(211)ドイツメディアから考える今12・・ZDFズーム(動画)が暴く自由貿易の機密(3最終回)・連鎖する財政破綻

最終回フィルムの前半ではロビイストの実態を検証することで、企業が政治に献金し、政治が献金の代償として産業の要請する法案を決議する仕組みを浮き彫りにしている。
この仕組みは以前であれば汚職犯罪であり、EUの根幹をなす政策が献金の代償によるものであれば、世界的汚職スキャンダル事件となった筈だ。
しかし現在では法案をEU議会で議論する前に会合が催され、賄賂が献金として公然と合法化され、産業の要請がEU委員会の提言として実現する仕組みが出来上がっている。
そこでは当然弱国及び弱者の市民利益が無視され、強国及び強者の利益が優先されている。
それを、実質的自由貿易協定の責任者であるEU委員会担当委員グフトの取材インタビューを通して見事に抉り出している。
最初グフト委員は、ドイツ連邦経済大臣シグマ―・ガブリエルの投資保証を協定から外すという意見など全く聞いたことがないと否定するが、EU委員会へガブリエルが送った書簡コピーあると切り出すと、聞いているのは投資保証を必ずしも協定に入れる必要はないということだと、したたかに言い直している。
そのやり取りを見た多くのドイツ市民は、エッティンガーEUエネルギー担当委員同様にグフト委員は既に企業側に完全に支配されていると感じた筈だ。
そしてZDFの最終的姿勢は、大西洋自由貿易は自動車の点滅灯や機械コードの統一化で経済貢献することに異論はないが、食品基準などの消費者保護規制や環境保護規制の統一化には慎重であることを求めている。
また機密扱いの投資保証には反対姿勢を鮮明にし、各国議会を無視するやり方は認められないとし、そのようなやり方で市民を損なってはならないと訴えている。
ZDFはドイツの公共放送であることから、あくまでもその使命に沿っており、脱原発の際のようにまだ国民の声が盛り上がっていないことから、前回ロリ・ウォラック弁護士の主張を通して自由貿易の機密を暴き出したが、今回の締め括りの訴えでは物足りなささえ感じられた。

その点パブリックシチズンのロリ・ウォラック弁護士は、現在の自由貿易協定を目論む産業巨大資本は投資保証で国民の血税を吸うドラキュラ―であり、対処法はいたって簡単で光をあてること、すなわち機密を市民にガラス張りに開かせることだと断言している。

その言葉を通して今着々と進む世界資本の剥き出しの行動に耳を傾ければ、国民の血税を産業への助成や投資保証で究極的には財政破綻するまで吸い取り、支配下世界銀行IMF管理で各国の邪魔な主権さえ奪う世界支配の囁きさえ聞こえてくる。

そして現在の日本に耳を傾ければ、財政健全化の消費税増税にもかかわらず、500兆円の国家負債を800兆円まで増大させた新自由主義小泉構造改革を上回る産業助成が肥大しており、私には財政破綻の足音がヒタヒタと聞こえてきている。