(240)ドイツの利権構造とプロパガンダ(4)乗っ取られた再生可能エネルギー法EEG

上のフィルムで見るように、ドイツの4大電力企業側の者と指摘され、自らもZDFの取材に逆切れしているEU委員会エネルギー政策責任者エッティンガーは、化石燃料エネルギーの巨大資本が求める原発推進と石炭火力発電維持を最優先させた。
すなわち自国ドイツで成功しているエネルギー転換を最初潰すために、再生可能エネルギー法EEGを廃止しようとした。
しかしこのフィルムで見るように、ドイツ再生可能エネルギー法EEGの調査をフラウンフォーファー研究所に依頼した際、国際エネルギー機関IEAも再生可能エネルギーの劇的進展に目が開かれ、これまでの化石燃料エネルギー固守では生き残れないことを自覚し、ドイツの再生可能エネルギー法を乗っ取ることで次世代の再生可能エネルギー支配に転換したように思われる。
それは、2030年までのエネルギー政策をあくまでも原発と石炭維持としながらも、世界の2035年までの投資予想では再生可能エネルギーの投資が3分2近くを占め(61、4%)、16,4兆ドル(約2000兆円)にも上ることを公表していることからも、明らかである。
それゆえにドイツの4大電力企業は、昨年2014年にこれまで敵対視していた再生可能エネルギーに対して、企業戦略として再生可能エネルギーに集中する180度転換政策を公表している(それまでは太陽光発電はアラスカでパイナップルを栽培するように国民に負担を強いるとか、ドイツの風力発電はドイツの電力網に1%以上絶対に入らず、再生可能エネルギーが増えれば停電が起きるとプロパガンダを撒き散らしていた。現在では、再生可能エネルギーが総電力の40%となるまでは、現在まだ高い蓄電システムを採らなくても安定ということが実証されてきている)。
もっともドイツの再生可能エネルギー法EEGへの戦略攻撃は、ドイツ市民のエッティンガー批判が高まることで失速するようなものではなく、ドイツのエネルギー政策を担う経済大臣ガブリエル(SPD)の弱点も綿密に計算されるほど巨大な利権構造が関与していた(例えばSPDのガブリエルは側近としてシュレーダー前首相に仕えてきたことから、ドイツ産業連盟BDIの脅しには弱く、EEG改正で巨大企業の再生可能エネルギー法負担金免除の撤回を求めたところ、会長からそのようなことをすればドイツ産業はドイツから出て行くと脅され、免除撤回案を取り下げたと伝えられている)。
それゆえ、EUもしくはIEAの思惑が成功したと言えよう。

巨大資本にとってEEG改正法の最大の収穫は、2017年から事業規模の風力発電太陽光発電、バイオ発電開発が公募入札に決定されたことである(注1)。
公募入札は一見公正に見えるが、実際は巨大資本が安値で殆ど入札権を奪うことから、現在までドイツのエネルギー転換を担って800以上に急増している市民エネルギー協同組合が根こそぎにされることを意味し、2017年以降エネルギー転換の4大電力企業へのバトンタッチへの目論みが明白である(1998年のドイツ電力自由化でも、利権構造が形成されるなかで100社にも及ぶ新規参入企業が法外な電線網使用料で壊滅され、逆に寡占と独占支配を許した)。
EEG改正で固定買取価格の2015年17セントから12セントへの大幅な値下げは、家庭太陽光発電が20年換算で現在の電気料金の半分以下に下がるまでにエネルギー転換が階段を一段上がったというポジティブな見方もできるが、その裏側で再生可能エネルギー発電事業者の販売売上に助成金(プレミア)を上乗せる方向で動き出したことから、ここでも4大電力企業へのバトンタッチは奏功している。
さらにエネルギー転換のスピードも、IEA及び4大電力企業に配慮してコントロールできるようにした。
すなわち再生可能エネルギー発電の新規設置に枠組がつくられ、陸上風力発電2,5GW、太陽光発電2,5GW、バイオ発電0,1GWの上限が設けられ、それを超えた場合助成金が事業が成り立たない額に引き下げられた。
それはまさに、エネルギー転換にブレーキをかけることを意味し、石炭火力発電所を長期に延命させるものである。
そして市民が推進するエネルギー転換の心髄である自家発電にまで攻撃はなされ、2014年6月のEEG改正の連邦議会では最初市民の家庭太陽光自家発電にまでEEG負担金を求めたが、ドイツ市民の激しい反対で負担金課税は見送られた。
しかし急増している事業者の自家発電に対しては、2015年からEEG負担金の30%、2016年35%、そして2017年以後は40%(2,5セント)の負担金課税が決められた。
このようなドイツのEEG改正は、脱原発へのイニシアティブを取ったオラーフ・ホフマイヤー教授(2010年秋までメルケル政府環境問題顧問、現フレンスブルグ大学教授)が、「ドイツはEEG改正で大きな間違いをした」と断言するように(下にインタビューを翻訳)、再生可能エネルギー法EEGの理念を葬り、巨大資本に乗っ取られたと言っても過言ではないだろう。
しかしこのような巨大資本のエネルギー転換の乗っ取りで、2010年の原発運転期間延長決議の後市民が逆に炎を燃え上がらせたように、白旗を揚げるドイツではない。

(注1)ドイツ2014年EEG改正
https://www.clearingstelle-eeg.de/eeg2014
下段に載せられたPDFの28ページ第55項公募入札参照

Landeszeitung Lüneburg: EEG-Novelle bremst die Energiewende / Experte Prof. Dr. Hohmeyer: Gesetzesreform sichert die Profite der großen Energieversorger und Kohlekraftwerke
リュネブルク新聞再生可能エネルギー法EEG改正はエネルギー転換にブレーキを踏む。エネルギー専門学者ホフマイヤー教授は巨大エネルギー供給者及び石炭火力発電所の利益を確信する。
http://www.presseportal.de/pm/65442/2776271/landeszeitung-lueneburg-eeg-novelle-bremst-die-energiewende-experte-prof-dr-hohmeyer-gesetzesreform

03.07.2014 – 19:01Presseschau
Lüneburg (ots) - Die große Koalition hat ihre Ökostromreform trotz heftiger Kritik durchs Parlament gebracht. Aber ob die Novelle des Erneuerbare-Energien-Gesetzes (EEG) wirklich am 1. August in Kraft treten wird, entscheidet sich in den kommenden vier Wochen in Brüssel. Weil große Teile der Industrie von der Finanzierung der erneuerbaren Energien ausgenommen sind, muss das Gesetz von der Kommission der Europäischen Union als Beihilfe gebilligt werden.
大連立政権はエコ電力改正に議会での激しい批判を浴びたが、EEG改正が実際に8月1日から実施されるかどうかは、次のブルッセルの第四週に決められる。何故なら産業の大部分が再生可能エネルギーの資金調達から除外されており、EU委員会によって法案は助成金として承認されるからである。
Prof. Dr. Olav Hohmeyer von der Uni Flensburg kritisiert die Novelle: "Mit dieser Gesetzesänderung verspielt Deutschland seine Vorreiterrolle in Sachen Klimaschutz. Die Glaubwürdigkeit ist dahin."
フレンスブルグ大学のオラーフ・ホフマィヤー教授は「この法改正でドイツは気候変動保護の先駆的役割を失う。すなわち信用を失う」と批判する。
Angestrebt war mit der Novelle eigentlich auch eine Vereinfachung. Ist das EEG nun so konzipiert, dass auch Normalbürger noch den Durchblick haben?
改正では本質的に簡素化がなされた。今では再生可能エネルギーEEGは、一般市民がまだ展望を持つことに考案しているのでしょうか?
Prof. Dr. Olav Hohmeyer: Nein, das EEG ist durch die Novelle noch erheblich komplizierter geworden. Für einen Normalbürger ist das nicht mehr zu durchschauen.
「いいえ、EEGは改正で恐ろしく複雑になりました。一般市民にとって最早理解できないものです」
Wird die Idee einer dezentralen Energieerzeugung endgültig gekippt?
分散型のエネルギー製造は最終的に転倒されるのでしょうか?
Prof. Hohmeyer: Die EEG-Novelle und speziell die ab 2017 geplante Umstellung auf ein verbindliches Ausschreibungsmodell verdrängt das Bürgerengagement komplett aus der Energiewende. Damit ist die Energieerzeugung in Bürgerhand ab 2017 tot.
EEG改正法ととりわけ2017年から拘束力ある入札方式の計画された転換は市民参加をエネルギー転換から完全に排除します。それで市民の電力製造は2017年から終わりになります」
Jammert die Industrie zu Recht?
残念ですね、産業の権利で?
Prof. Hohmeyer: Nein. Die Industrie profitiert weiter auf Kosten des normalen Stromverbrauchers und der kleinen und mittleren Unternehmen, die den, durch das EEG, extrem billigen Strom an der Börse über die EEG-Umlage finanzieren. Auch in Zukunft wird gerade die energieintensive Industrie auf diesem Weg massiv subventioniert.
「そうではありません。巨大産業資本はEEG負担金を通して、市場価格取引の非常に安い電力を負担する一般電力消費者や中小企業の電気料金で、これからも利益を得ます。将来においても巨大電力産業はこのようなやり方で巨額に助成されます」
Was passiert 2017, wenn der Vertrauensschutz für industrielle Eigenstrom-Erzeugung ausläuft? Kommt dann der große Strompreis-Sprung?
産業用自家発電に信頼保護法が実施される(産業用自家発電にEEG負担金の40%が課せられること)2017年には何が起きるのでしょうか?電力料金の急上昇でしょうか?
Prof. Hohmeyer: Nein, es kommt zu einer Kostenerhöhung für die industrielle Eigenstromerzeugung, die heute keinerlei Infrastrukturkosten bezahlt und auch keinen finanziellen Beitrag zur Energiewende leistet. Hier werden wir eher Preisgerechtigkeit erleben als den großen Strompreis-Sprung für die Industrie.
「いいえそうではありません。現在小さな電力製造者がインフラ費用を支払い、エネルギー転換に全く負担しなかった産業電力企業には費用上昇が生じるでしょう。ここで私たちは、巨大産業の電力料金急上昇以上にむしろ電気料金の公正さを体験するでしょう」
War die Grundidee richtig, vorwiegend den Verbraucher die Energiewende bezahlen zu lassen?
消費者にエネルギー転換を大部分支払わせる基本理念が正しかったのでしょうか?
Prof. Hohmeyer: Zunächst war es richtig, die energieintensive Industrie von Zusatzbelastungen durch die EEG-Umlage freizustellen. Heute sind wir aber beim Gegenteil angekommen und der Verbraucher zahlt einen viel zu hohen Anteil der Kosten. Dies kann und muss man ändern.
「さしあたりは、エネルギー大量消費産業がEEGの付加負担から免除されていたのは正しかったでしょう。しかし現在は逆です。消費者は費用の余りにも高い割合を支払っています。これは変えなくてはなりません」
Verdient die EEG-Novelle noch das Öko-Label?
EEG改正法はまだエコとして役立ちますか?
Prof. Hohmeyer: Nein, die EEG-Novelle bremst die aus Klimaschutzgründen notwendige Energiewende und führt durch falsche Anreize zu einer massiven Ausweitung der Kohleverstromung. Dies hat mit Umwelt- und Klimaschutz nichts mehr zu tun. Es ist eine Novelle zur Einkommenssicherung für die großen Energieversorger und zur Sicherung der langfristigen Wirtschaftlichkeit von Kohlekraftwerken.
「いいえ、EEG改正法は気候変動保護として不可欠なエネルギー転換にブレーキをかけ、石炭供給拡大の間違った促進を導きます。これでは最早環境保護、気候変動保護を実現できません。それは、巨大電力企業への所得保証、そして石炭火力発電所の長期的経済性保証の改正法です」
Verabschiedet sich Deutschland von seiner Vorreiterrolle in Sachen Energiewende?
ドイツはエネルギー転換の先駆的役割を止めるのでしょうか?
Prof. Hohmeyer: Ja. Deutschland macht hier einen Riesenfehler. Wir verlieren unsere Vorreiterrolle und verspielen auch gleichzeitig das Vertrauen in die Glaubwürdigkeit der deutschen Energie- und Klimapolitik.
「そうです。ドイツは大きな間違いをした。私たちは私たちの先駆的役割を失い、同時にドイツエネルギー政策と気候変動政策の信憑性の信頼を失いました」
In der Großen Koalition wird schon vom EEG 3.0 gesprochen. Verspielt die Regierung ihre Verlässlichkeit in der Energiepolitik?
大連立政権ではEEG3.0が既に報道されています。政府はエネルギー政策の信頼を失うのでしょうか?
Prof. Hohmeyer: Die Regierung verschlimmert die Sache auch noch durch die Ankündigung weiterer Reformschritte in die falsche Richtung. Diese Politik reiht sich nahtlos in den völlig unsinnigen Ausstieg aus dem Ausstieg aus der Kernenergie aus dem Herbst 2010 ein, der dann nach Fukushima gleich wieder kassiert wurde. Auch diese EEG-Novelle muss in ihrem Kern möglichst bald rückgängig gemacht werden.
「政府はさらなる改正措置でエネルギー政策を間違った方向に悪化させます。このような政策は2010年秋の脱原発の全く馬鹿げた廃止と同じで、福島原発事故後に再び破棄されましたが、絶え間なく続けます。同様に、このEEG改正はその核心を出来うる限り撤回させなくてはなりません」
Zeugt das hektische Nachbessern in den vergangenen Wochen, dass die Zeit einer rein nationalen Energiepolitik zugunsten einer europäischen beendet werden muss?
一国家のエネルギー政策はヨーロッパのエネルギー政策のために終わらなければならないという慌ただしい修正が、先週示されたのでしょうか?
Prof. Hohmeyer: Nein, sie zeugt nur davon, dass eine reine Klientelpolitik zu Gunsten der großen Energieversorger und zu Gunsten der deutschen Industrie im europäischen Rahmen keinen Bestand haben wird. Vorreiter in Sachen Energiewende könnten wir in Europa bleiben, wenn wir nur die richtigen Politiker dafür hätten.
「いいえそんなことはありません。それは、ヨーロッパの巨大電力企業のため、ドイツ産業のためというクライアント政策は存続しないことを示しています。そのため公正な政治家さえ持てさえすれば、私たちはヨーロッパでのエネルギー政策で先駆者であり続けるでしょう」