(251)カントの理想実現(9)地域自治体の自然エネルギー完全自給(2)・何が日本の地域をダメにしているか(ノーモアユウバリ)

風力ハイブリッド電力完全自給から見えて来る世界

上の動画で見るように、自治体のエネルギー完全自給は最早私たちの直ぐそこまで来ていることがわかる。
何故なら前回のドイツの北端ニーベル町では、5基の3メガワットの風力発電によって自治体で使用する電力の400%強を製造しており、(現在は再生可能エネルギー法で電力企業に売却しているが)将来は余った300%強の電力を水素に変換しておけば完全自給が可能であるからだ。
そこでは地域自治体が自ら電力供給公社となることで、住民は最早高い電気料金を支払って巨大電力企業から買う必要はない。
しかも変換された300%強の水素は都会の水素ステーションに売却できることから(都会では風力発電基及びハイブリッド電力施設の建設は困難なため)、ここでも自治体は水素製造公社として雇用を自ら創出できる。
しかも風力発電基は1万ほどの部品を必要とし、それらの部品は安い電力が使用できる地元及び近辺地域の中小企業で製造することが断然有利であることから、その地域が過疎であったとしても、都会の中小企業をその地域に呼び込むことが可能である。
そして近隣地域だけでなく、国中に水素製造が溢れ出すようになれば、最早ガソリン自動車は見られなくなり、世界に波及していくことから地球温暖化は克服され、収益トップテンを石油メージャーが占める巨大資本支配の世界(新自由主義)は根底から変わろう。(尚エネトラグ社のヴァルナー社長はインタビューで水素社会の早期普及のため、再生可能エネルギー法のようなインセンティヴ導入を指摘している。・・・注1に翻訳)。
すなわち近隣地域に水素生産が溢れ出せば、地域自治体では自らのために水素エネルギーを使用し、風力発電基の部品製造で育成された中小企業が自ずと地域で使われる製品を現在進行中のインダストリー4.0(ドイツ政府が進めるハイテク戦略未来プロジェクト、アメリカではGE中心に産業界が未来を切り拓く戦略であり、新産業革命と呼ばれているが・・・。ブログ253で動画を載せて解説)をフルに活用して製造して行くであろう。

もちろんそこでは、エネルギーの温室利用で外から流入する果物や野菜の生産だけでなく、コンピューターと連動するGPSによる無人水素農業機械の夜間フル使用で、麻や干草などの植物性化学原料も栽培されよう。
まさにそのような地域自治体での分散型地産地消は、産業ベクトルを内心的に求心させることでカントの自由、平等、永遠平和を実現する自然エネルギー産業社会の核心であり、60年代のエコロジー運動の先駆者アンドレゴルツが描いた人間の理想的生き方、「週20時間の労働で、精神的により自由な、より高いレベルの生き方」をも実現するものである。

カントの理想実現(9)何が日本の地域をダメにしているか(ノーモアユウバリ)
Zweiter Zusatz.第二補説
Geheimer Artikel zum ewigen Frieden.永遠平和のための秘密条項

ここでは命題に反して公の法や記録文章には秘密条項があってはならないと戒めており、もし秘密条項があるとするなら、国家が威厳を保つために哲学者(現代でいえばドイツの脱原発を結論付けた倫理学者たち)の忠告を受け入れる場合だけに限ると明言している。
すなわちカントの公の幸せを求めることで永遠平和が達成される世界では、戦争の遂行や平和の樹立に関する普遍的原則について、公にガラス張りに開き、自由に議論されなくてはならないと断言している。

そのようなカントの戒めにもかかわらず現在の日本は、実質的に平和憲法を葬る安全保障と称する戦争法案草案が有識者会議(集団自衛権を求める識者だけの会議)で議論が国民に全く開かれず秘密裏につくられ、それが国会審議も始まらない前に概ね政府決議されており、戦前の翼賛体制へ進む社会と言っても過言ではないだろう。

その政府が推し進める地方創生は、バブル経済末期の地域への1億円バラマキ以外の何者でもない。
すなち新自由主義推進の政府は、言葉は原発汚染の克服、賃金の上昇(10年で150万円)、自由な保障ある雇用、積極的平和を訴えながら、実際の行動は逆なのである。
すなわち地方創生の掛声の裏側には、TPPによる全面的自由化で地域の農業さえ生贄にし、産業ベクトルをより外心的に向け、地域に残る中小企業さへ日本の賃金の10分の1、20分の1の海外へ出動させて行こうする戦略が見え隠れしている。
私の暮らす地域でも、平成の大合併で役場の雇用さえ期待できなくなり、若者の大部分は東京などの都会へ出て行く選択肢しかない。
そのような地域の衰退は、地域を走るバス運行の激減が映し出しているように見える。
それはここだけではなく、日本の1800の自治体のうち近い将来消滅の恐れがある896自治体もあるとの指摘が、恐ろしい未来を提示している。
(資料・・・www.mlit.go.jp/pri/kouenkai/syousai/pdf/b-141105_2.pdf)
破産した夕張市では、市民サービスの低減、市民税などの上昇で若者が去り(人口12万より現在1万人を割っている)、前東京都職員の若い市長の奮闘にもかかわらず未来への希望さえ未だに見えて来ない(激減を強いられ奮闘する市職員も給料40%カット)。
特にネットで見る記事ダイオキシン基準を充たす焼却施設の建設が出来ないことからゴミ処理場に無数のカラスが群がる異様な光景の中で、市の職員が廃棄場が一杯になった場合を尋ねられ、「幸い人口が減っているので、あと5年くらいは持ちそうなんです」と返答する記事)からは、絶望的未来しか見えて来ない。
このような夕張市を生み出したのは、リゾート開発やロボット大科学館等の箱物建設に国からの補助金を含めてお金がばら撒かれ、市の健全な財政運営を麻痺させたからに他ならない。
それは国が1970年代赤字国債を増大させて行き、借金による大規模景気対策で賭けに出たやり方を踏襲するものでもあった。
そして1100兆円を超える負債を抱える国は、TPP推進による海外進出でより危険な賭けに出ようとしており、その犠牲となる農協や地方自治体に慰謝料として再びお金がばら撒かれているという見方もできよう。

そのような中で地域の自治体が生き延びるためには最早国に依存していても無駄であり、上に述べたドイツのように自らエネルギー自給に乗り出し、都会の中小企業を呼び込むだけでなく、自らも水素製造公社を運営する革命的イノベーションが必要である。

その実現のためには、まず自治体議会をドイツだけでなくEU社会では常識である名誉職の市民議員へと変革し、カントの求める公の幸せを求める住民意思が発揮されるものにしていかなくてはならない。
(現在の専門職議員では余りにお金がかかり過ぎ、土建国家と言われるように一部の人たちの利益を代弁していることも事実である。夜間及び休日に開かれる名誉職議員による自治体議会では住民の誰もが容易に参加でき、全ての住民の利益を求める住民意思が発揮され易くなるからである)

(注1)BIZZ energy today(ドイツの経済誌)2012年12月14日

Herr Diwald, warum investiert Enertrag in Wasserstoff-Technologie?
ディヴァルト代表、何故エナトラグ社は水素技術に投資したのですか?
Werner Diwald: Es besteht großer Bedarf, erneuerbare Energien speicherfähig zu machen, denn nur so wird die Energiewende gelingen. Wir haben verschiedene Techniken analysiert, etwa Batterien oder Druckluftspeicher. Wasserstoff hat sich dabei für uns als einzige Möglichkeit entpuppt, mit der sich langfristig größere Energiemengen speichern und auch schnell wieder abgeben lassen. Ähnlich wie Erdöl kann Wasserstoff Strom, Wärme und Mobilität liefern. Wegen dieses großen Potenzials sehen wir sehr gute Geschäftschancen. Der Markt verlangt im Moment nach Produkten, die es so noch nicht gibt. Wir wären also schlechte Unternehmer, wenn wir hier nicht unsere Chance suchen würden.
再生可能エネルギーを蓄えることには大きな需要があるからであり、そのように出来る場合のみエネルギー転換が成功するからです。私たちは様々な技術、たとえば蓄電池や圧縮空気貯蔵などを分析しました。その際水素が唯一の可能性をもっているものだと判明しました。水素で長期的より大きなエネルギー量を蓄え、すぐさま再び放出できるからです。石油と同じように水素は電力、熱、そして可動性を届けることができます。これらの大きな潜在能力ゆえに私たちは非常に大きなビジネスチャンスを見ています。市場は目下、そのようにまだない製品を求めています。もし私たちがチャンスを求めななかったら、会社の業績は悪化していたでしょう。
BIZZ e.t.: Elektrolyseure, die zur Wasserstoffproduktion benötigt werden, gibt es aber schon.水素生産に必要とされる電解槽は既にあるんですね。
Diwald: Die Elektrolyse an sich ist schon etabliert, in Zukunft wird es aber um die Systemintegration, um die Steuerungs- und Regelungstechnik für die Elektrolyse gehen. Und da haben wir ein Vorsprung gegenüber anderen Herstellern.
電解自体は既に構築しており、将来は電解のための運転技術や制御技術でシステム統合されるでしょう。まさに私たちは他のメーカーに対して優位に立っています。
BIZZ e.t.: Wo liegen die größten Herausforderungen?
何処に大きな挑戦がありますか?
Diwald: Ganz klar, wir müssen die Kosten runterbringen, das wird entscheidend sein. Pro installiertem Kilowatt ist es aus meiner Sicht langfristig möglich, bis zu 30 Prozent Kosten einzusparen. Dafür brauchen wir die Serienfertigung und größere Elektrolyse-Anlagen. Wasserstoff als Kraftstoff ist heute schon mit herkömmlichem Benzin konkurrenzfähig. Es fehlt lediglich an den günstigen Fahrzeugen. Auch bei den gesetzlichen Rahmenbedingungen für Wasserstoff sehe ich noch Handlungsbedarf.
私たちはコストを下げなければならないことは、全く明らかです。設置キロワットあたり30%までコストを下げることは私たちの視点から可能です。そのためには流れ作業式生産とより大きな電解装置が必要です。燃料としての水素は今日従来のガソリンに対して既に競争能力があります。ただ好都合な乗り物がまだありません。水素に対する法的規制枠ではまだ行動不足を感じています。
BIZZ e.t.: Woran hakt es da?
まさに何にかかっていますか?
Diwald: Sie brauchen Anreize. Wir konkurrieren ja mit fossilen Energieträgern, deren Folgekosten wie Umweltschäden bis dato nicht eingepreist werden. Das ist ein Nachteil, denn wir müssen ja Anreize schaffen, sich nachhaltig zu verhalten und entsprechend zu investieren. Warum sollte ein Autobauer heute ein Wasserstoffauto entwickeln, wenn er die herkömmlichen Fahrzeuge auch noch verkaufen kann?
それはインセンティブを必要としています。今日まで環境被害のような事後負担をしてこなかった石油エネルギー担体と競争しています。石油エネルギー担体は欠陥があり、それゆえ持続的に抑制し、適正に投資するためのインセンティブを創出しなければなりません。自動車生産者は、従来の自動車を売ることがまだできる時に、何故水素自動車を発展させるのでしょうか?
BIZZ e.t.: Wie könnten Anreize aussehen?
どのようにインセンティブは引き出せますか?
Diwald: Möglich wären Quoten oder eine Festvergütung, beides hat Vor- und Nachteile. Das Erneuerbare-Energien-Gesetz hat sich aus unserer Sicht aber als System bewährt, dass zu einem konsequenten Ausbau der erneuerbaren Energien und einer nachhaltigen Industriepolitik führt. Bei Wasserstoff fehlt so etwas noch.
割当てや固定報酬が可能でしょう。両者は長所と短所があります。再生可能エネルギー法が私たちの視点からすれば、再生可能エネルギーの首尾一貫した建設、持続的産業政策に導いたことがシステムとして実証しています。水素ではそのようなものがまだありません。
BIZZ e.t.: Enertrag betreibt bereits einen Elektrolyseur in Prenzlau und liefert Strom für die neue Wasserstofftankstelle am Berliner Großflughafen BER. Werden Sie noch Anlagen bauen?
エネトラグ社は既にプレンツラウで電解装置を操業し、ベルリン大空港BERの水素タンクステーションに運んでいますが、さらに装置を建設する予定がありますか?
Diwald: Wir planen in Deutschland zwei weitere Anlagen im Multi-Megawattbereich. In Frankreich, wo wir kürzlich den Vertrag für einen Solarpark unterschrieben haben, wollen wir in zwei, drei Jahren so weit sein.
私たちはドイツでさらに2基のマルチメガワット規模の装置を計画しています。フランスでは最近ソラーパークのための契約を結びました。2,3年内には拡大して行きたいと思っています。


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