(324)時代の終わりに(8)パラダイム転換3(シェーナウの電力セミナー)・沖縄から創る世界平和3(沖縄から訴える国民ファースト)

パラダイム転換3(シェーナウの電力セミナー)

私が上の動画を見て驚いたのは、2002年スラーデック御夫妻が“核のない世界”を掲げて来日した時、高校を卒業したばかりの息子セバスチャンがカメラなどの記録係として同行していたが、そのセバスチャンが今やシェーナウ電力会社代表となり、世界の脱原発及びエネルギー転換を訴えていたからである。
何故なら私の印象に残っているのは、柏崎原発資料館での見学の際「お父さんは、来る日も来る日も脱原発で、僕の思いなど・・」と泣きながら拒んだセバスチャンであったからだ。
もっとも連日の強行スケジュールで、東京での連日の講演の後一日の休みもなく巻町に前日に着くと、すぐさま午後から講演交流会、そして夜は巻町の人たちと歓迎懇談会に明け暮れ、翌日のスケジュールは巻原発予定地見学だけであったが、熱心な誘いから岸壁にそそりたつ予定地を見学した後すぐさま柏崎へ直行し、原発資料館見学、さらには刈羽村原発反対の住民との懇談会という凄まじいものであったからだ。
そのセバスチャンが代表となり、この動画の終わりで「私は、すべて人がはっきりと目を開けて行けば、ジレンマを克服し、大いなる目標を最終的に実現できると確信します」と誓う姿に、喜びとエネルギー転換の新しい世界の到来を期待せずにはいられない。
もちろんその到来はこのセミナーからも見えてくるように、2014年EEG法改正でブレーキがかかったからである。
すなわち市民の造る再生可能エネルギーの固定買取制度を終わらせて行き、風力発電建設なども競争入札へと移行し、市民の創る再生可能エネルギー組合も経営が難しくなるように、政府が巨大電力企業の圧力で方針を転換させたからだ。
しかもドイツの4大電力企業は、この年従来の化石燃料エネルギーから風力や太陽光の再生可能エネルギーへの転換指針を表明し、一転してこれまでエネルギー転換を妨害してきた側から、推進側に変わったかのように見える。
しかし実際はEEG改正でエネルギー転換のスピードを弱め、石炭火力発電所原発も可能な限り長く継続させるというソフトランディングな従来通のしたたかな巨大資本戦略が見えてくる。
もちろんその間再生可能エネルギーに巨額な投資をして行き、エネルギー転換の終着点でも巨大企業支配は変わらないのである。
そのような巨大資本のしたたかな戦略をドイツの意ある市民は見抜き、あくまでもエネルギー転換は市民が創るエネルギー転換でなくてはならないと、シェーナウの電力セミナーに集っているのである。
そうした中で2016年のシェーナウ電力セミナーには、私の信奉するエネルギー専門学者ウべ・レプリヒ教授が講演し、「現在政治による多少の後戻りがあるとしても、(市民への)システム転換は必至だ」と講演している。
すなわちシステム転換とは、彼のこれまでの主張からすれば、絶えず敗者と勝者を生み出すことによって発展してきたグロバル集中型大量生産の化石燃料エネルギー巨大資本から、市民が創りだすローカル分散型適正生産の自然エネルギーの市民資本へのシステム転換であるという本質が浮かび上がって来る。
それこそがドイツ市民、そして私が希求するエネルギー転換に他ならない。

沖縄から創る世界平和3(今何を訴えるのか)

この動画は新垣毅「沖縄はなぜ、いま自己決定権を主張するのか―アジアの平和を担う架け橋をめざして」のタイトルで今年4月に開催された緊急学習会であり(注1)、今沖縄基地問題で何を訴えているのか伝えている。
ブログ316で述べたように辺野古座り込みをした際、既に新垣さんの著作『沖縄の自己決定権』を読み、全面的に賛同していた。
この動画ではオリジナルな動画が2時間近いので、特に私の心に響いた訴えを抜粋した。
今沖縄で既に起きているのは、平和を求める人たちをテロリスト呼ばわりするだけでなく拘留もなされており、新垣さんの訴えから再び戦争に向けて歩み始めたことが認識されるだろう。
現在の日本の報道は、一つ一つの事象に対して中立的で賛成、反対の意見を載せるだけで完結しており、公正な報道がなされていないと訴え、公正な報道がなされているのはドイツだけであると述べている。
それについては具体的に述べていないので補足すれば、2015年5月の集団自衛権政府決議の際ドイツ各紙は日本が戦争に再び歩み始めたことを公正に伝えている(ブログ248参照)。
何故ドイツだけが公正な報道ができるかは、ドイツがナチズムを犯したことを真摯に反省し、二度と過ちを犯さないように、日本の手本とした官僚制度を180度転換し、国家主権の官僚支配から国民主権の官僚奉仕へ転換できるようにシステムを変えたからである。
すなわち戦前のドイツの官僚制は無謬神話を通して官僚の責任が問われない仕組みを張りめぐらし、国益と組織利益最優先で必然的にナチズムを生み出したと言っても過言ではない(特に行詰った際は民主主義政府よりも独裁支配政府が機能するから)。
そのためドイツの戦後は、既にブログ298で述べたように司法を政府法務省から完全に独立させ、徹底して責任が問われるガラス張りの仕組みを創り出し、国家主権の官僚支配から国民主権の官僚奉仕に転換させたと言えよう。
そして新垣さんが訴える沖縄問題の原因は憲法にある国民主権が蔑ろにされ国家主権が戦前のように暴走し始めたからであり、国民主権を実現できれば沖縄の民意尊重、沖縄の自己決定権も実現可能であり、それゆえに本土に向けて国民主権を訴えるのである。
その訴えが聞こえたのか、昨日7月2日の都議会選挙では都民ファーストが大勝利した。
まさにそれは国政において「見える化」の国民ファーストを予兆するものであり、そのような政権誕生は現在の戦争に向けられた日本の進路を180度転換し、沖縄から世界平和を創り出すものだと期待したい。

(注1)私の見た完全版動画
https://www.youtube.com/watch?v=AFzyNT5xZ50&t=4417s