(210)ドイツメディアから考える今11・・ZDFズーム(動画)が暴く自由貿易の機密(2)・機密の本質トロイの木馬

市民運動のイコン(聖マリア)と呼ばれるロリ・ウォラック弁護士は、目論まれている自由貿易トロイの木馬であり、「裏口からの素晴らしいEUやアメリカの環境保護規制や消費者保護規制の解体であり、多国籍企業のための権限と特権の新しい制度の構築です」と指摘し、大資本(多国籍企業)が民主主義の空洞化によって世界統治するものだと強調する。
具体的にはTPPに見られるように、自由貿易協定の全26章のうち貿易ルールに関するものは2章だけであり、他の24章の保険、銀行、特許、医療、環境、消費者保護などの分野の国民を守るためのルールが、密かに仕組まれたトロイの木馬で協定締結後自動的に世界統一ルールとなる。
それは、協定締結国が実質的に主権さえも失うことを意味している。
すなわちこの協定によって協定国の暮らし脅かされることで、法律改正などによって投資企業の利益が損なわれることがあれば、この協定国は世界銀行所轄の国際法廷に提訴され、容赦なく確実に賠償責任を負わされる(ISD条項)。

このような協定国の恐るべき悪夢の自由貿易協定が強力の推し進められる理由は、アメリカの大資本に関与する1%の人たちだけでなく、協定国の大資本に関与する1%の人たちにとってもこれ程素晴らしい協定はなく、相手国の貿易投資保証は相手国の国民税金によって無制限に担保されているからだ。
しかも政治献金によって支配される政治が、99%の人たちに不利益をもたらす本質を隠すだけでなく、すべの人にチャンスと幸せをもたらすかのようにプロパガンダしている。
実際は1%の人たちが莫大な富を99%の犠牲の下で獲得しても、これまでその富の雫が下へ滴下したことは世界中どこにもなく、その富は全て投機されることで、ボトム競争を通して益々賃金からあらゆる市民の権利が奪われていく。

このZDFフィルムでは、ドイツの4大電力企業でもあるスーウェデン巨大エネルギー企業バッテンフォールがドイツの脱原発による損害賠償で世界銀行所轄の国際仲裁法廷に提訴していることを通して、この恐るべき仕組みを検証しようとする。
しかし既に連邦議会さえ、バッテンフォール提訴書類は機密事項に指定され、それ以上機密の検証が進まないにもかかわらず、40億ユーロと言われる賠償責任だけが進行している。
またEU委員会の自由貿易責任者の取材でも、責任者は全く本質に触れようとせず、強固なロビイスト支配を窺わせる。
したがってZDFは突破口をブリュッセルのロビー活動に求めていく。

次回の最終回ではロビー活動の実際のやり方と実態が描かれ、ZDFは国民の側に立って出口(解決策)を求めていく。