(330)時代の終わりに(14)・核戦争が起きないために(3)公正な裁き・危機を警鐘する国内報道(3)『沖縄と核』

核戦争が起きないために(3)・直近のドイツニュースに見る予兆7

9月15日早朝、私の携帯がけたたましく鳴り(全国瞬時警報システムJアラートによる)、「ミサイル発射、ミサイル発射、北朝鮮からミサイルが発射された模様です。建物の中、又は地下に避難してください」のメッセージで叩き起こされ、もはや戦時下にあるかのような錯覚さえ感じ得なかった。
そして19日の国連でのトランプ発言(一般討論演説)では、条件は付けられたものの、「北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」と、恐るべき発言を耳にした。
もしそのような選択肢が採られれば、北朝鮮だけでなく韓国や日本も壊滅し、たとえ北朝鮮の報復核弾道ミサイルアメリカ本土を直撃しない場合さえ、数十発の核爆発によって引き起こされる「核の冬」でアメリカも壊滅し、人類も数年で壊滅するだろう(核の冬が警鐘された当時、世界の100人を超える専門科学者たちの結論は、世界保有核兵器0,5%が使用されれば十分核の冬は起こり得るであった。下の動画参照)。
そのような危機に世界は直面しており、ZDF特派員ヨハネス・ハノー(注1)のメルケル首相インタビューよれば、ドイツは現在の制裁強化策が暗礁に乗り上げていると見ており、ドイツが自ら仲介役として解決に導くことを訴えている。
しかし現在の全体主義に傾斜した国際世論は、そのようなメルケルの提案には冷ややかであり、石油禁輸への制裁強化によって北朝鮮の核開発中止ができるかのような幻想に囚われているように見える。
石油禁輸は中国、ロシアが強く反対していることからそのようなシナリオはないと思われるが、もし石油禁輸がなされたとしても、現在の北朝鮮全体主義独裁体制からは核開発中止は有り得ず、日本の戦前のABC包囲網による石油禁輸で戦争に追い込まれて行ったように、北朝鮮が核戦争の引金を引きかねず、一層危機が高まって行くことは必至である。
メルケルの提案が見向きもされない理由は、アメリカや日本が制裁後の対話で北朝鮮の核開発中止を求めており、逆に北朝鮮は核開発完成後の対話で核保有による安全保証を求めており、公正さを求めるドイツが介入すれば沖縄の核基地も議論の対象にされ、議論の長期化で北朝鮮の1000基を超える核兵器量産も許すことにもなり兼ねないからである。
明らかにアメリカや日本は他の選択肢を採りたくないことから、あくまでも石油禁輸へ向けての制裁強化で、対話による解決ができるものと報道している。
しかも9月10日にNHKスペシャルで放送された『(スクープドキュメント)沖縄と核』では、沖縄の核基地は1962年には完成し、1967年には1300発に上る核弾頭ミサイルを配備していた事実が明らかにされた(下の私の見た動画34『沖縄と核』参照)。
その配備された核弾頭ミサイルは、沖縄本土復帰前1969年現場での撤去映像公開で、沖縄から全ての核弾頭ミサイルが撤去されたように印象付けられたが、現在のアメリ国防省が「沖縄における核兵器の有無は回答しない」と断言していることから、逆に大部分の核弾頭ミサイル配備が継続されていると読み取れる。
何故なら当時の国防省長官メルビン・レアードは、昨年11月94歳で亡くなる2ヶ月前のNHK電話インタビューで、「我々は日本を守り続けたかった。日本は核兵器を持たずには丸裸なのだから。核を沖縄に持ち込まないなら、他の場所を探さなければならない。結局日本は沖縄を選んだ。それは日本政府の立場だったよ。公にはできないだろうがね」と断言しており、死を直前に意識した真摯な断言からは、大部分の核弾頭ミサイルが残され、今もアメリカ及び日本を守るため沖縄が核基地として継続されている実体が浮かび上がって来るからだ。
本来ならばこの彼の断言は、すぐさま報道されるべき恐るべきスクープであり、このフィルムが何故今公開を許されたのかを考えるべきだろう。
しかもこのような恐るべき報道に沖縄タイムズと琉球新報を除き、本土の大手新聞だけでなく地方新聞まで沈黙することに異常さを感じ得ない。
明らかにこのタイミングでのスクープ公開には伏線としての意図を感じざるを得ず、国民の反応見つつ、沖縄の基地に大部分の核弾頭ミサイルが温存されていることが明らかにされるだろう。
すなわち経済封鎖制裁が効き始めた後、1000を超える北朝鮮に向けられた沖縄の核弾頭ミサイルこそ、アメリカ及び日本が描く北朝鮮に核開発を断念させるシナリオの切り札であろう。
しかしそのような圧倒的力によるシナリオは、全体主義独裁体制が完成されている北朝鮮に筋書き通りに行く筈がなく、逆に核戦争の引金を引かせる公算が益々高まるだろう(それは日本の敗戦が明白となるなかで、竹槍で本土決戦を本気で考え、天皇の降伏宣言後も軍部が樺太死守を命じたことからも推測されよう)。
もっともその際メルケルのような、中国や北朝鮮とさえ外交パイプを持つ仲介者の出番があれば、核戦争を回避することも可能である。
何故なら日米の描くシナリオは暗礁に乗り上げ、トランプが北朝鮮壊滅に踏み切る危機が秒読み段階になれば、世界は結束して「核の冬」による人類絶滅を阻止しようと動き、北朝鮮と日米韓の関係国だけでなく、中国やロシア、さらには英仏の核保有国も国益優先のこれまでの姿勢とは異なり、真剣に解決を求めると思われるからである。
もっとも現在のように国々が国益を追求して競う世界システムの中では、一時的に核戦争を回避する世界協定ができたとしても、協定に強制的拘束力を持たせることは不可能であり、水面下での核開発拡大は止めることができず、いづれ核弾頭ミサイルがテロ集団の手にも入り、世界が恐喝される事態も有り得るだろう。
また下のZDF子供ニュース動画に見るように、ミャンマーからバングラデシュへの夥しいロヒンギャ避難民が示唆するように、民族間の争いは益々拡大するだろう。
何故なら前回述べたように、現在の産業社会はグローバル化という発展を通して世界の隅々まで貧困をもたらして行くからである。
それはラダックを見れば一目瞭然であり、自給自足でこれまで豊かに暮らしていた人々の大部分が困窮するゆえに、これまで仲良く共存していた少数派の回教徒との間に争いを見るに至っている。
それはミャンマー、そしてシリアやアフリカから、益々増え続ける避難民も同じであり、発展による貧困が民族の争いに火を点けていると言えるだろう。
だからと言ってシリア避難民やロヒンギャ避難民に対して、現在のように後手、後手に救助するのでは、財源も底をつき実質的に見捨てることにもなりかねない。
応急処置としては国連の国際司法裁判所が、戦争の代わりに公正な裁きで決着できるようにすることである。
国際司法裁判所が現在機能しないのは、国連で国際司法裁判所の裁きを受諾している国が70カ国と少なく、拒否権を持つアメリカ、ロシア、中国といった大国が受諾していないからである。
確かに領土権や民族間の争いには、複雑に各国の国益が関わり、現在のルールなきに等しい競争世界では全ての国に受諾させることは難しいとしても、ロヒンギャのような無国籍モスリム民族の避難に対しては、国連軍が割って入り、争いの代わりに国際司法裁判所の公正な裁きに委ねさせることも可能であり、拒否権を持つ大国こそが率先して限定的であれ受諾すべきである。
それが実現できれば、世界の戦争に代わる公正な裁きへの少なくとも第一歩となり得よう。

もっとも本質的な解決には、前回述べて来たように15世紀以来の植民地主義、そして現代の新植民地主義とも呼ばれるルールなき新自由主義世界を、世界の直面する危機を通して、貧困に窮乏して行く世界の全ての地域が豊かさを取戻して行けるように、世界システムの枠組を大きく変えなくてならない。
それなくしては、本質的に核戦争の脅威から逃れることも、民族間の争い、さらには激化する地球温暖化を止めることも不可能であり、人類は滅びるしかない。
具体的な私の考える方法論については次回に述べたいが、今世界は北朝鮮での核戦争を回避するため、当事国だけでなく世界の国々が人類滅亡の「核の冬」を起こさないため全力を捧げる時が来ている。
それは人類にとって大きな試練であるが、下のZDF子供ニュース「logo!」が9月11日に放送した『逆境を強く生きる避難少女』のように、車椅子でシリアのアレッポから避難してきた少女は生死を分ける試練を寧ろ糧に変えてポジティブに生きるように、世界は人類滅亡の試練を希望ある世界の糧として、ポジティブに変えて行かなくてはならない。

尚今日24日はドイツの連邦議会選挙日であるが、直前のZDFニュースの世論調査からもメルケル政権の継続は確定的であり、政権与党は議員の過半数を維持しなければならないという規約から、メルケル首相の下でのキリスト教民主同盟社会民主党の連立政権継続は間違いないだろう。

(注1)ヨハネス・ハノーはZDF『フクシマの嘘』のレーポーターとして日本でも多くの人に知られており、ZDF特派委員としても鋭い切口で報道に迫っている。


危機を警鐘する国内報道(3)『沖縄と核』

この公共放送NHKが10日放送した『沖縄と核』に対しては、本来はこれほど重大なスクープ放送はないにもかかわらず、まるで戦時下の厳しい制約でもあるかのように、本土の新聞社はコメントを控えている。
それに対して当事者の沖縄の新聞もこれまでとは異なる慎重な姿勢をとり、沖縄タイムスはNHK放送を受けて、12日に核弾頭ミサイル誤発射についてのみコメントし、事故当日(59年6月19日)の翌日に「ミサイル発射前に発火」と伝えたとだけ報道している。
また琉球新報は、19日の紙面でNHK『沖縄と核』を制作した2人のディレクターをインタビューし、コメントなしで二人の意見として、「米軍基地が沖縄に集中した要因の一つに核武装があることが分かった」「核の存在のために標的になる危険を米軍も認めていた」という発言を載せるに留めていた。