(272)世界危機第10回『地球2100年7−2』(帰らざるCOP21)・不正が生み出す危機6(世界危機解決策)

カエル寓話が悔恨する戻ることができない分岐点(帰らざるCOP21)

第二回フィルムでは現在過行く2015年を、戻ることができない決定的な分岐点として捉えている。
このフィルムでの6年後の未来である2015年に、世界の全ての国が危機を回避を願い開催された地球温暖化会議では、全面的に技術無償提供を求める途上国側とあくまでも開発支援の資金提供に限る先進国の大きな溝は埋まらず、好機を逃している。
そして今回のフィルムの終わりでは、主人公のルーシーがその頃お母さんが話してくれたカエルの寓話を持ち出すことで、好機を逃す人類、そして世界の愚かさを訴えている。
その寓話とは、鍋のなかの水に入れられたカエルであり、気がつかないほどゆっくり温められているので調理されているとは思わず、気付いた時には最早逃げることができないカエルの寓話である。
そしてルーシーは、成長した後日私たちこそがそのカエルであったことに気付いたと訴えている。

それは、決定的分岐点であるパリCOP21の好機を失おうとしている、世界の愚かさにもオーバーラップされる。

不正が生み出す危機(6)・世界危機解決策
現在の世界危機は、地球温暖化にしろ、世界同時多発テロしろ、先進国の技術はあくまでも維持し、途上国の開発が先進国の技術によって先進国主導でなされ、先進国の工業製品が輸出できるように資金提供する構図に原因がある。
それはどのように美辞麗句で語られようとも、その背景に現代の植民地主義があることは明白である。
それ故に途上国では技術提供がないことから化石燃料に依存し、また貧困肥大で移民が増加し、移民先でも差別化によって困窮し、イスラム国のようなプロパガンダに勧誘され、同時多発テロを引き起こすという負の連鎖が拡大している。
パリ同時多発テロの武器入手の容易さからして、そのような負の連鎖拡大を力によって安全が築けると過信するなら、人類は自滅するしかない。
何故ならテロリストたちが原発を本気で攻撃目標とすれば、ドイツのZDFが検証したように、彼らが持つロケット砲は原発から数キロ離れた地点から厚さ5メートルのコンクリートを貫通できるからである。

それを解決するには、現在の経済成長という先進国の論理で途上国に経済進出するという仕組みを根本的に見直し、積極的な無償技術提供で途上国を豊かにすることで、先進国自らも豊かに共存することを考えなくてはならないだろう。
しかし現在の産業社会はEUにしろ、国連にしろロビイスト支配がなされており(ブリュセルには3万人のロビイスト、そしてニューヨークにはそれを遙かに上回るロビイストが常駐している)、経済のグローバル化こそ人類を豊かにするという教義に基づいて、経済活動のグローバルな自由化が推進されている。
それは人間信頼に基づいた世界一自由で民主的なワイマール憲法が、楽天的人間信頼からナチズムに奪われ破綻したように、行き着く先は見えている。
それ故戦後のドイツの基本法は人間不信の憲法といわれるように、人間の尊厳を守り、万民の幸せ追求を普遍原理とし(憲法改正できない)、自由に対しても厳しく規定している(「ホロコーストはなかった」という表現の自由さえも、犯罪と見なされる)。
また戦前は無謬神話がまかり通っていた官僚政治も、官僚一人一人に裁量権を委譲することで厳しく責任を問い、法律で面談から手紙まで最小漏らさず行政記録を残すことで、全てをガラス張りにしている。
そのように人間不信の基本法に基づくドイツは、2000年の競争原理最優先のEU拡大政策(リスボン戦略)で新自由主義に支配されそうになったが、2008年の世界金融危機以降官僚とメディア主導でカジノ資本主義克服を通して脱原発に導き、エネルギー転換を推進し、2010年には増税なしに低所得者の大型減税を実現し、2015年の8,5ユーロの法定最低時間給賃金導入に見られるように、再び万人の幸せを追求し始めている。

しかしながら機能不全ともいわれる国連は、30日から開催されるパリCOP21が同時多発テロを受けて会議だけに集中することを余儀なくされている(全ての催しは中止)。
もっともそれ以前の予備折衝では先進国と途上国の大きな溝は相変わらず埋まらず、5年間先送りのシナリオが既に見えてきていた。

希望的側面では、アメリカの世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが実施した世界の世論調査において(11月5日公表)、世界の85%の人たちが地球温暖化の問題を深刻に考えるようになっており、指導者たちに積極的な行動を求めていることにある。
世界の指導者たちは、たとえロビイスト支配されているとしてもその声に答える責任があり、その世論を利用してメルケルが公共放送中継でガラス張りにした倫理委員会を通して脱原発を実現したように、EU、国連のロビー活動を最小漏らさず記録する厳しい規定から始めなくてはならない。
そのようにすれば、世界の人々の万人の幸せが最優先され、エネルギー転換によって世界の途上国だけでなく辺境地域でさえ自立して豊かになれる新たな文明構築も、決して見果てぬ夢ではない。