(84)脱原発を求めて。(14)大本営の瓦礫分散に打ち勝つために・・被災地域での防潮林計画が最善の戦略

大本営が瓦礫を地域に分散させたい本当の理由は以下のようになるだろう。

1)原発ルネッサンスを推し進め、新自由主義支配を強化していくためには、既に述べたように日本にはチェルノブイリはあってはならない(注1)。すなわち瓦礫分散で放射能を国民全体で分かち合い、除洗が目先の効果しかなくとも避難住民の帰還を可能とすることで、日本のチェルノブイリを封印する。
たとえ被ばくによる癌などが多発したとしても、最初から疫学調査をする気はないことから、因果関係はないと押し通す目論見。
2)コンクリートから人への民主党公約の公共事業が逆戻りし、利権構造が更なる肥大によって本来あってはならない被災地瓦礫の処理まで渇望している。従って異を唱える人たちが、首長を含めて各地で恐喝されている。
3)これからの日本は、放射能汚染の実害、未曾有の自然災害、青天井に続く増税、地域だけでなく国家の財政破綻危機と、大本営が続く限り日本の未来は出口なし的に暗い。そこでは官僚支配が機能しないだけでなく、原子力村に見られるような実害が厳しく非難されていることから、現在の非常事態を利用して瓦礫を絆で分かち合うことで国民が総動員され、翼賛体制が希求されている。

しかしそのような本質的な理由では戦えない。
何故なら明治の政府誕生以来政府の目的は国民の幸せではなく国益であり、究極的には原子力村に見られるように大本営自体の利益が優先されるからである。
すなわち大本営の利益優先にしたがって地域の隅々まで利権構造が築かれ、異を唱えるものには、最下部の公共事業なくしては生存し得ない業者を通して恐喝まがいの様々な嫌がらせがなされるからだ。
しかも地域の自治体は地域財源が少ないことから国に全面的に依存しているだけでなく、都市計画の決定から教科書の選定に至る398項目の自治事務が国の関与で縛られていることから、必然的に服従せざるをえない。
それにもかかわらず、過半数を超える地方自治体が保留、もしくは拒否の姿勢を採っているのは、今回の地域での瓦礫処理が如何に理に適わないものであり、福島原発事故を契機として、このまま大本営の指図に盲従していけば、地域自らを滅ぼしかねないという自覚が芽生えているからだ。
具体的には以下のような札幌市長上田文雄陸前高田市長鳥羽太、岩泉町長伊達勝身の声明文やコメントが、それを物語っている。

札幌市長上田文雄氏の声明文(抜粋・・・2012年3月23日付 )
放射性廃棄物は、基本的には拡散させない』ことが原則というべきで、不幸にして汚染された場合には、なるべくその近くに抑え込み、国の責任において、市民の生活環境に放射性物質が漏れ出ないよう、集中的かつ長期間の管理を継続することが必要であると私は考えています。非常時であっても、国民の健康と生活環境そして日本の未来を守り、国内外からの信頼を得るためには、その基本を守ることが重要だと思います。

岩手県陸前高田市鳥羽太市長のコメント
自分たちで瓦礫を処理すれば雇用も生まれるし護岸工事の基礎材にも使えるのに、門前払いを食らったのです。

岩手県岩泉町伊達勝身町長のコメント
まずは市街地の背後の山に運んで、ここから片付けて行けば雇用が発生して地元にお金が落ちてきます。再建する町からガレキを移せば、急いで処理しなくても大丈夫です。税金を青天井に使って全国に運び出す必要などありません。

明らかに瓦礫を地域に拡散すれば、運送費や処理施設の整備費だけでなく、放射能も全国に拡がり、焼却などでも安全性が担保できないことから、被災地で瓦礫を処理することが資源利用や雇用の観点から最善策である。
実際300キロに渡る被災地海岸では、宮脇昭氏や心ある専門家が説くように防潮林の造営が不可欠であり(注2)、造営の際は選別して利用する瓦礫こそが重要な資源である。
従って大本営の瓦礫分散に打ち勝つためには、被災地から遠く離れた地域で処理することが如何に無駄遣いであり、安全性においても大きな問題があること、被災地で瓦礫を利用することが最善策であり、被災地での防潮林造営のために地域の職員及び市民が現地に出向き協力することこそ本当の絆であることを、地域全体で共有できるように訴え、議論して行きたい。
そのように各地で議論を拡げていくことが、瓦礫問題を解決するだけでなく脱原発を実現することにもつながり、大本営を解体して戦後のドイツのように民主的官僚制への刷新を実現し(注3)、希望ある未来を創ることでもある。

(注1)想定外などないお上の掟・・・何故瓦礫をばら撒き、何故除洗を強行するのか
http://www.asyura2.com/12/genpatu21/msg/582.html

(注2)宮脇 昭「いのちを守る300キロの森づくり」 動画
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=gDOEs2_ONGM

防潮提などのコンクリート施設のない松島などでは、木々が生い茂る自然の入り組んだ地形が防潮林の役割をし、津波の莫大なエネルギーを吸収し、浸水したにもかかわらず津波で飲み込まれることがなかった。
こうした事実からも、まず第一に300キロの防潮林の造営計画がなされるべきであり、計画に取り組みさえすれば、瓦礫の遠く離れた地域での無謀な処理計画は吹き飛ぶ筈。

(注3)財政問題増税で解決しない。第3回「ドイツから学ぶ官僚支配政府の克服(責任ある決裁権と政治任用制度!)」
http://www.asyura2.com/11/senkyo119/msg/716.html