(231)ドイツメディアから考える今31・『エネルギー転換の時代に生きる6−2』・(2)川内原発に見る滅びゆく大本営の原像


エネルギー転換の時代に生きる(2)・それでもドイツのエコ企業や市民は負けない

第二回のフィルムでは、巨大電力企業の圧力によるメルケル政権の2012年6月突然の再生可能エネルギー法改悪で、多くの太陽光企業が窮地に追い込まれている現状がインタビューを通して描かれている。
確かに最先端を行っていた太陽光パネル製造企業はそれによって行き詰まり、殆どの製造企業が倒産もしくは買収されて行ったが、決して彼らは負けていない。
数年前まで技術で世界を圧巻していたソロン社の経営責任者ステファン・ゾイバリッヒは、インタビューに答えて以下のように述べている。
「私たちはこれでよかったと思っています。(買収企業)マイクロソル社を非難するつもりは全くありません。むしろパートナーとの出会いを喜んでいます。私たちはこの関係が双方にとって利益になると思っています。マイクロソル社は私たちの力で市場を拡大します。そして私たちは彼らの力でインドへ進出します。ベルリン以外で私の指導の下によい製品を生産します。それは双方にとってウィンウィンを意味します」
また多くの国内メディアは巨大電力企業の広告収入に依存していることから、再生可能エネルギーは高くつく、高くつくと市民の不満誘導で再生可能エネルギー自体を葬ろうとしていると、緑の党の環境問題専門家ヘルマン・モットー議員は述べているが、彼自身そのような試みは失敗すると明言している。
何故なら化石燃料エネルギーはコストが益々高くなるのに対して、太陽光エネルギーは一旦設置されればコストは無料であるからだと(少なくとも家庭では太陽光パネル保証期間の四半世紀はコストがかからない)。

日本の原発再稼働は何故ありきなのか?(2)・川内原発に見る滅びゆく大本営の原像

メルトダウン事故が起きた場合の備えが全くなされておらず、原発敷地付近に大火砕流が検証された川内原発
現在北海道の泊原発1,2,3号基から九州鹿児島の川内原発1,2号基まで14原発21基が原子力規制委員会に安全審査が申請されており、既に川内原発と高浜3,4号基は審査に合格しており、今年2015年の春以降再稼働ラッシュが目論まれている。
安全審査では福島原発事故の反省に立って地震及び津波に対して安全性対策がなされているが、現在の技術では原発事故は起きる可能性が否定できないという福島原発事故体験に全く立っておらず、万一起きた場合の対策が全くできていない。

最初に安全審査に合格した川内原発では巨大噴火の危険性が指摘され、原発敷地内付近では3万年前に起きた火砕流が検証されているにもかかわらず、規制委員会は近い将来大噴火の起きる確率は低いとして火山学会の反対を無視している。
これはまさに、貞観地震の大津波は近い将来起きる確率は低いとして無視してきたやり方と全く同じではないか。

さらに九州電力が公開している「川内原子力発電の更なる信頼性の向上に向けた取り組み状況」動画(http://www.kyuden.co.jp/torikumi_nuclear_movie05.html)では、万一事故が起きた場合の格納容器の安全性対策の備えとして、格納容器内での水スプレイ(6分3秒)や外から格納容器を冷やすことができる放水砲(7分30秒)を誇らしく映し出している。
しかし福島原発事故での2週間後から75パーセントにも上る放射能をまき散らした原因が放水された水と格納容器に残っていた核燃料との反応である事実が、昨年末NHKの放映した検証フィルムで明らかになっている現在、これらの安全を誇る映像は余りにもイノセントで、そこには滅びゆく本土防衛に竹やりで戦うような大本営の原像を見ずにはいられない。

少なくとも福島原発事故後の安全審査では現在の技術では原発事故は起こり得るという視点に立つべきであり、ドイツやフランス原発、そして最近の欧米原発のように、万一メルトダウン事故が起きた場合も一番下の容器底は特殊素材で守るコアキャプチャを備えるべきである(既存の原発でコアキャプチャが備え難いのであれば、それに代わる対策がなされるべきであり、現在の福島原発のような地下水汚染、海洋汚染は許されない)。
また北朝鮮イスラム国による飛行機での原発テロの確率が最早無視できなくなるなかで、飛行機による原発テロに対して原発建物はフランスやドイツのように二重のコンクリートで防御することは必要最小限の安全対策である(もっとも建物二重コンクリート原発数キロ周辺からのコンクリート5メートルを貫通できる簡易型ロケット砲には無防備であり、ドイツ政府もそれを認めている)。