(87)脱原発を求めて。(17)ドイツのZDFと日本のNHKの違いが映し出す大本営ムラ社会

NHKの屋台骨を支える制作部門は、真実と正義を追求するZDFの制作部門に較べて決して引けを取っているとは思わない。
それは戦争を二度と引き起こしてはならないという反省から制作された「日本人はなぜ戦争に向かったのか」(1)、マネー投機を鋭く批判追及した「マネー資本主義」(2)、原発に関してもチェルノブイリ原発事故に放映した数々の秀作フィルム(3)、そして福島原発事故後に放映した「低線量被ばく揺らぐ国際基準」(4)などの従来の姿勢を問い正す原発関連の作品を見れば明らかであろう。
しかし大きな違いは、ドイツから遠く離れてZDFの番組はPCによって無料で、今日の番組から少なくなくとも1年前の番組まで見ることができることである(5)。
(もっともドイツに暮らしていれば、住民局に登録後料金徴収センターから調査票が送られてくるので、テレビもしくはPCのような視聴可能な機器を所有していれば、公共料金として月17、98ユーロを支払わなくてはならない。しかし公共放送ゆえに日本のように様々な区別はなく、全ての番組を差別なく見ることが可能である)
そこには公共放送ZDFの使命感を感ぜずにはいられない。
確かにNHKにおいても制作現場の使命感が伝わってくるが、NHK経営サイド、そして全体としては使命感追求よりも利益追求が優先されている。
すなわち小額とは言え交付金を受け取り、公益法人として税優遇され、公共放送の紋所で料金徴収の恩恵を受けているにもかかわらず、900億円を超える事業債(東京電力145億円)保有していることは、自らの利益優先の何者でもない。
したがって制作現場でどのような真実と正義を求める番組を作ったとしても、出来るだけ注目を浴びない夜遅くや衛星放送で放映し、連帯して拡がりを求める国民の動画投稿を業務として完璧にまで削除しまわっている。
それ故、こうした真実と正義を追及する番組も公共放送使命の免罪符となっていると言っても過言ではない。
それは福島原発事故後、原子力ムラに関与する学者などを登場させ「メルトダウンはない」と断言する報道を続けたことが如実に示しており、太平洋戦争でミッドウエイ敗戦などの隠蔽に協力し、絶えず勝利報道をしてきた過去と大きく変わるものではない。
二度と戦争の過ちを繰り返さない意図で制作しているにもかかわらず、同じ過ちを繰り返すのは、日本社会に本質的な責任の所在がないからである。
これに対してドイツの戦後は、政府自らナチズムを許した稟議制による責任の所在のない官僚制度を180度転換し、決裁権の担当官僚への委譲によって責任の所在のある社会を創りだしてきた。
それ故ZDFフィルム『大いなるこけおどし・・・原発政策の間違い』に登場した局長クラスの政府技官たちが、政府の原発運転期間延長政策を間違いと断言したことは(6)、責任が厳しく問われる社会ではむしろ当然であり、ZDFが使命感を持って真実と正義を追求するのも頷けるのである。
まさにそれは、大本営の取り仕切る日本社会で政府技官の政策批判が許されないことであり、今回の福島原発事故における数々の不始末も責任が問われることがないのと対照的である。
しかし日本もNHKスペシャル「巨大地震」(7)が警告するように、日本の地下は誰も経験したことのない未知の状況に突入し、明日にも未曾有の巨大地震の起きる可能性を示唆している。
そのような状況にもかかわらず、責任の問われることのない政府は相も変わらず、「赤信号の横断歩道も皆で渡れば恐くない」と、原発再稼動を強行しようとしている。
それは多くの意ある専門家が言うように、「今度原発事故を起こしたら、日本の終わり」を意味している。


(注1)NHKスペシャル「日本人はなぜ戦争に向かったのか」
動画http://v.youku.com/v_show/id_XMjk3NDg4MDE2.html

(注2)NHKスペシャル「マネー資本主義」
動画http://kabu-fx-news.seesaa.net/article/117873081.html

(注3)見えない敵
動画http://v.youku.com/v_show/id_XMjc0NzY4MTY4.html
被曝(ひばく)の 森はいま
動画http://vimeo.com/user3036323/videos/page:5/sort:newest
永遠のチェルノブイリ
動画http://v.youku.com/v_show/id_XMjc0Njg1NTI4.html

(注4)「低線量被ばく揺らぐ国際基準」
http://v.youku.com/v_show/id_XMzM4MDEwMzE2.html

(注5)ZDF番組表
http://www.zdf.de/ZDFmediathek#/hauptnavigation/sendung-verpasst
ZDFの番組表では昨日、今日の放映番組が見られるだけでなく、左矢印に移行していけば一週間の番組表が載せられており、全ての番組を視聴することができる。実際は左上のSENDUNGEN(放送)A−Zから数百の番組ジャンルにリンクして行けば、数万の番組を見ることができる。例えば日本でも知られているFのフロンタール21は480作品、Pであれば「放射能ハンター」で知られるプラネットeの49作品、Zであれば「フクシマのウソ」で知られるZDFズームの69作品、そしてZDF heute ニュース に至っては5002本が掲載されており、十数年の毎日のニュースを日本から無料で見ることができ、まさに資料館と言っても過言ではない。

(注6)
http://www.asyura2.com/12/genpatu23/msg/343.html

(注7)NHKスペシャル巨大地震
動画http://v.youku.com/v_show/id_XMzc2NzA5MDc2.html