(280)世界危機第18回『避難民危機討論6−3』・メルケルCDUが国境再構築を容認しない3つの理由

メルケルCDU(キリスト教民主同盟)が国境再構築を容認しない3つの理由

この討論会に参加している憲法学者のウルリヒ・バティスは、「しかしながらEUの外側との国境は現在確保されていません。それゆえ国家が国境を通して決めなければなりません」と述べ、国境再構築による制限をCSUマルコス・ゼーダ議員同様に求めている。

また著名な前の2人の憲法裁判官たちも、この討論会で流されるビデオで以下のように国境再構築を主張している。

憲法裁判官ウド・ディ・ファビオは「連邦は共通のヨーロッパの国境安全保障と移住システムが一時的、もしくは永続的に乱される時、連邦国境の実際のコントロールを再びする責任がある」と述べている。

前連邦憲法裁判所長官のハンス・ユェルゲン・パピアは「避難民危機はセンセーショナルな政治的断念を明るみに出している。方向転換はまだなされておらず、メルケル首相はドイツのために厳格な庇護政策を追求し、州の国境を安全なものにしなければならない」と述べている。

それにもかかわらず、メルケルCDUは断固として国境再構築を容認しない。
討論会でメルケルCDUの考えを代弁するルプレヒト・ポレンツ連邦議員の主張は、以下の3つの理由である。

第一の理由
基本法で保証する庇護権違反
CSUの国境による上限制限は、国境の収容施設での長期的受入を意味し、憲法に保証する政治的難民の庇護権に違反すからである。
「すなわちあなた方CSUは実践的挑戦に立っており、国境への来訪者にドイツ領域の何処かに滞在を長期的に組織する上限制限であり、私は全く異にしています」と明言している。
第二の理由
ドイツの寛容性とヒューマニズム追求
「私たちは政治を通して今なんとかやっていけるなら、避難民の逆流による責任を引っ被ろうとは思いません」と述べており、ドイツが国境を閉じれば多くの避難民がバルカン半島で凍死するからである。
第三の理由
ドイツ産業の障壁
現在の国境なきシェンゲン協定をなくせば、ドイツのジャストインタイム生産に支障をきたし、ドイツ産業に大きな実害を生じるからである。
「何故ならドイツ産業は、国境を越えた生産を手にすることで、倉庫保管を街道沿いに移転しているからです。もちろん実施される国境制限はこれらのジャストインタイム生産を機能させなくします」と述べている。

私見を述べれば、メルケルにとって第二の理由が限りなく大きく、ポレンツ議員が言うようにバルカン半島紛争もドイツが先頭に立ってコソボ治安維持部隊を支援したからこそ解消されたのであり、多くの国々から傍若無人(rücksichtslos)のメルケルと非難されようと、それを未来への希望をつなぐためにも貫徹してもらいたい。
国境再構築した国々こそヨーロッパ共同体設立の理念に立ち返るべきであり、さもなければ世界戦争(終末戦争)への歯止めを失うことにもなりかねない。