(167)ドイツ巨大電力企業の終わりが意味するもの・・・万民が救済される第七大陸は近い

アールターグドイツ14・ドイツが創る未来への希望5・見えてきた理想社会の到来

上の9月18日放映されたエネルギー転換を支援するZDFフィルム『電気料金のトリック3−3』では、現在ドイツ社会の一世を風靡する専門家ウベ・レプリヒ教授は、エコ電力は市場を通してではなく、直接消費者に売られなければならないことを強調し、以下のように述べている。
「そのような画期的なシステム転換は絶えず勝利者と敗者を持ち、敗者は石炭や原発の巨大電力基盤でこれまで非常に恵まれたビジネスモデルの古い役者であり、暫時その役を失っていく」
そしてフィルムのナレーターが、「RWEは全ての巨大電力企業同様に危機に陥っている。何故なら、発電所が益々稼げなくなってきているからである」と述べて、実際にRWEスポークスマンのボルカー・ヘックをインタビューしている。
RWEヘックは2010年の取材で、原発稼働機関28年の延長で4大巨大電力企業に原発だけで2250億ユーロ(約30兆円・・エコ研究所試算)の利益があることから、「原発は消費者、経済、気候変動に善である」と胸を張って述べていたが、今回はしおらしい程謙虚に危機を認めており、盛者必衰の理りを感ぜずにはいられない。
ZDFフィルムでは、それを立証するかのようにRWEの株式が脱原発以降59パーセント下降し続け、他の巨大電力企業の下降も同様であると指摘している。
さらにそれを裏付けるように著名なロンドン金融アナリストのジェラート・リードは、「全体として、(現在の危機を)克服できないことに議論の余地はない。再生可能エネルギーはこれらの企業にとって緑の党メンバーの玩具だった。全く単純にそのように見ていたが、ここドイツではいつの間にか再生可能エネルギーが40ギガワットを超えている。そして巨大電力企業は言う。「大変だ、何かが起きている」と、彼らは今目覚めた」と述べ、巨大電力企業の見通しは壊滅的であり、新たな巨大再生可能エネルギーの投資も需要が減り続けることから失敗すると断言している。
それゆえZDFナレーターは、「巨大電力企業の没落は考えられている以上に早く進行するだろう。何故ならエネルギー転換で益々多くの消費者が自ら電力をつくるからだ」と述べ、実際にブレマーハーフェンの海産物企業ドイツゼーを取材している。
ドイツゼーのエネルギー担当者は工場の屋上屋根1600平方メートルの太陽光発電にZDF取材者を案内し、2012年から自家発電に取り組み、太陽光自家発電が既に電力企業から買う電力よりも安いことから、全てを自家発電することを明言していた。
そしてZDFフィルムの最後は、「電力を安く製造する多くの小さな発電装置が益々巨大発電所を不要に追い込んでいく。エネルギー転換はラジカルに変化する」と述べ、現在の電気料金の高騰に対して余りにも遅い政府の対応を非難して結んでいた。

このZDFフィルムは、むしろ『巨大電力の終わりに』というセンセーショナルなるなタイトルが相応しく、既に巨大電力企業よりも地域の小さなエコ電力企業の方が有利となっていることは、世界に革命的変化を暗示している。
何故ならそれは、商品の殆どを先進国に依存する途上国においても、将来的に安いエコ電力で地域生産した方が有利であることを示し、現代の巨大企業が最も生産の安い場所で大量生産する世界支配構造(現代の植民地主義とも言うべき新重商主義)の終わりを意味している。
それは人類が狩猟生活から農耕生活へ移ることで格差が拡がって行った大転換にも匹敵するものであり、これまでの化石燃料による外へ外へと拡がる新自由主義の経済支配世界とは対照的に、再生可能エネルギーによる内へ内へと拡がる地域直接民主主義の理想的世界実現であり、格差も絶えず小さくなることが求められる世界の到来である。

このような到来を実現するためには、ドイツのエネルギー転換の状況を皆で知らせ合って行けばよい。
それは、脱原発への市民の最強の戦略でもある。
原発がどのように危険性が高く、安全な最終処分場などないとしても、巨大企業に利益をもたらすものであれば、国民の意思とは逆に原発ルネッサンスへと推進されていく。
しかしドイツのエネルギー転換で、市場を通さない再生可能エネルギーによるエコ電力が、既に原発を含む市場電力価格よりも安くなっている事実は、巨大電力企業の終わりを意味している。
それは日本でも同じであり、このようなドイツの事実情報を拡げて行けば、産業の地殻変動を起し、必ず日本においても脱原発は実現できる。
同時にそれは、巨大企業に奉仕する官僚支配国家を国民に奉仕する官僚サーバント国家に変えて行くことでもある。