際競争低下や電力消費の大きい強化を必要とする賦課金免除企業が増え続け、家庭消費者だけに押し付けられるトリックによるものだと訴えている。
実際に取材された国際競争力低下が予想される食肉企業や精錬企業では、賦課金免除だけでなく雇用特例などの恩恵で莫大な利益を上げており、産業側は得するだけで全く痛みがない制度であることが見えてきている。
ZDFエコ研究所の専門家フェリクス・マテスは、これらの増え続ける免除企業精査し適正化していけば、消費者の負担する賦課金は半分以下にできると明言している。

既にメルケル首相はこのZDFフィルム一章で、増え続ける賦課金免除を含めた制度の見直しを2012年の連邦議会で述べているように、見直しは与党から野党まで一致しており、第三次メルケル政権誕生後再生可能エネルギー法(EEG)改正がなされることは必至である。
しかもそれは、公共放送ZDFが現在の悪しき制度をトリックとして国民に今年9月18日放映し、大きな流れを起こしつつあることから適正化されて行こう。

(注1)明らかになっている事実 http://energytransition.de/2013/03/jp/

(注2)この買取総額168億ユーロは日本では破綻へのネガティブなものとして強調されているが、全量固定買取制度を利用してドイツが年間に製造するエコ電力総額であり(実際は近年買取制度を利用しないエコ電力が増え続けていることからさらに膨大)、ポジティブな未来への象徴である。問題は2012年の改正でエコ電力が市場で取引することが義務付けられ、エコ電力の市場価格が2011年の脱原発宣言以降38パーセントも下がり続け、買取費用がその安い市場売却額と不足分が賦課金から支払われることにある。すなわちエコ電力は値下がりしているにもかかわらず、消費者の賦課金としての負担が増大し、逆に電気料金が高騰していく制度欠陥でもある。