(238)ドイツの利権構造とプロパガンダ(2)EUのドイツエネルギー転換潰し

ドイツ政府の公的資金で運営される学術機関マックス・プランク研究所と共同編纂する未来エージェントSolarfyのソラフィー誌は、前回の「ドイツのエネルギー転換がヨーロッパの電力安全確保を脅かす」というフォーカス誌記事を次のようにプロパガンダと断定している。
http://www.solarify.eu/2015/02/20/283-energiewende-ist-derzeit-kein-exportschlager/

「ソラリフィ誌は、そのような記事が究極的には外国から来る化石燃料巨大企業のプロパガンダと考えています。何故なら、エネルギー転換が非常に電力料金を高くするという主張は悪質な嘘であるからです。再生可能エネルギーは、電力価格が既存のものと同等か、それより安くするというグリッドパリティを益々達成しており、従来のエネルギーよりも絶えず安くしているからです。一般的には現在の石炭、ガス、石油、そしてとりわけ原発に対するように、再生可能エネルギーに関してはそんなに容易にお金が提供されていません。最早凄まじいエコへの熱狂に疑念を呈しないIEA(国際エネルギー機関・・石油危機に対して1974年にアメリカ主導で設立された、クリンで安価なエネルギーを提供するための諮問機関)は、2012年化石エネルギーには4000億ユーロ(56兆円)の助成に対して、再生可能エネルギーには僅か750億ユーロ(10,5兆円)しか助成されていないことを認めています。それゆえ、このような記事は本末転倒であり、非常に高くかかるエネルギー転換という擬装表現であるワニの涙に、誰ももう涙を流さない、すなわち騙されないでしょう」
Solarify meint: So ist also die Propaganda der fossilen Energiekonzerne schlussendlich auch im Ausland angekommen. Denn die Behauptung, dass die Energiewende zu teuer sei, ist schlicht verlogen. Erneuerbare erreichen mehr und mehr Grid Patity, kosten ständig weniger als konventionelle Energien. Allerdings ist mit Ihnen nicht so leicht Geld zu verdienen, wie über die weltweit gewaltigen Subventionen für Kohle, Gas, Öl und vor allem Atom. Schon 2013 stellte die nicht im Verdacht übertriebener Öko-Begeisterung stehende IEA fest, dass 2012 die fossilen Energien mit 400 Mrd. Euro – Erneuerbare Energien dagegen nur mit 75 Mrd. subventioniert wurden – umgekehrt würde ein Schuh draus und niemand würde mehr Krokodilstränen über die ach so teure Energiewende vergießen.
このように世界の巨大企業のプロパガンダとする断定は日本では考えられないことであるが、ドイツは基本法で“戦う民主主義”を掲げることから、公共放送ZDFの放映では日常茶飯事である。
上に載せた2014年1月21日に放映されたZDFフロンターレ21『EUエネルギー政策の間違った試算(EU-Energiepolitik mit falschen Zahlen )』では、明らかにEUのエネルギー政策をドイツエネルギー転換への攻撃と見なし取材制作している。
フィルムではEUの間違ったエネルギー政策を真実を求めて検証するだけでなく、間違ったエネルギー政策を作成したEU委員会エネルギー担当責任者ギュンター・ヘルマン・エッティンガーを主犯扱いしている。
彼は2005年から2010年までのバーデン・ヴュルテンベルク州首相であり、前回のZDFの訴えた利権構造「影の計画」の首謀者といわれていたからだ。
もっともエッティンガーが2010年にEU委員会のエネルギー担当責任者に推薦したのは当時のメルケル首相であり、当時のドイツ政府は4大電力企業の原発利権構造に支配されていたと言っても過言ではない。
それが履換えたのは、2010年9月の原発運転期間12年延長決議後の州選挙でメルケルの与党キリスト教民主同盟が負け続けたからに他ならない。
それは2000年4月に始まった再生可能エネルギー法が単に環境運動としてだけでなく、太陽光発電風力発電バイオマス発電を地域経済の要として地域に根付いたからである(地域の膨大な再生可能エネルギー中小企業だけでなく、800を超える市民参加のエネルギー協同組合に至るまで)。

そこには、化石燃料エネルギー産業の行き詰まりがあるからだ(事実ドイツの2004年から2012年のエネルギー総使用量は省エネ徹底で減っているにもかかわらず、エネルギー費用は370億ユーロから980億ユーロへ増大している)。
そしてこのZDFフィルムが2014年に放映された時点でさえ、太陽光発電や陸上風力発電のドイツでの電力コストは原発電力製造コストより遥かに安く、最も安い褐炭火力発電の製造コストよりも安くなりつつあるからだ。
それゆえに、原発維持(69基の新たな建設)と石炭火力発電を柱とするEUの2030年までのエネルギー政策はドイツには容認できないことであり、このZDFフィルムに最後に登場する新しい女性環境大臣は憤慨すると同時に、戦いの姿勢を隠さないのである。
もっとも3万人にも及ぶロビイストによってIEA支配されるEU委員会は、ドイツのエネルギー転換の成功は容認できないものであり、何が何でも潰さなくてはならないのである。
すなわちドイツは脱原発を通して原発利権構造が克服されたことから、人々の将来的幸せが最優先されるのに対して、原発利権構造に支配されるEUは産業利益を最優先し、原発リスクや石炭火力発電継続による地球温暖化の激化で人々が苦しむことなど眼中にないからに他ならない。