(170)世界を変えるドイツのエネルギー転換(2)・・ドイツの経営者雑誌が掲げるソラーレボリューション

2012年7月のドイツ農業経営者雑誌ランドビルトは、「自ら利用する太陽光電力・・ソーラレボリュション」というタイトルで革命的変化の到来を告ている(注1)。
記事には上のグラフが載せられ、「ドイツの固定全量買取制度の買取価格は、キロワット時あたり2004年の57セントから年々大きく下がり続け、脱原発を決定した2011年には30セントを割り込み、更に2012年には20セント以下へと下降を続け、家庭電気料金(22セント)よりも安くなった」と指摘している。
その理由は、ドイツ再生可能エネルギー法の全量固定買取制度による電気料金の高騰と太陽光設置費用の急激な下降にある。
すなわち家庭電気料金が上がり続ける原因は、全量固定買取制度が消費側の電気料金に組み込まれた賦課金で負担されることにあり、多くの企業は国際競争力低下という名目で免除され、既に2013年には2400社を超え増え続けているからである。
そして現在では、太陽光発電は全量固定買取制度による補助金を必要としておらず、自家発電で利用する家庭や企業が増え続け、グラフ予想の2018年を待たずして、2013年8月のシュピーゲル誌オンラインはこの秋に買取価格が10セント以下になることを告げている(注3)。
何故なら太陽光設置費用が年々大幅に下がり続けており、2005年に1キロワットあたりの設置費用5000ユーロ(1ユーロ130円で65万円)が下図で見るように2011年には2422ユーロと半分以下になり、今年2013年には1700ユーロ(22万円)と3分の1になっているからである(注2)。

したがってZDFフィルム『電気料金のトリック』が取材した鮮魚食品企業ドイツゼーのように、太陽光で自家発電に投資する企業が急増しており、既に1年前のドイツ経営者雑誌(Manerger Magazin)オンラインは、「企業客はEonやRWEの巨大電力から逃げ出している」というタイトルで、以下のように伝えている(注2)。
高騰する電気料金を鑑みて経営者は創造的であり、益々多くの企業が電力の自家発電に取り組んでいる。すなわち再生エネルギーが増加し続けており、いわゆる忌み嫌われてきた太陽光が価値あるものとなっており、RWEやEonのような巨大電力供給企業にとってその成長が驚異となっている。

そしてこの記事でも、最初に福島原発事故以降のドイツゼーの太陽光自家発電の挑戦を取り上げ高く評価すると同時に、エネルギー専門家セバスチャン・ボレイの「企業は現在でも、理想的な場合自家発電によって50パーセント節約することができる」という発言を載せている。
またドイツ商工会議所調査では、既に企業の13パーセントが独自の電力供給を建設しており、16パーセントが自家発電を計画していることを伝えている。


このような経営側のソラーレボリューションへの前向きな対応は、太陽光発電設置費用が予想を遥かに超えて低下することにあり、ドイツ産業に革命的な変化を起こしつつある。
将来的に太陽光パネルは世界的普及で大増産されることから、液晶パネル価格が数年で10分の1ほどへと低下したように、1キロワット設置費用が500ユーロ以下になる日も決して遠くない。

日本では相変わらず官僚主導の護送船団方式に依存していることから、1キロワット設置費用は各社50万円ほどの設定がなされているが(それでも現在38円買取価格により、少なくとも10年で費用が回収可能)、数年内に(皮肉にもグローバル化で)少なくとも半分以下になり、ドイツのように買取制度を不要としよう。
設置費用が10万円以下となれば、最早政治がどのように原発推進を掲げても、原発依存の電力の高騰で殆どの家庭や企業は自家発電することから、日本でも必然的に脱原発が起きよう。


(注1)http://www.volker-quaschning.de/artikel/2012-07-Sonnenstrom-selbst-genutzt/index.php

(注2)http://www.photovoltaik.org/wirtschaftlichkeit/photovoltaik-preise

(注3)http://www.spiegel.de/wirtschaft/unternehmen/preisverfall-bei-solarstrom-bringt-energiekonzerne-in-bedraengnis-a-915742.html