(209)ドイツメディアから考える今10・・ZDFズーム(動画)が暴く自由貿易の機密(1)・・集団的自衛権閣議決定の暴挙

上の動画『自由貿易の機密3−1』は、ZDFズームが今年5月21日に放映したものである。
EUではアメリカとの自由貿易協定(環大西洋貿易投資パートナーシップ協定TTIP)は、大資本の利益追求に関与する1%の人たちのものであり、99%の市民の民主主義と自由奪うといった反対運動が拡大している。
しかもEUのメディアもドイツ公共放送ZDFを先頭に、この自由貿易の本質を抉り出そうとしており、ロビイストを通して大資本に支配されるEU委員会の積極的な支持にもかかわらず、締結になりふり構わず進むTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とは対照的に暗礁に乗り上げていると言っても過言でない。
確かに関税を全廃し、貿易の様々のルールも世界で統一化していけば、試算されているようにアメリカでは現在の輸出総額が8%増加し、EUの輸出総額が6%増加し、お互いの富が増大しよう。
しかし市民の側からすれば、関税全廃によって市民に使われる財が奪われ、弱肉強食の競争原理が隅々まで徹底されることで市民側の良心的企業が根こそぎにされ、ボトム競争で賃金だけでなく労働時間などの市民権利が下へ下へとスパイラルしていくことを意味している。
TTIP反対運動が拡大していく理由は、既にEU市民が1993年の欧州連合発足でEU諸国の関税が撤廃され、2000年には競争原理を最優先する「リスボン戦略」が採択されることで、EU全体の富は年々拡大しているにも関わらず、下へのスパイラルを身をもって体験しているからである。
今年5月22日から25日に実施されたEU議会選挙ではそうした批判を如実に示し、EU解体を公約に掲げる極右勢力が3分の1にも達した。
特に自由を象徴するフランスでは、既にブログでも書いたマリーヌ・ルペン党首の国民戦線が第一党になるという驚くべき事態を招いている。
この背景には、2000年以降新自由主義に飲み込まれたEUが競争原理を最優先させることで、強国は益々強く、弱国は益々弱くなるだけでなく、強国においても中間層が弱者へと没落していく現実がある。
特に農業国フランスの地域では、関税撤廃に加えて競争原理最優先で安い東欧の農産物がEU市場になだれ込み、大部分の農民に危機感があるからだ。
ジャンヌダルクとも称されるマリーヌ・ルペンは言葉巧みに、関税復活と地域住民自決権をその危機感に浸透させて支持されたのに対し(あくまでもその先にあるボスニアの悲劇を繰り返しかねない民族主義が支持されたのではない)、本来弱者側の政権与党社会党は選挙の際弱者側であっても、実質的には強者要請を容認する側に回る現実が問われたからだ。

今回のフィルムでは前半は、国益の増大、すなわち大資本の利益増大は万人の利益につながるといった新自由主義の教義から始まり、後半では世界共通のアメリカルールでは安全性に問題があることを提示しているが、自由貿易の機密という本質には全く達していない。
しかし次回のフィルムでは、TPP機密を草案リークで(動画)TPPは貿易協定の衣を着た企業による世界支配の道具 | Democracy Now!世界に名を轟かした市民団体パブリック・シチズンのロリ・ウォラック弁護士を取材し、自由貿易協定の本質を抉り出していく。

集団的自衛権閣議決定の暴挙

「平和国家として歩みをさらに強いものにする」、「国民の命と暮らしを守るため」といった弁明は、ジョージ・オーエルの描いた全体主義国家(『1984年』)が平和省で戦争を追及し、真理省で過去の歴史的事実さえ改竄するやり方と同じだ。
戦後70年の平和憲法が、一内閣の暴挙というべき憲法解釈でかくも容易に葬られるならば、日本は立憲主義国家でないことを内外に知らせるだけでなく、核保有や徴兵制さえ平和の備えとして容易に変更されよう。
そしてこのような暴挙を推し進められていくのは、繰り返し述べれば、1%のための化石燃料の中央集中型支配世界から99%のための太陽光燃料の地域分散型協働世界へのパラダイム転換が見えてきたことから、安倍政権の背後にある危機に追い詰められた巨大資本がなりふり構わず生き残るために自由貿易を通して攻撃に転じたからである。
すなわち集団的自衛権原発再稼働から農協解体、残業手当ゼロ、医療の格差化等々、自由貿易の世界統治ルールが民意など無視して求められているからだ。