(230)ドイツメディアから考える今30・市民のドイツ映画『エネルギー転換の時代に生きる6−1』・何故原発再稼働ありきなのか?

私にとって老いが加速していくなかで、それに抗する意味でも今年は羊にちなんで再び冒険の年にしたい。

昨年末ブログに書いた約束ではZDFツァイト『貧困と裕福』から始めるとのことでしたが、差し迫って来た原発再稼働を前に脱原発の必要性を明白にするためにも、ドイツ映画『エネルギー転換の時代に生きる』から始めることにした。
この映画は経済変革を求めるフリージャーナリストのフランク・ファランスキーが、撮影を除きひとりで脚本、監督、製作した映画であり、ドイツのエネルギー転換の真相を見事に描いている。
彼は2012年末のドイツの日刊紙「タッツ」のインタビュー記事で述べているが、最初ZDFの「エネルギー転換」ドキュメンタリー番組を見て、映画製作の構想が浮かんだことを話している。
何故なら視聴率の高さ、投書の多さからして視聴者の関心は驚くほど高く、投書では全て同じでエネルギー転換の真相を知らなかったと書いてあったからだ。
実際の映画製作では、製作費用10万ユーロ捻出のために著作権オープンソース・イニシアティブOSI(ソフトを無料にする組織)に売却し、公にユーチューブを通して誰でもこのフィルムを無料で自由に利用できるようにした。
もちろん2012年末から2013年末までには86のドイツの都市の劇場で、104回ファランスキーの講演後に上映されている。
そのような経緯からしても新しい時代に向けた市民の映画であり、エネルギー転換の真相を啓蒙する映画と言えよう。
詳しい私の解説は省略するが、第一回を見るだけで、化石燃料の旧産業にしがみつく巨大電力企業、そして巨大企業がなぜ今地域分散型太陽光産業の夜明けを阻止しようとするか、よくわかるのではないだろうか?
(尚このフィルムは、既に原発ゼロを求める関西学院環境経済学者朴勝俊氏が『エネルギシフトに生きる』として素晴らしい関西弁吹き替え版を載せられています)


何故原発再稼働ありきなのか?(1)

太陽光発電にブレーキがかけられる理由

2012年7月に始まった太陽光発電固定価格買取制度では、固定価格が余りにも高すぎたこともあり飛躍的に進展し、太陽光設備容量はこの2年で申請分も含めて7178万キロワットに達した。
 産経新聞ニュースは「制度開始から2年で、経産省が認定した再生エネの設備容量は7178万キロワットと原発70基分に相当する」と書き、他のメディアも追従していることから、原発70基分が世間では独り歩きしている。
確かに日中の最大出力は全てが運転されれば7000万キロを超えることもあり、その時間帯の出力ベースでは原発70基分に相当するが、太陽光発電は太陽が出ている時だけの発電で設備利用率13%であることから、原発は約72%(運転期間は100%ですが定期点検や事故で停止期間は0%ととなり、2010年までの平均)であることから、発電総量では原発12基分に相当すると言うべきであろう。
それでも僅か2年間で太陽発電が原発12基分に達したことは、素晴らしことである。
しかし問題は、その大部分の建設されている地方電力5社(九州、北海道、東北、四国、沖縄)がその進展に驚き、今年9月以降申請受入拒否でブレーキをかけていることである。
拒否する理由として、これらの電力企業は太陽光発電は不安定で、特定時間に集中することで送電網を圧迫するといった当初から想定されている理由を上げている(太陽光発電風力発電が進むドイツでは送電企業が技術革新と創意工夫で需給バランスを調整するだけでなく、余剰電力を水素製造、蓄電や揚水発電プロジェクトで地域発展に取組んでおり、それを見習うべきである)。
結局そこでは、電力企業の再生可能エネルギーへの取組は見せかけだけで、再生可能エネルギー進展阻止を求めている。
何故なら、これらの地方は過疎ゆえ沖縄を除いて原発が集中しており、既に電力会社には2015年からの原発再稼働は既成事実であり、原発が再稼働すれば一基100万キロワットほどの電力が絶えず生み出され、過剰な再生エネールギーを捨てることになるだけでなく、進展して行けば上の映画が描くように自らの首を絞めることになるからである。
それ故打ち出されて来たこれらの電力会社の解決策は、出力抑制を認めるものだけに新たな申請を受け入れるといった、太陽光発電進展に急ブレーキ―をかけるものだ。
すなわち出力抑制とは、電力が過剰になれば太陽光発電で製造された電力は購入されなくなることを意味し、これまで太陽光発電に参入してきた多くの事業者はリスクの大きさから事業自体を断念しなくてはならない。
本来ならば地方創生もこうした地域に湧き上がってきた事業を支援して、参入事業者が自ら水素製造プラントを立ち上げれるように全面的に支援すれば、既に太陽光が導く水素社会の扉は開かれていることからも、確実にこれらの地域活性化起爆剤になる筈だ。