(219)ドイツメディアから考える今20・・医療の理想を求めて8・『自宅で亡くなること4−2』(最期を悔いなく生きるために)

ARDフィルム『自宅で亡くなること4−2』では、2007年に法案で人生の最期を生きる権利が保証されたにもかかわらず現状は必ずしも実現されておらず、ステファニー女医のような社会参加(アンガージュマン)の家庭医に委ねられている。

彼女の自宅で亡くなる患者への役割は、「人生に多くの日を与えるのではなく、その日を生きれるようにすることです」と断言する。
訪れた末期癌で寝たきりのハンナロア・ベター夫人はしばしば呼吸困難になるにもかかわらず、「よい看護なら主人がやってくれます。溢れ出るように。溢れるようだから効くのでしょう」と、快活に笑いながら、嬉しそうに女医に答えている。

また自宅で亡くなる日の近いマルゴット・ヴァ―トマン夫人は、「私は人生の終わりを痛みがなく、煩いなく生きたい。単純に素晴らしい日を私の主人と共に生き、楽しみたい」と語り、その表情には人生の最期を悔いなく生きている充実感と幸福感が感じられる。
しかしそのような人生の最期を生きる権利を全うできるのは、ドイツでも一部の人たちだけだとARDは追及している。
そして医療女性弁護士ヘンリケ・コーンは、その理由は自宅で亡くなる人たちに対してロビー活動がないからだと訴えている。

しかしドイツでは、公共放送のZDFやARDが強者利益優先を厳しく批判し、このような弱者の視点に立って理想を追求していることは羨ましい限りである。