(85)脱原発を求めて。(15)原発と新自由主義・・・悪魔のルーレットと弁護士政治家の夜

新自由主義の源流はコロニアリズム植民地主義)であり、1971年のブレトン・ウッド体制の終焉によって為替が自由化されたことで、自由貿易主義が新たに復活し、他国のあらゆる規制を撤廃させ、世界の経済支配が目論まれている。
原発の源流は核兵器であり、莫大なエネルギーを持つ核の平和利用が謳われ、世界のエネルギー支配とも言うべき原発ルネッサンスが目論まれている。
どちらも一握りの人たちの欲望から生じており、本質的には人類を滅ぼす悪魔のルーレットであり、お金による政治支配で推し進められてきた。

すなわち新自由主義がつくり出した金融危機では、貧しいサブプライム層の人たちでも住宅ローンで夢のような豪華な住宅が持てるだけでなく、住宅バブルで資産価値が上がり続けることでGMの大型車さえローンで手に入れることができた。
そこでは住宅ローンを組み込んだ高利回りの金融商品が売りまくられ、そのためにアメリカ政府は低金利政策を採ることで世界のお金がアメリカに集中するようにし、サブプライム金融商品を売り込むために各国の金融規制を撤廃させ、金融工学ムーディーズのトリプルAで安全のお墨付きを与えることに協力した。
その結果2007年末までに62兆ドルのサブプライム金融商品が売りまくられ、住宅バブルが破綻すると多くの金融機関を倒産させるだけでなく、世界の金融危機によって消費は冷え込み、世界の大部分の人たちを困窮させている。
また原発でも政治支配が不可欠であり、安全神話のお墨付きだけでなく原発誘致地域への莫大な財政援助、そして何十万年に渡って背負わなくてはならない原発核廃棄物の過小評価などによって支えられてきた。
しかも欧米では79年のスリーマイル島原発事故、86年のチェルノブイリ原発事故を受けてほとんど新設されなかったことから、2000年以降世界の原発ロビイストたちは原発の「安い、クリーン、安全」をスローガンとして、2030年までに新たに400基建設する原発ルネッサンスを起こした。
それはサブプライムの構図と同一であり、貧しい国でも融資と長期安全保障で、容易に安全な原発を建設できることを謳い文句としていた。
そして新自由主義原発が導く未来の最終章は、ロベルト・ユンクが描いた「原発帝国」(注1)のように、監視社会による全体主義帝国が連想された。

しかし福島原発事故後、安全神話が崩壊したことから安全保障が困難となり、原子炉メーカの巨人シーメンスが完全撤退したことからも、原発ルネッサンスは国際的に破綻したと言っても過言ではない。
それにもかかわらず羹に懲りない日本は、地域の農業や内需産業を滅ぼしかねない例外なき関税撤廃を求める自由貿易協定TPPを締結し、弱肉強食の競争を求める新自由主義を推し進めようとしている。
また現在の民主党政権を牽引し、原発ルネッサンスの黒幕と称される弁護士政治家仙谷由人は(注2)、原発再稼動に対して「原発を止めれば集団自殺」として国民を恫喝している。
もちろん仙谷由人が心底から集団自殺と思っているのであれば咎められないが、民間企業の自家発電設備は原発60基分の6000万キロワットの電力が余りに余っている現状(注3)を十分認識しているから許せないのである。
また福島原発事故後に官房長官として「直ちに影響はない」と明言した枝野幸男現経産大臣も弁護士であり、チェルノブイリの過去二十数年の放射線被ばくの恐ろしい被害を十分認識しているにもかかわらず、スピーディ情報を国民の混乱を避けるために隠したと言われている。
大飯原発再稼動では、4月2日に「現時点では再稼動に反対だ」と公言しながら、4月9日には「再稼動基準はおおむね満たしている」と政府のお墨付きを与えている。
明らかに彼らこそが、現在の脱原発への流れに、先頭に立って抵抗しているのだ。
もっとも彼らは黒幕という器ではなく、ただただ権力と金に盲従しているに過ぎない。
何故なら現在の政治では、違法な政治献金による買収も巧妙に合法化するように、上辺だけ取り繕うことが求められていることから、弁護士政治家が主役に抜擢されるのである。
それは昨年11月30日にNHKが報道したニュース「電力業界・政界に多額の献金」(注4)を見れば一目瞭然であり、明らかに原発を推進し、電力料金を値上するための政治献金であり、買収以外の何者でもない。
しかし彼らが右に左に道化のように演ずる様はしもべであることを物語っており、本当の黒幕は原子力村のような大本営であり、それを造りだす人たちの欲望、新自由主義に他ならない。

本来弁護士は法の定める正義、人権、自由、平等に照らして弱者を助けるべきであり、そのような弁護士も少なくないが、多くは彼らのように法で武装して強者に仕え、弱者を生贄にしている。
まさに彼らは新自由主義が生み出した悪魔のしもべと言えよう。

1990年のドイツ統一では、アメリカ資本が東ドイツ(DDR)の莫大な財産を求めて雪崩れ込んだ。
その際の中核企業は、弁護士社員を多く抱えたコンサルタント企業McKinsey、経営診断企業Princewater house Coopers、そして法律事務所White&Caseであり、常套手段の合法的なやり方で信託公社の役人や政治家を買収し、タダ同然で強奪していった。(注5)
例えば東ドイツの4万企業の全体の売値は、タダどころ曖昧な雇用引取り条件で2560億マルクの助成金が付けられた。
しかも彼らをしもべとした新自由主義は、政治献金でドイツの政治を支配し、1994年に刑法典108e条項を改正し、議決に対する政治家の便宜のみを有罪とし、大半の政治汚職を合法化したのであった。(注5).
これ以降アメリカだけでなく、あらゆる国の企業や政党で破格の厚遇で登用され、シーメンスの企業戦略が貿易国役人の合法的買収であったように(注6)、悪魔のしもべたちの華麗な夜が始まったのであった。
EU新自由主義化の立役者であるシュレーダー元ドイツ首相も弁護士政治家であり、悪魔のしもべとして労働政権の公約を180度転換させ、ドイツ市民の豊かさと労働の権利を奈落の底へ転落させたことは、ドイツ市民の誰もが認めることである(注7)。

しかし夜は、ドイツが今夜明けを迎えているように、必ず明けるものである。


(注1)ロベルト・ユンクが1977年に書いた「原発帝国」は、日本では1989年に翻訳され出版されたが絶版となっている。彼は1914年に生まれ1994年にベルリンで亡くなっているが、常に未来社会を考え、原発開発当初から激しい批判家であった。
http://de.wikipedia.org/wiki/Robert_Jungk

(注2)“電力のドン”目指す仙谷由人氏 原発輸出の再開に動き出す
http://www.news-postseven.com/archives/20110613_23014.html

(注3)「ニッポンの自家発電」はすでに原発60基分!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/7655

(注4)電力業界 政界に多額の献金
NHK動画http://www.veoh.com/watch/v245533016Y9AP5ty?h1=%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E6%A5%AD%E7%95%8C+%E6%94%BF%E7%95%8C%E3%81%AB%E5%A4%9A%E9%A1%8D%E3%81%AE%E7%8C%AE%E9%87%91
但しこのNHK報道は、NHKのサイトだけでなく検索サイトからも削除されており、これらの政治献金が買収であることを立証しているだけでなく、メディアへの圧力がいかに強いかを象徴しています。
偶々NHKの報道を資料としてコピーしていましたので、削除されたNHK報道記事を下に載せておきます。

(注5)Schwarzbuch Deutschland 2009

(注6)シーメンス贈賄事件について
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/09061101_ishikawa.pdf
シーメンスの世界を叉に掛けた贈賄事件の発覚は、ドイツ人がアメリカ人より不器用なのではなく、社員自らの内部告白があるからです。

(注7)シュレーダー連立政権の裏切り
http://www.justmystage.com/home/sekiguchi/shuroeder.htm


電力業界 政界に多額の献金11月30日 19時6分
全国の電力会社は、公益事業であることを理由に政治献金の自粛を打ち出しています。しかしその一方で、役員らの個人献金労働組合などの献金の形で、去年までの3年間に少なくとも4億8000万円が政界に渡っていたことが、NHKの取材で分かりました。
全国の電力会社は「公益事業を行う立場としてふさわしくない」という理由で、昭和49年から政治献金の自粛を打ち出し、企業としての献金は行っていません。しかし、昭和50年代から沖縄電力を除く全国の9つの電力会社では、役員らが、自民党政治資金団体の「国民政治協会」に毎年、献金を続けていました。政治資金収支報告書を基にNHKが調べたところ、去年までの3年間に、各電力会社の役員や管理職など少なくともおよそ700人が、合わせて1億1700万円を寄付していたことが分かりました。関係者によりますと、東京電力では、例えば社長が30万円、常務が10万円程度などと相場が決まっていて、執行役員以上の幹部には、総務部の担当者が献金を呼びかけていたということです。実際に献金した人にNHKが確認したところ、「個人的な献金だ」という人のほか、「献金額の目安を会社側から示された」と話す人もいました。一方、電力各社の労働組合からも政治献金が行われ、民主党の複数の国会議員に、政治団体を通して去年までの3年間に合わせて少なくとも1億円が献金されていたことが分かりました。また、電力各社の子会社や関連会社では、去年までの3年間で31社が自民党の「国民政治協会」に合わせて2億5800万円を、4社が民主党政治資金団体国民改革協議会」に470万円を献金していました。九州電力の子会社や関連会社については、九州電力がおととし、献金をやめるように指示していたということで、去年は献金がありませんでした。さらに、すべての電力会社がNHKの取材に対して「金額は公表できない」としながらも、政治家のパーティー券の購入を続けていたことを認めています。政治学が専門の北海道大学大学院の山口二郎教授は「電力会社は国から規制を受ける企業であり、政治とは一定の距離や透明性が強く求められる。原発事故を契機に今後のエネルギー政策をどうするかが問われているなかで、当分献金するべきでないし、将来的にもやめるべきだ」と話しています。こうした献金について、電力各社は「個人などがそれぞれの意思で行っているもので、関知していない」としています。民主党は「政治献金自体非難されることではなく、党の政策が左右されるという懸念はまったく当たらない」としています。また、自民党は「寄付はすべて政治資金規正法に従って受けている。献金によって政策がゆがめられることはない」とコメントしています。