(208)ドイツメディアから考える今9・・原発ロビーの逆襲5(何故露骨な逆襲が行われるのか)

上のZDFフロンタール21『ブレーキが踏まれるエネルギー転換』後半が描くように、ドイツの風力や太陽光によるエコ電力を最早原発電力より安くなるまでに発展させてきた再生可能エネルギー法(EEG)支援制度が、6月24日〜27日の連邦議会で葬られようとしている。
そこでは(EEG改革法案)全てのエコ電力に市場取引を義務化し、再生可能エネルギー発電建設に公募入札を強いている。
そのような明らかにエネルギー転換にブレーキを踏む法案決議が、公共放送ZDFからドイツ最大の環境自然保護団体BUNDに至るまで圧倒的多数のドイツ国民の反対するにもかかわらず(注1)、まるで世論を無視するかのように決議されようとしている。
しかもその改革法案では、これまでEEG賦課金を免れていた家庭や企業の再生可能エネルギー自家発電に対しても、市場電力の40%の賦課金が課税されることになる(注2)。
このように強引にエネルギー転換にブレーキが踏まれようとするのは(既にEEG改革法案はEUとドイツ政府の合意事項であることからすればブレーキが踏まれたと言うべきかも知れないが)、ドイツの加速するエネルギー転換が巨大資本にとって不利益であるばかりか、命取りになり兼ねないからである。
したがってドイツ市民の多くに企業側の主犯と見なされているエッティンガーEUエネルギー担当委員は、「豚の疾走するようにコントロールできない風と太陽を取り除かねばなりません」と、全くしたたかに述べている。
その背景には、ドイツの加速するエネルギー転換を市場取引と公募足枷で減速させ、ロビイストによる原発と褐炭路線を推し進め、化石燃料が実際に枯渇する頃には再生可能エネルギーでも、巨大資本が世界を支配する構図が見えてくる。

したがって何故露骨な逆襲が行われるかと言えば、現在の産業構造が行き詰まるだけでなく、1%のための中央集中型支配世界から99%のための地域分散型協働世界へのパラダイム転換が見えてきたことから、危機に追い詰められた巨大資本がなりふり構わず生き残るために攻撃に転じたからだ。
すなわち世界の巨大資本が、IAE(国際エネルギー機関)を通して統一したエネルギー政策によって、そしてロビイストに支配される国家を通してTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)やTPPI(環大西洋貿易投資パートナー)によって、世界統治を開始したからだと言えよう。

そうした流れであるからこそ、通常ではあり得ない安倍内閣が再び誕生したのであり、安倍晋三の描く「美しい日本」と世界の巨大資本が描く「美しい世界」が一致するからに他ならない。
そこでは、国民世論で6割近くの国民が集団的自衛権反対、原発再稼働反対であっても、民意無視で強行される。

しかし時代の流れは紆余曲折はあるにしても最早変えれない。


(注1)例えばドイツ最大の環境自然保護団体BUND(会員数50万人)は以下のように激しく非難している。
http://www.lokalkompass.de/dortmund-ost/politik/bund-politik-darf-erneuerbare-energien-nicht-ausbremsen-massive-kritik-am-eeg-gesetzentwurf-d441329.html

BUND: "Politik darf erneuerbare Energien nicht ausbremsen" - Massive Kritik am EEG-Gesetzentwurf
政治は再生可能エネルギーにブレキーを踏んではならないー再生可能エネルギー法草稿への激しい批判

Angesichts der Anhörung im Umweltausschuss des Deutschen Bundestages bezüglich des Erneuerbare-Energien-Gesetzes kritisiert der Vorsitzende des Bund für Umwelt und Naturschutz Deutschland (BUND) Hubert Weiger massiv, dass Bundesumweltministerin Hendricks mit einem Aktionsprogramm das absehbare Verfehlen des Klimaziels zu vermeiden suche, während gleichzeitig Energieminister Gabriel mit seiner EEG-Reform das erfolgreichste Klimaschutzinstrument Deutschlands ausbremse.
再生可能エネルギー法に関連してドイツ連邦議会の環境委員会の聴聞を目の前にしてドイツ環境自然保護団体BUND代表フーベルト・ヴァイガーは、連邦環境大臣ヘンドリックが行動計画で気候変動目標の予見できる過ちを防ごうとしている一方で、経済エネルギー大臣ガブリエルが再生可能エネルギー法改革で成功しているドイツの気候保護手段にブレキー踏むことを激しく批判する。
"Passiert das Erneuerbare-Energien-Gesetz in seiner jetzigen Form das Parlament, wird nicht nur das Ausbauziel für Wind- und Sonnenstrom verfehlt, sondern auch das nationale Klimaziel von 40 Prozent CO2-Reduktion bis 2020“, so Hubert Weiger weiter.
再生可能エネルギー法が提出された草稿で議会を通過するなら、風力発電太陽光発電の建設目標が損なわれるだけでなく、2020年までに40%CO2排出量削減のドイツの気候目標が損なわれる』とさらに批判している。
Keine Deckelung für Windstrom & Solaranlagen
風力発電太陽光発電に対する抑制破棄

Der BUND-Vorsitzende fordert die Aufhebung der geplanten Deckelung für Windstrom an Land und für Solaranlagen von je 2500 Megawatt. Im EEG festgeschrieben werden müsse außerdem ein Anteil erneuerbarer Energien von mindestens 45 Prozent bis 2020 und 75 Prozent bis 2030.
BUND代表は州の風力発電太陽光発電の各々2500メガワットの計画された抑制破棄を要請した。再生可能エネルギー法では、とりわけ再生可能エネルギーの割合を2020年までに45%、2030年までに75%を明記しなければならない。
In der ab 2017 geltenden Ausschreibungsregel sieht Weigel eine weitere Fehlsteuerung im Entwurf des Erneuerbare-Energien-Gesetzes. Demnach könnten künftig nur noch solche Investoren Erneuerbare-Energien-Anlagen errichten, die per Ausschreibung den Zuschlag dafür bekämen. Da Ausschreibungen Großinvestoren begünstigten, könne dies für viele private Kleinanleger und Bürgerenergie-Projekte das Aus bedeuten.
2017年から有効になる公募を、ヴァイガー代表はさらに誤ったコントロールであると見なしている。その後では、公募ごとに落札した投資者だけが将来再生可能エネルギー発電を建設できる。それはまさに公募が大投資家に好都合であり、多くの個人小規模発電者や市民エネルギープロジェクトを締め出すことを意味している。
Vergünstigungen für Braunkohlewirtschaft
褐炭経済にとっての優遇措置

Bei der Erhebung der EEG-Umlage müsse das Erneuerbare-Energien-Gesetz künftig auch Kohle- und Atomkraftwerke sowie Braunkohletagebaue für deren Eigenstromverbrauch einbeziehen, forderte der BUND-Vorsitzende. Von Vergünstigungen bei der EEG-Umlage profitiere allein die Braunkohlewirtschaft jährlich mit rund 900 Millionen Euro. Würde die Bevorzugung von Kraftwerken und Tagebauen beim Eigenstromverbrauch abgeschafft, könnte die EEG-Umlage um etwa zwölf Prozent von jetzt 6,24 auf 5,5 Cent pro Kilowattstunde sinken, sagte Weiger.
EEG賦課金の徴収では、再生可能エネルギー法は石炭発電所原子力発電所、並びに褐炭発電所は固有電力消費として算入しなければならない、BUND代表は要請する。EEG賦課金の優遇制度では、褐炭経済だけが年間およそ9億ユーロを得ている。固有電力消費で褐炭発電所や露天掘り優遇を破棄すれば、EEG賦課金は凡そ12%下がり、キロワット時当たり現在の6,24セントから5,5セントに下がると、代表は述べている。

(注2)6月12日のシュピーゲル誌オンライン
http://www.spiegel.de/wirtschaft/soziales/oekostrom-hausbesitzer-mit-solaranlage-sollen-eeg-umlage-zahlen-a-974664.html


Hausbesitzer mit Solaranlage sollen EEG-Umlage zahlen
太陽光発電の家庭所有者は再生可能エネルギー法賦課金を支払わなくてはならない

Die Selbstversorgung mit Ökostrom wird für Hausbesitzer und Unternehmen offenbar unattraktiver: Die Bundesregierung will Medienberichten zufolge auch selbst erzeugten Ökostrom mit einer EEG-Umlage von 40 Prozent belegen.
エコ電力の自給は家庭所有者や企業にとって明らかに魅力的でなくなるだろう。メディア報道によれば、政府は自給エコ電力に再生可能エネルギー法賦課金の40パーセントを課税しようとしている。
Berlin - Bei der Ökostromreform soll nach Angaben aus dem Bundestag selbst erzeugte Elektrizität aus allen Quellen gleich behandelt werden. Die Umlage zur Förderung des Ökostroms werde ungeachtet der Erzeugungsart etwa 40 Prozent betragen, wie aus Kreisen der Energieexperten des Parlaments bekannt wurde. "Es läuft auf 40 Prozent zu", hieß es. Zuvor hatte die "Frankfurter Allgemeine Zeitung" ("FAZ") berichtet, dass eine Umlage in dieser Höhe für Ökostrom geplant sei.
ベルリン発。連邦議会からの申告に従えば全ての電源からの自給される電気は等しく扱われる。エコ電力支援の賦課金は、議会のエネルギー専門家仲間では知られていたように、製造種類に関係なく凡そ40%の額になる。すなわち40%に通じている。以前にフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)はエコ電力に対する賦課金はこの規模になることを伝えていた。
Aktuell wären das 2,5 Cent je Kilowattstunde, die alle Ökostromproduzenten bezahlen müssten - ganz gleich ob Privatmann, Handwerksbetrieb oder Industriekonzern. Darauf hätten sich die Unterhändler der großen Koalition mit Wirtschaftsminister Sigmar Gabriel (SPD) geeinigt, berichtete die "FAZ". Die Regelung soll für alle Neuanlagen gelten, die ab 2015 ans Netz gehen.
現実的にはキロワット時当たり2,5セントとなり、全てのエコ電力製造者は個人であれ企業や巨大企業であれ、全て等しく支払わなければならない。大連立の交渉人はシグマ―・ガブリエル経済大臣とそのように合意したと、FAZは伝えていた。政府は2015年から電力網に入る全ての新しい設置に有効にする。
・・・以下省略