(178)世界を変えるドイツのエネルギー転換(6)・・再生可能エネルギー280%達成地域の驚異的挑戦

前回紹介した分散型エネルギー技術研究所の指導の下に、2013年現在再生可能エネルギーが地元地域電力消費の100%を超える地域は、ドイツ北部を中心に増え続けているが、ディトマールシェン郡(クライス)の280%は驚異的である。
ディトマールシェン郡はシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州の北端の郡であり、私自身も通過したことがあるが、面積1434平方キロメートル、人口13万7390人(因みに日本の六ヶ所村が属する上北郡は1281平方キロメートル、人口9万8337人)の見渡す限り平地が続き(キャベツ畑などが続く)、寒さと強風の厳しい地域である。


そのような悪条件にも関わらず、2013年2月に出した「ディトマールシェン郡の気候変動克服」宣言では、この地域の生き残りの戦略として地球温暖化克服という壮大な目標を掲げ、既に2010年より再生可能エネルギー行動プロジェクト、企業行動プロジェクト、住居行動プロジェクト、交通行動プロジェクト、教育行動プロジェクト、行政行動プロジェクトを実践し、2013年10月には再生可能エネルギー280%を達成した(注1)。

実際の2013年のディトマールシェン郡の消費電力は101万6686メガワット・年であり、製造される再生可能エネルギーは284万2107メガワット・年で、その内訳は風力発電242万97メガワット、太陽光発電23万8432メガワット・年、ビオマス発電18万3002メガワット・年である。
また2010年のディトマールシェン郡の消費電力が59万5000メガワット・年で、製造再生可能エネルギーが126万3000メガキロワット・年(風力発電104万1000、ビオマス発電12万2000、太陽光10万)であることからも、飛躍的発展を遂げていることがわかる(PDF)
すなわち2010年から各プロジェクトで省エネの徹底が追求されたにも関わらず、消費電力の倍増はこの地域の飛躍的発展を裏付けている。
それは、再生可能エネルギー製造が2倍以上に驚異的に増大していることと連結している。

日本の地域振興政策はこうしたドイツの驚異的地域振興政策と比較すれば、福島原発事故の反省もなく、TPP海外進出で益々地域を困窮させ、最終的には地域を切り捨てる悪政以外の何者でもない。
そのような日本の未来には希望がないだけでなく、嘗ての戦争を繰り返す未来である。
(まさに特定秘密法案の強行決議は、日本の大本営再構築を図るものと言えよう。)
そのような閉ざされた未来を変えて行くためにも、以下にディトマールシェン郡の壮大な気候変動克服宣言の戦略プロジェクトを要約して載せておく(勿論指導しているのは分散型エネルギー技術研究所に他ならない)。

「ディトマールシェン郡の気候変動克服」宣言書要約


この2013年の宣言書では「ディトマールシェン郡は気候変動克服のために転轍機を入れる」というタイトルで、気候変動、及び厳しい強風の悪条件を以下のようにチャンスと捉えている。
1、生活の質や環境の質をよくするためのチャンス。
2、未来技術とイノベーションの要請に寄与するチャンス。
3、地域経済と地域の価値創造にポジティブな成果をもたらすチャンス。
そしてこれらのチャンスを実現するための戦略として、6つの行動プロジェクトを掲げている。


再生可能エネルギー行動プロジェクト〉
この地域の過酷な強風条件を逆手に取り、風力発電を中核とした再生可能エネルギー発電増設を推し進める。
その際製造した電力の郡内及び近隣の直接利用が重要であり、近隣直接利用のため電力網を強化する。
余剰電力に対しては備蓄できる能力を開発する。

〈企業行動プロジェクト〉


余剰電力及び余剰熱の利用徹底で省エネを強化する。
企業の省エネ強化は、事業コストを最小化するだけでなく、企業の国際競争力に貢献する。
(写真は企業敷地提供と支援での企業誘致)







〈教育行動プロジェクト〉


気候変動克服の目標を掲げ、地域が再生可能エネルギー発電と省エネを推し進めるためには、それに関与する知識の啓蒙とそれを担う専門家育成の教育が必要であり、幼児教育から知識啓蒙とモチベーションを高めて行く。
(写真はディトマールシェン郡小学校の2010年環境賞受賞)



〈住居行動プロジェクト〉
徹底した省エネ目標を掲げ、共同住宅及び一戸建て住宅の団地を整備していく。
その際消費者センターとジョブセンターの協同で、省エネ潜在能力を追求していく。
また住宅建設組合と貸主組合の協同連携で、広域な整備創出を実現する。

〈交通行動プロジェクト〉
二酸化炭素排出を減らす目標で、省エネ公共交通の延長拡充、及び電気自動車の普及を実現する。
この地域で生産される再生可能エネルギーを交通分野で直接利用することは、地域外から運ばれてくる石油エネルギー輸入を減らすことを意味している。

〈行政行動プロジェクト〉

21世紀の気候変動及び人口統計学的変動に対して、最北端の過酷な条件不利地ディスマルシェン郡はイノベーション技術開発と省エネインフラ整備が不可欠である。
ディスマルシェンの行政は絶えず経費削減に努め、その挑戦を通して長期的に持続可能な転換を成し遂げ、地域の潜在能力を引き出して行くことで、住民に質の高い暮らしを実現する。

(上の写真は、ディトマールシェン郡の中心都市ハイデHeideの郡庁舎にある、簡素であるがより民主的な円卓郡議会場)


尚左写真は人口2万894人の都市ハイデの中心街であり、郡庁舎のホームページを見れば、この地域の戦略的挑戦が一望できよう(注2)。










(注1)ディトマールシェン郡の2013年10月時点の再生可能エネルギー製造
http://www.energymap.info/energieregionen/DE/105/119/258.html

(注2)ディトマールシェン郡庁舎のホームページ
http://www.dithmarschen.de/Quicknavigation/Startseite