(487)『核のない善なる世界創出への新しき復活』 

 挨拶

 長く休んでおり申し訳なく思っていますが、ようやく本を書くことが一応できましたので、「はじめに」及び目次を紹介しておきます。この間昔読んだことのあるトルストイの『復活』も読みました。トルストイは90歳を超えても人間として尊厳ある生き方を求めて、新しき社会の復活に前へ前へと最後まで取組んでいたことを思えば、まだまだ私も若輩として前に進めるような気になっています。

 まだ推敲や資料などの整理がついていませんが、300ぺージほどの私としては厚い本となり、4月末までには本を出したいと予定しています。

 

「はじめに」

 トルストイの『復活』は、ネフリュードフ侯爵過去に恋して捨てたカチューシャ徒刑衆としてシベリアに送られることに自らの罪を感じ、カチューシャを救いだそうと追いかけて行く。その過程で侯爵はこれまでの退廃的生き方に目覚め、人間の尊厳ある生き方を取り戻し、若い頃の純真な生き方を超えて人間として尊厳ある新しい生き方に復活していく物語であった。

 私の書いたこの本も、罪を犯した世界がまったく責任のない気候レイシズムで苦しんでいる人々に対して、押し寄せる禍を力としてエネルギー転換による利他主義で救いを求め、世界自らも尊厳ある生き方に目覚め、貧困や格差がないだけでなく、搾取と争いのない核のない善なる世界を創り出し、新たに復活していく物語でもある

 フランス革命ロシア革命、そしてベルリンの壁崩壊後のビロード革命を初めとした民主化革命では絶えず理想社会が求められて来たが、すべての革命において理想が実現することはなかった。

 その理由は革命後も冨を蓄積する仕組が残り、冨の蓄積する仕組なくしては国家が維持できなかったからである。すなわち国家は冨の蓄積を追求するために官僚組織を必要とし、必然的に利権構造を生み出し、外に冨の獲得を求め競争、争いを起して行くからである。しかも内においては利権に関与する一握りの人たちが裕福になり、多くの人々暮らしに困窮する構図はトルストイの『復活』に見る帝政ロシアの時代も現在も変わらない。

 しかも社会に理想が掲げられる時、革命においては理想強制され無数の人々が虐殺されたことから、恐ろしい社会イメージし、むしろネガティブにしか感じられない。 

 しかし現在は地球上のすべての氷河融解や核戦争の危機が現実化しつつあり、それにもかかわらず危機を推し進める利権構造が肥大し続け、危機を阻止する行動口先ばかりで全く機能していない。もしこのような現在の世界が継続されるなら、最早人類は生き残れないことも確かである 

 それに対して無尽蔵の太陽を原資とする太陽光発電風力発電などの自然エネルギーが絶えず生み出されるエネルギー転換の世界は、冨の蓄積の追求を必要としないことから、地域での自立した自給自足の自律経済社会を創り出し、利権構造のない、争いや戦争ない理想世界非暴力によって築くことも可能である。 

 そのような自律経済社会の実現は、まさに私の半世紀前に体験した「幸せな懐かしい未来」を超えた理想の未來社会であり、他から奪うこともないだけでなく、格差もなく、戦争のない核のない善なる世界である。

 本書では、第一章、第二章で、ドイツ及びEUにおいて二〇四五年までに市民イニシアチブのエネルギー転換が実現できることを検証している。

 また第三章ではドイツの電力や水道の湧き上がる再公営化について伝え、市民イニシアチブによるエネルギー転換を通して、再公営化実現がどのような希望ある未来社会を創り出そうとしているか、現場での取組みから述べている。

 そして第四章では、化石燃料支配の利権構造世界がエネルギー転換を阻止するため、私たちの目の届かないところでどのように機能しているか探求した。そのため最近ドイツで世に出され、反響を巻き起こしている『気候レイシズムエコロジー転換への右派の攻撃 Klimarassismus. Der Kampf der Rechten gegen die ökologische Wende』を翻訳して要点を書き記した

 また第五章では、巨大な化石燃料支配に立ち向かうドイツ公共放送の戦いを伝え、現在化石燃料支配を支える極右政党AfDへのドイツ市民抗議デモがドイツ中に拡がる実態を通して、新しい世界への胎動を描いている。さらに第六章ではそのような新しい世界への胎動は、これから押し寄せる禍を力として、世界のすべての地域を互恵的利他主義でエネルギー自立させることで可能であることを述べている。

 第七章の「核のない善なる世界」誕生の物語では、現在の世界危機を踏まえて予想される洪水、食料危機、感染症の蔓延などの禍を力として、どのように核のない善なる世界が実現できるかを描いている。

 そして最終章の「幸せな懐かしい未来を超えて」では、そのような理想社会は、単に私やヘレナ・ホッジが半世紀前に見た「幸せな懐かしい未來」への回帰ではなく、お金に依存することもなく、都市に暮らすこともない、生活の楽しみや幸福感や豊かさが溢れる善なる社会であることを具体的に検証している。

 

 目次

序章 核のない善なる世界創出の思い 21

ガザの地獄絵図を見るなかで 22私の体験した「幸せな懐かしい未来」 25禍を力として自律経済社会の創出 30

第一章 ドイツ市民のエネルギー転換 35

アーヘン市民の太陽光普及の哲学 36再生可能エネルギー法施行 38再生可能エネルギー法の改悪 41禍を力とした歴史的転換 44貫かれる気候正義 47

第二章欧州連合を解き放つ市民のエネルギー転換 50

二〇一八年の新たな欧州連合のエネルギー指針 51革命的に拡がるヨーロッパのエネルギー転換 55

第三章 ドイツで始まった再公営化 59

脱原発でのドイツ市民の哲学 60市民イニシアチブのハンブルクでの再公営化 66ベルリン再公営化の挫折と勝利 69拡大する市民イニシアティブのエネルギー転換 74なぜ今、市民イニシアティブへの転換なのか 79

第四章 気候人種差別の台頭 84

気候人種差別の台頭 85『気候人種差別』が訴える化石燃料支配との闘い 88

第五章 化石燃料支配と戦うものたち 98

何故今、エネルギー転換が攻撃されるのか 99極右政党(AfD)の「緑の党」攻撃 101

「戦う民主主義」を掲げる公共放送の報道 106戦う公共放送の潜入取材 111ドイツから始まった世界を変える市民デモ 117

第六章 エネルギー転換が創る新しい世界 123

利権構造が生み出す戦争を止められない世界 124エネルギー転換による利権構造のない世界 131

第七章 「核のない世界」誕生の物語 137

二〇三〇年の衝撃が生み出した世界地域連合 138自己決定権を持つ地域政府が創り出す新しい社会 144国民国家連合のもう一つ別な世界 150大都会東京が崩壊する日 156市場経済を終わらせた世界地域連合の戦略 161戦争のない核なき世界誕生 166世界地域連合憲章 164物語から始まる「幸せな懐かしい未来を超える世界」170

 終章 幸せな懐かしい未来を超えて 177

地域市民が創り出す芸術の復興 178共に生きる社会 180医師と店員が同賃金の社会 183

幸せな懐かしい未来を超えて 187

「著者の紹介一」 195

私の「核のない未来」へのルーツ 195シェーナウへの私の訪問 196スラーデック御夫妻の日本訪問 199巻町講演会でのスラーデック御夫妻の思い 204巻町交流会での住民の思い 208公共哲学京都フォーラムでの「核のない未來」議論 217広島での黙祷と誓い 222

「著者の紹介二」 231

私のゴルフ場開発反対運動と行政訴訟 231ゴルフ場開発反対への決起 232

反対運動の光と影 234切り拓かれた反対運動 238立木トラスト 240田中角栄を生み出した風土 245環境アセスメント 247明るみに出た不正取水 248行政訴訟 251