(332)時代の終わりに(16)・核戦争が起きないために(5)制裁に代わる対話を・危機を警鐘する国内報道(5)電気自動車への転換・ドイツニュースに見る予兆(9)

核戦争が起きないために(5)制裁に代わる対話を

NGOの核兵器廃絶国際キャンペーンICANが今年のノーベル平和賞を受賞した理由は、上のZDFニュースで選考委員会が述べているように、「私たちは、核兵器が実際に使われる危険が、これまでのどの時代より大きな世界に生きており、それゆえにICANの先駆的な努力は非常に重要です」という、核戦争への差し迫った危機感からであった。
ICAN事務局長の核廃絶は近づいて来ているという見解に対して、ZDFの見解は程遠いとニュースキャスターを通して語り、1945年以来核兵器増大にもかかわらず70年以上二度と使用されなかったのは、核抑止力が機能して来たからだとし、核戦争の起きる可能性は極めて低いとしている。
しかしながら北朝鮮の核開発は急速に進化しており、アメリカ全土に届く大陸間弾道ミサイルアメリカ全土を破滅させる核兵器量産は間近に迫っており、その前の攻撃はアメリカの世論調査からして、単純に否定できないことも確かである。
攻撃がなされる場合アメリカに被害がないとしても、既に中距離弾道ミサイルの完成で韓国や日本はすっぽり射程圏内に入っていることから、少なくともアメリカ軍事基地への報復は必至であり、最悪の場合は韓国と日本が地図上から消え、「核の冬」によって世界が滅びることも想定すべきである。
それゆえに、制裁だけを強固に押し進めるアメリカに追従する日本のやり方は(被爆国にもかかわらず、核兵器禁止条約にも追従して不参加も含め)、極めて危険である。
「平和学の父」と呼ばれ、1959年にオスロ平和研究所を創設し、長年世界の平和を訴えてきたヨハン・ガルトゥングが今年6月に世に出した『日本人のための平和論』では、対話による制裁に代わるやり方を訴えている。
著書では北朝鮮が核保有する理由として、1、抑止力のため。2、攻撃されたときの反撃のため。3、核のない朝鮮半島実現のため(著者は彼の持つ確かな情報から、米軍が韓国に核兵器を配備し、その場所も特定していると明言している。但し米国及び韓国は公式に否定)4、核保有で、十分な国力と孤立無援でないことを示すため。5、北朝鮮に対する制裁や脅威が限度を超えたときに使用するためと述べている。
そして日本人へのメッセージとして、以下のように書いている。
「日本は北朝鮮に対する経済制裁に加わっているが、この制裁はまったく逆効果である。私は日本のどこかの非政府機関(NGO)に、北朝鮮と直接コンタクトを取って対話し、将来の関係のあり方を探り、制裁に代わる方法を模索してほしいと願っている」

このような意見はヨハン・ガルトゥングだけの意見ではなく、既に述べたメルケル首相の提案でもあり、EUの大半の国は既に制裁が限界に達していると見ており、対話による解決を望んでいる。
さらに言えば、現在の北朝鮮の世界危機を契機として、核兵器保有を認められている国が率先して、自らを含めて核兵器禁止条約に全て国が参加できるような仕組を提示し、期限を決めて「核のない世界」を実現しなくてはならない。
そうでなければ、ZDFが述べるように北朝鮮で核戦争が始まる確率は低いとしても、益々核兵器が拡散して行き、いずれ核戦争が始まるだろう。

危機を警鐘する国内報道(5)EV(電気自動車)シフト

NHKがクローズアップ現代で10月16日放映した『世界の加速する“EV”シフト〜日本はどうなる?』は、日本の産業危機を警鐘しているとしても、私には新しい時代を告げる鐘の音に聞こえ、未来の希望を提示しているように見えた。
確かに電気自動車に急速にシフトして行けば、極端に言えば電池とモーターで組立てることができるため、従来のエンジンなどの高度な技術は不要となり、中国やインドなどの新興大国がコスト面で圧倒的に有利である。
それは技術革新の流れであり、賃金などを含めて安いコストで製造できるからであり、技術も企業買収で獲得されるからであり、その推進力はグローバリゼーション以外の何者でもない。
しかしながら大局的観点に立てば、現在の大量生産、大量消費、大量廃棄の化石燃料エネルギー産業社会が限界に達し、地球環境の悪化を通して自然エネルギー産業社会の転換を迫っていると見ることもできるだろう。
中国であれば、大気汚染が都会に暮らせないまでに悪化し、さらにこれまで模倣してきた産業社会の成長が下り始めたことから、EVシフトを加速していると言えよう。
この番組の自動車アナリストが言うように、日本が牽引するハイブリット車はまだあらゆる面で優れているのは事実としても、最早EVシフトへの引金は引かれており、それを謙虚に受け入れ、未来に向かってどのように繋げていくかを志向していかないと、現在崩壊しつつある家電産業同様に、自動車産業も崩壊へと向かうのは必至であろう。
確かにEVシフトへの加速は、世界のトヨタ、ベンツ、フォルクスワーゲンなどの巨大企業にとっては死活の危機であるが、日本の下請け中小企業にとっては自立へのチャンスでもある。
何故なら技術開発力のない中小企業でも、液晶のように部品を組立るだけで製造可能となり、小さいことが逆にコストを下げることで有利となり、地域で独自の電気自動車を組立てる時代が到来することを示唆しているからである。
そうした視点で見るなら、EVシフトはグローバリゼーションの波に乗りながらも、将来ローカリゼーションの推進力の一つになり得ると思える。
もちろんローカリゼーションの最大の推進力は太陽エネルギー(風力も太陽エネルギーに起因しており、バイオも太陽エネルギーの植物蓄積)であり、安全面、環境面、さらには経済面からも既に最も有利になりつつある。
(しかも太陽エネルギーは、現在の人類が必要とするエネルギー量の少なくとも3000倍以上が地球上に降り注いでおり、先進国も途上国も、都会も田舎も平等に降り注いでいるからだ。)
それは、世界のウエスチングハウス社取得で世界の原発産業を征した東芝の凋落や、ドイツの脱原発まで原発で莫大な利益を上げていたEonなどの4大電力企業がそれ以降赤字に転じ、2014年ヨーロッパ最大のEonの分社化による事実上の化石燃料エネルギー撤退宣言、そしてこれまで市民に任せて来た自然エネルギーへの転換表明が、明白に語りかけている。
もっともだからと言って、現在の国家を凌ぐ世界の巨大企業がすぐさま滅びるわけではなく、むしろ危機ゆえにイナゴに見るリサージェンスの如く必死に生き残ろうとするだろう。
しかしドイツが明言している、自然エネルギーで少なくとも80%を賄う2050年に近づけば、世界の巨大企業の凋落は明白であろう。
何故なら自然エネルギー産業は分散技術からなり、地域の小回りの効く中小企業が圧倒的に有利になるからである。
また電気自動車の巨大企業によって売られる充電システムは崩壊し、圧倒的に安い家庭太陽光の充電が当たり前になるからだ。

直近のドイツニュースに見る予兆(9)
動物保護の日に反省するもの

ドイツでは、ナチズム時代のユダヤ人だけでなく障害者や他民族を排除する優勢思想の反省から、人間の生きる尊厳を厳守するだけでなく、動物の生きる権利さえ求めている。
その徹底が、この番組の子供たちの意見にも反映されている。
私は以前雄ヒヨコ殺処分を批判するZDF動画を載せたことがあるが(注1)、今見ると13万人を超えており、その4割近くが趣旨を理解してくれたことは嬉しいことである。
もっともコメントの多くに、価値のないものには殺処分も当然という意見を見るのは残念であるが、現在の日本の弱肉強食の生存競争を推進する新自由主義教育中ではむしろ当然のことに思える。
生き物の生きる権利を無視するようなやり方が、グローバリゼーションを通して地球に人を溢れさせ、逆に危機を招いている事を省みるべきである。

(注1)動画 https://www.youtube.com/watch?v=aSb04z0Cigo&t=210s

気候変動の専門家が訴えるもの

10月12日のlogo!では、世界の気候変動の専門家が12日にポツダムに集結し、気温上昇、台風の巨大化、海面上昇で途方もない巨額の費用がかかる議論をすると伝えていた。
気温上昇は今年2017年で見るなら、日本及びドイツでは海温上昇で豪雨、洪水を引き起こし、逆にスペインやポルトガルでは雨が降らないことで極度に乾燥し、広範囲な森林火災が絶えず報道されていた。
また台風の巨大化は、今年しばしばアメリカ東部を襲ったハリケンによる被害の大きさ、そして日本でも10月も終わろうとしているにもかかわらず、今日夜半から大型台風が襲おうとしている事実からも明白であろう。
さらに海面上昇に至っては、トランプのように気候変動の脅威を無視続けるなら、全ての南極の氷が溶け出し、それだけで8メートルの海面上昇を専門家は予測しており、パリ条約の21世紀末までにCO2排出をゼロに近づけなくては時期を失い、最早手立てがないほど急速に溶け出すと警告している。
そうなればニューヨーク、東京などの海に面した大都市は、たとえ巨大な防波堤を築いたとしても、地震による高波や巨大台風襲来で全壊どころか、水没することも覚悟しなければならないだろう。