(174)世界を変えるドイツのエネルギー転換(4)・・バイオエネルギーが示唆する未来


Einheimische Bioenergie: Was kann sie 2050 leisten?(土着のバイオエネルギー:2050年のエネルギー割合予想図・・出典 2008年連邦農業省委託の成長原料調査機関FNR及び連邦環境省の国内バイオマス行動計画から)*ドイツの2050年の年間発電量を1933テラワット(6950PJ)と省エネなどのファクターから算出し、その23パーセントの456テラワット(1640PJ)と算出している(エネルギー植物11%、森林木材5%、麦わら等4%、生ゴミ3%)。


ドイツのバイオ発電はパイオニアとして世界を先導し、驚くべき発展を遂げて来ている。
最近の太陽光発電の急激な増大にもかかわらず、2012年のバイオ発電の年間発電量は49テラワットで再生可能エネルギーのトップを維持している(注1)。
バイオ発電自体は太陽光発電のような大幅なコスト低下は見込めないことから、太陽光発電に抜かれるのは時間の問題であるが、太陽が照らない時、風が吹かない時に補う意味でも重要であり、上に掲げたエネルギー転換が築く2050年のエネルギー未来割合図では、総電力の23パーセントを担うことが期待されている。

しかし最近明らかになって来たことは、既に述べた巨大洋上風力発電同様に、バイオ発電の規模拡大は経済的に成り立たない事実である。
現に今年7月ドイツ巨大電力企業RWEの英国子会社は、世界最大規模のバイオ発電所を長期的採算の目処が立たないことから閉鎖した(注2)。
また原発事業から完全に撤退した巨大企業シーメンスも、太陽光パネル設置費用の急激な低下で大規模太陽光発電事業から撤退することを、今年6月に公にしている(注3)。
これは大局的にはZDFフィルムが語るように、エネルギー転換による再生可能エネルギーの未来は、太陽光発電風力発電、バイオ発電にしても、経済的に非効率な巨大企業の大規模集中型生産から、地域企業の小規模分散型生産への転換を示唆している。

現在ドイツの企業によるバイオ発電事業は、再生可能エネルギー法の2012年改正による助成削減で既に暗礁に乗り上げて来ているが(注4)、地域でのバイオ発電はそのような影響は全くなく、ドイツ連邦農業省が推し進めるバイオエネルギー村プロジェクトで飛躍的に拡がっている。

注目すべきは、2000年以降農業にも競争原理が強化され、地域の零細農家が最早EU環境農業政策の直接補償では生き残るのが難しい状況下で、バイオエネルギー村プロジェクトが救世主となって拡がって来ていることである。
すなわち地域農村を支える零細農家がお互いに手をつなぎ、バイオエネルギー村プロジェクトへの参加を通して、地域のエネルギー自給だけでなく、地域の地産地消に向けて取り組み、2050年に向けて大きな運動を作り出していることにある。

このバイオエネルギー村プロジェクトには現在ドイツの137の地域がバイオエネルギー村として参加しており、上のPDFに紹介されている最初に築かれたバイオエネルギー村ユーンデを覗いて見ると、未来が見えてくる。


ユーンデ村は人口750人のドイツの典型的な小さな村であり、下の写真で見るように715キロワットのバイオガス発電と左に併設されている550キロワット木材チップのバイオマス発電によって村内の電力を自給している(1700キロワットの写真の菜種からのバイオ油使用の電熱併合発電も、厳冬期の予備として備えている)。

住民参加で2009年に設立した新しいエネルギーセンターCNEはさらなるイノベーションを追求し、太陽光発電プロジェクト風力発電プロジェクト電気自動者普及プロジェクトを推進しており、これらのスライドからは素晴らしい未来が見えてくる。

それは、現在の巨大コンツェルンが支配する大規模集中型経済から、地域住民イニシアチブの小規模分散型経済への転換であり、国家戦略を軍事力強化で推し進めようとする官僚支配の形式民主主義から、平和希求の穏やかな世界統合を求める官僚公僕の理想民主主義への転換である。




(注1)2012年のドイツのバイオガス年間発電量49、0テラワット、風力発電45,9テラワット、太陽光発電27,9テラワット(2012年の太陽光発電設備量は32、44ギガワットで、既に風力発電の29,90ギガワットを抜いているが、太陽光発電の場合日照時間が1000時間ほどであり、年間発電量は27900ギガワット、すなわち27、9テラワットとなっている)。

(注2)フォーカス・オンライン「RWEは世界最大規模(750メガワット)のバイオマス発電所を閉鎖する」
http://www.focus.de/finanzen/news/unternehmen/erneuerbare-energien-rwe-schliesst-das-weltweit-groesste-biomasse-kraftwerk_aid_1038627.html

(注3)ドイツ経済ニュース「3億ユーロ損失:シーメンスは太陽光事業から撤退」
http://deutsche-wirtschafts-nachrichten.de/2013/06/17/300-millionen-verlust-siemens-steigt-aus-solar-geschaeft-aus/

(注4)ドイツ再生可能エネルギー法2012年改正PDF24ページより
大規模の5メガワットから20メガワットまでのバイオマス発電の固定買取価格は、2009年の10、8セントから6セントへ大幅に削減された(尚小規模発電に対しても僅かに削減されたが、150キロワットまでの発電は20、3セント、150から500キロワットは18,3セント、500キロワットから5メガワットは11セント)。