(86)脱原発を求めて。(16)ドイツの脱原発を実現したZDFフィルム『原発政策の間違い』(日本語字幕付)

ZDF『大いなるこけおどし・・・原発政策の間違い』
第一章 何故いま原発運転期間延長なのか
(要旨)電力料金は巨大電力企業の市場支配によって決まっており、原発運転期間延長で料金が下がるのは神話であり、4大巨大企業には延長で20兆円をはるかに超える莫大な利益が転がり込む。そこではZDFがスクープした「影の計画」のように巨大電力企業の政治支配がある。

第二章 最終処分場ゴアレーベンの嘘
(要旨)28年間の原発運転期間延長では莫大な放射線廃棄物が生じることから、最終処分場確保が必要不可欠である。そのため環境大臣は延長法案を決議する前に、ゴアレーベンの調査を指示する。このゴアレーベンは80年代初めから調査がなされているが、最初から如何に嘘の塊であったかを、原発信奉者で地質学者のボスであるゲルト・レェティヒ教授の証言を引き出すことで完璧に暴露し、ドイツ国民全てを震撼させた。
それを引き出したZDFの圧巻する制作方法には、只々脱帽するのみである。

第三章 原発の安全性は担保できない
(要旨)政府首脳は国民の批判の高まりを受けて、ドイツ原発の安全性を高らかに国民に訴えかける。しかしZDFは以前原発管理者でもあった技術者の証言を通して、原発技術の誤差をゼロに近づけることが出来ても、リスクを制御することが出来ないことを明らかにする。しかもこの技術者は、チェルノブイリ原発事故の次の大きな事故が起きるのは時間の問題だと断言する。また2007年に危うく炉心溶融の大事故を起こしそうになったバッテンフォール(スエーデン企業)のクルメール原発を検証することで、安全性の担保が如何に信用出来ないかを明らかにしている。さらに原子炉安全局の前の局長ウォルフガング・レネベルクの証言を通して、老朽化した原子炉の事故数の増加を立証し、原発運転期間延長には安全性に大きな問題があることを引き出している。

第四章 防備不可能な原発テロ
(要旨)専門家の証言を通して、イスラエル砲撃で使用された2キロ離れた地点から5メートルの鉄筋コンクリートを貫通させる持ち運び容易なロケット砲攻撃に対して、ドイツの原発が無防備であることを立証する。そして法務局の憲法裁判官ヨアヒム・ヴィラントは、原発テロに無防備な中で原発運転期間延長をするならば、国家が国民を防御する義務に違反すると断言する。

第五章 原発再生可能エネルギー転換への架け橋という嘘
(要旨)政府はさらなる国民批判の高まりを受けて、原発が未来のエネルギー転換の架け橋として必要であることを必死に訴える。しかしZDFはこの架け橋という言葉の嘘を、首相顧問オラーフ教授の風力発電機製造企業の工場見学や再生可能エネルギーに取り組むエネルギー公社の取材を通して、原発運転期間延長によって再生可能エネルギーの伸展を妨げている実態を明らかにすることで見事に暴いている。

最終章 原発政策の間違い
(要旨)憲法裁判官は、妊娠か妊娠していないかのように原発も推進か脱原発かであり、第三の途はないとし、原発運転期間延長は憲法違反であると強調した。そして最後に再び首相顧問のオラーフ教授を登場させ、「原発運転期間延長のシグナルを与えるならば、再生可能エネルギーへのエネルギー転換を望まないシグナルを与えることである」という主張で、政府の原発政策の間違いを正した。

(解説)
2009年9月の連邦選挙でメルケル首相の率いる政府与党は、実質的な2000年の脱原発協定からの下車とも言うべき28年間の原発運転期間延長を公約して勝利した。しかしこの選挙では2008年の世界金融危機後の対応が争点となり、原発政策の転換が争点にならなかったことから、十分な国民議論を求める声が高まっていった。
政府は国民議論を無視して、翌年9月に原発運転期間延長法案を強行しようとした。
これに対して公共放送ZDFはこのフィルムを法案決定の一ヶ月前の2010年夏に放映し、政府原発政策公約は間違っていると訴えた。
そこでは政府顧問のオラーフ教授を筆頭に政府専門家、民間専門家、学者などを登場させあらゆる視点から、原発運転期間延長政策の間違いを論理的に指摘していた。
原発運転期間法案は9月に12年間に短縮して強行されたが、このフィルム放映でドイツの脱原発を求める世論が急速に高まり、既に11月の世論調査では2011年の州選挙での与党敗北を予想していた。
事実2011年初めの州選挙では政府与党は全敗し、たとえ福島原発事故がなくともドイツの脱原発は必至であった。

完結版ZDFフィルム『原発政策の間違い』(日本語字幕付)
http://www.dailymotion.com/video/xqfucg_zdf-yyyyyyyyy-yyyyyyyy_news